生後10か月のきみ
ラララ ぞうきん ラララ ぞうきん♪
--かつてぞうきんがこれほどフィーチャーされたことがあったであろうか。……子育て界はまだまだ驚きに満ちている。
満10か月を迎える3日前、息子がついに歩いた。そうなると、行動範囲はさらに広がり、様々なものに興味を持って動くので、今まで以上に親子ひろばや児童館を利用するようになった。
親子ひろばはともかく、児童館や支援センターは自宅からまあまあ遠いので、ベビーカーを押して結構な距離を歩くとかバスに乗るとか、少々気合いを入れないと行けない。それでも、家で息子と2人で過ごす気持ちの大変さよりマシだった。
引き出しの中身を全部出し、本棚を荒らす。キッチンで私が食事の用意をしようとすればベビーゲートのところで騒いで泣いて、こちらは食事の用意もままならない。私自身の食事は立ち食い・早食いになるし(それでも食べなきゃいられない。授乳しているとやたらお腹が空く)、タイミングによってはトイレを我慢しながら息子をあやす。分別のない赤ちゃんがした行動には、「仕方ない」と思うしかないのだが、1日が終わるとかなりぐったりしてしまう。
親子ひろばや児童館では息子はどんなにおもちゃをぶちまけても怒られないし、私はスタッフ(話の通じる大人)と会話できるしでお互いにとって良かった。
こういう場に行くと、ほとんどの場合、親子が手遊び歌で触れ合う時間が設けられている。冒頭のぞうきんの歌もそのひとつである。
手遊び歌は他にも沢山あり、慣れないうちは幼稚な世界にいる自分が気恥ずかしかったが、息子が楽しめたらいいなと思うと自分も楽しめるようになった。Eテレの「ブンバ・ボーン!」も初めて見たときにはクラクラしたが、今では全力で踊って息子を喜ばせている。
子育てを始めてから「息子のため」と思うと、以前より積極的でこだわりのない自分に変化しつつあることに気づく。この子にとって母親は自分しかいないと思うと、カッコつけてはいられない。--初めて会った赤ちゃんのことを「おともだち」と呼ぶのに違和感を覚えたり、「ラララ」と「ぞうきん」を一緒に並べるセンスは私にはないと思ったりするときもあるけれど--息子の笑顔が見られるなら、と頑張れることが増えた。
人間は年とともに「自分」という枠を超えることが難しくなってくる。それが、この小さな子は、それを易々と超えさせてくれる力がある。
例のぞうきんの歌も、鼻歌でごまかさず歌えるときが来る、きっと、そのうち……。
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