位相空間論入門(1)-集合の復習
位相空間についての基礎的な事項を連載していきたいと思います.
初めてnoteで記事を書いてみているので,続きが出るかはわかりません.
また読みにくかったらすみません.書き方のアドバイスなどももらえると嬉しいです.
位相空間についての記事なので集合や写像と距離空間に関する初歩的な事項はある程度前提とします.
第一回は集合に関する記号や言葉などの必要事項をざっくりまとめます.
集合
集合とは大雑把にはもの(数など)の集まりのことをさし,その集合を構成しているもののことを要素や元というのでした.よく登場する集合に以下の4つがあり,それぞれに記号があります.自然数は正の整数とします.
$$
\begin{align*}
\mathbb{N} &\cdots 自然数全体の集合\\
\mathbb{Q} &\cdots 有理数全体の集合\\
\mathbb{R} &\cdots 実数全体の集合\\
\mathbb{C} &\cdots 複素数全体の集合
\end{align*}
$$
$${a}$$が集合$${A}$$の元であるとき,$${a}$$は$${A}$$に属しているといい$${a \in A}$$や$${A \ni a}$$と表します.
集合$${B}$$が集合$${A}$$の部分集合であるとは,
$$
x \in B \Longrightarrow x \in A
$$
が真となることを言い,このとき$${A \subset B}$$や$${B \supset A}$$と書きます.これは,($${B}$$が空集合でない場合は)$${B}$$の全ての元が$${A}$$の元でもあるということを意味しています.空集合$${\emptyset}$$は任意の集合の部分集合であることに注意しましょう.
集合$${A}$$と集合$${B}$$が等しいとは,$${A \subset B}$$と$${B \subset A}$$の両方が成り立つことをいいます.このとき$${A = B}$$と書きます.
また集合に関する演算として以下のようなものがあります.以下では$${X}$$を全体集合,$${A, B}$$を$${X}$$の部分集合とします.
$$
\begin{align*}
A \cap B &= \{x \mid x \in A かつ x \in B\}\\
A \cup B &= \{x \mid x \in A または x\in B\}\\
A \setminus B &= \{x \mid x \in A かつ x \notin B\}\\
A^c &= \{x \mid x \in X かつ x \notin A\}
\end{align*}
$$
上から順に集合$${A}$$と集合$${B}$$の共通部分,集合$${A}$$と集合$${B}$$の和集合,集合$${A}$$と集合$${B}$$の差集合(または単に差),集合$${A}$$の集合$${X}$$に対する補集合(または単に$${A}$$の補集合)と言います.差集合は$${A - B}$$と書かれることもあります.
これらの演算について,次の式が成り立ちます.
$$
\begin{align*}
(A \cap B) \cup C &= (A \cup C) \cap (B \cup C) && (分配法則)\\
(A \cup B) \cap C &= (A \cap C) \cup (B \cap C) && (分配法則)\\
(A \cap B)^c &= A^c \cup B^c && (ド・モルガンの法則)\\
(A \cup B)^c &= A^c \cap B^c && (ド・モルガンの法則)\\
\end{align*}
$$
3つ以上の集合に対する演算
上で紹介した4種類の演算のうち,共通部分と和集合については3つ以上の集合に対して定義することができます.以下では$${n}$$を正の整数,$${A_1, \cdots, A_n}$$を集合とします.
$$
\begin{align*}
\bigcap_{i=1}^n A_i &= \{x \mid 1 \leq i \leq n である全ての i に対して x \in A_i である\}\\
\bigcup_{i=1}^n A_i &= \{x \mid x \in A_i である i (1 \leq i \leq n)が少なくとも1つ存在する\}
\end{align*}
$$
そしてこれらに対してもド・モルガンの法則が成り立ちます.
$$
\begin{align*}
\left(\bigcap_{i=1}^n A_i\right)^c &= \bigcup_{i=1}^n A_i^c\\
\left(\bigcup_{i=1}^n A_i\right)^c &= \bigcap_{i=1}^n A_i^c
\end{align*}
$$
集合族に対する演算
3つ以上の集合に対する演算からさらに一般化して,無限個の集合に対する演算を定義することができます.そのためにまず集合族について説明します.
集合族とは元が集合であるような集合のことを言います.すなわち集合の集合ということです.例えば$${\{\{1\}, \{1,2\}, \{2\}\}}$$は集合族です.
次に添字付けられた集合族というものを定義します.集合$${\Lambda}$$によって添字付けられた集合族とは,全ての元$${\lambda \in \Lambda}$$に対して集合$${\{A_{\lambda}\}}$$が1つずつ対応付けられている集合たちを集めたもの$${\{A_{\lambda} \mid \lambda \in \Lambda\}}$$のことを言います.このとき集合$${\Lambda}$$のことを添字集合といいます.また実際には$${\{A_{\lambda} \mid \lambda \in \Lambda\}}$$を$${\{A_{\lambda}\}_{\lambda \in \Lambda}}$$と表記することが多いです.
例えば$${n \in \mathbb{N}}$$に対して$${A_n}$$を閉区間$${[0, 1/n]}$$とすると,$${\{A_n\}_{n \in \mathbb{N}}}$$は$${\mathbb{N}}$$によって添字付けられた集合族です.
そしてこの添字付けられた集合族に対して次のように共通部分と和集合を定義します.
$$
\begin{align*}
\bigcap_{\lambda \in \Lambda} A_{\lambda} &= \{x \mid 全ての \lambda \in \Lambda に対して x \in A_{\lambda} である\}\\
\bigcup_{\lambda \in \Lambda} A_{\lambda} &= \{x \mid x \in A_{\lambda} である \lambda \in \Lambda が少なくとも1つ存在する\}
\end{align*}
$$
添字集合$${\Lambda}$$が$${\mathbb{N}}$$であるときにはそれぞれ
$$
\bigcap_{n=1}^{\infty} A_n, \quad \bigcup_{n=1}^{\infty} A_n
$$
と表記することも多いです.
例えば
$$
\begin{align*}
\bigcap_{n \in \mathbb{N}} \left[0, 1 - \frac{1}{n}\right] &= \bigcap_{n = 1}^{\infty} \left[0, 1 - \frac{1}{n}\right] = {0}\\
\bigcup_{n \in \mathbb{N}} \left[0, 1 - \frac{1}{n}\right] &= \bigcup_{n = 1}^{\infty} \left[0, 1 - \frac{1}{n}\right] = [0, 1)
\end{align*}
$$
となります.
そしてこの場合についても次のようにド・モルガンの法則が成り立ちます.
$$
\begin{align*}
\left(\bigcap_{\lambda \in \Lambda} A_{\lambda}\right)^c &= \bigcup_{\lambda \in \Lambda} A_{\lambda}^c\\
\left(\bigcup_{\lambda \in \Lambda} A_{\lambda}\right)^c &= \bigcap_{\lambda \in \Lambda} A_{\lambda}^c
\end{align*}
$$
直積
集合$${X}$$と$${Y}$$の直積とは
$$
X \times Y = \{(x, y) \mid x \in X, y \in Y\}
$$
という$${X}$$と$${Y}$$の元の組からなる集合です.例えば,いわゆる$${xy}$$平面は集合としては$${\R \times \R}$$であり,$${xy}$$平面上の点は$${(a,b)}$$のように表されます.