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私たち変わらないね、という幸せな勘違い
私の親友は、旦那さんの仕事の関係で世界の様々な国に滞在し、2〜3年経つとまた別の国にお引越し…という生活をしている。
高校の時からの付き合いで、同じ時期にアメリカ留学を経験した仲。
お互いおしゃべりではないけれど、一緒にいるだけで落ち着くし安心できる、そんな数少ない大切な親友だ。
彼女と体験した、グアムでの数奇な数日間のお話は、こちらから ↓↓
最近、その親友が神奈川に引っ越してきた。
彼女にとっては久しぶりの日本、私にとっては自宅から1時間程の距離に親友がいることがとてもうれしく、早速「おかえりの会」を催した。
グアム以来だから、6年か7年ぶり。
「きゃー!ひさしぶりーーーー!!!」
日頃出さない高めのキーで発する金切り声で再会を喜び、お互いの無事と健康を労い、大好きな湘南のカレー屋さん「珊瑚礁」でご飯を食べた。
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海を見ながらカレーを食べて、それぞれのこれまでを話していると、あっという間に17歳の頃に戻った感覚になり、脳の奥底に眠っていた日常の些細な記憶がゾワっと蘇ってくる。
「○○先生に怒られた次の日、あんたデスノートみたいなの書いててまじで怖かったよ」とか、
「帰り道にあったパン屋のくるみパン、売り切れる前に買いに行こうって走ってたら派手にコケて、ルーズソックスが染まるくらい流血してたよね」とか。
なんでもない日常に起こったことが、宝箱の中に大切にしまっていた古い宝石のように奥の方から顔を出してくる。
あの頃に戻りたいというより、あの頃のような覚えておきたい日常が少なくなってきたなぁという寂しさにも襲われながら。
久しぶりの再会に大盛り上がりの私たちは揃って「私たちほんと変わってないよね」と言いながら笑い合った。
「あ、私、前に一緒に撮った写真持ってるよ」
と、彼女がスマホのカメラロールを漁り始める。
ワクワクしながらその動作を見守っていたら、彼女の指の動きがピタリと止まった。
なんとなく怪訝な顔。どうした!?
そして、無言でスマホの画面を私の方に向けてきた。
そこには、高校を卒業してすぐに二人でLAに行った時の写真があった。
懐かしすぎる!と喜んだ後、すぐに彼女が無言になった理由がわかった。
「ねぇ、私たちすっごい変わったね…」
スマホの中の二人は、とびっきりの笑顔にみずみずしい肌。
触ったら跳ね返ってきそうなハリのあるほっぺた。
この頃はまだメイクも覚えたてだったから、ファンデーションもアイシャドウもマスカラもほとんどしてない、加工さえしていない、オールナチュラルな素材そのものの顔だった。
いや、全然変わってるやん!今こんなにピチピチじゃないし!
ほうれい線って何ですか?ってくらいの綺麗な口角の上がり方!
なんなのこれ、すっごい若いー!!!
そう言いながら、目元だの口元だのの、年季の入った顔がさらにしわしわになるのを気にしないくらい、涙が出るほど笑った。
「変わってないね」と思い込んでいたのは私たちだけで、ほんとはそれから何年も辛かったり苦しかったり泣きたかったりする経験を重ねて、笑い合える今があるのだ。
なんて幸せな勘違いなのだろう。
年を重ねたことを改めて認識し、呪文のような「変わってないね」を噛み締めた。
幸い、私たちの「変わってないね」を他人に押し付けたことはなかった。
「ねぇ、私たち変わってないでしょ?」なんていう、どこかの迷惑防止条例に引っかかりそうなことは、他者には強要していない、はずだ。
だから、誰にも迷惑をかけない幸せな勘違い。
ただ、私たちの絆や縁の深さ、あの頃からの精神は変わらず持ち続けている、と信じている。これは勘違いじゃない。
変わったこと、変わっていないこと、たくさんの変化を楽しみながら、これからも生きていくんだろうな。