『少女革命ウテナ』とルネサンス絵画

少し前の話ですが。

YouTubeでセーラームーンの期間限定配信が終わってしまい途方に暮れていたところ、知人に『少女革命ウテナ』を薦められました。そこで、とりあえずYouTubeで公開されている第1話を見たのですが、物語の内容はさっぱりわからず(笑)



でも、印象はなかなか強烈でした。

まず、オープニングのクレジットに「J.A.シーザー」の名前があることにぎょっとしましたし(※J.A.シーザー:寺山修司の劇団「天井桟敷」で演出・音楽を担当しており、寺山修司の死後「演劇実験室◎万有引力」を結成し活動しています)、デフォルメされた手足の長い人物や、左右対称性の強い建築など、非現実的な絵面にも驚かされました。影絵の少女たちの芝居がかった台詞まわしも頭から離れません。そして、やはり音楽のせいでしょうか、どことなくアングラ演劇ふうなのです。

とはいえ、この第1話だけを見ても何が何だかさっぱりわからなかったので、ここで投げ出すのはきっと勿体ないだろうと思い、全39話を見ることにしました。(まぁ、数週間後に最終話を見終えて、それで内容がよく理解できたかというと……)


前置きが長くなりました。
ここから本題です。


『少女革命ウテナ』では毎話必ず、広場での決闘シーンがあるのですが(不思議な力を持つ“薔薇の花嫁”こと姫宮アンシーをかけた一騎打ちです)、そのシーンを見ているうちに、私はとある絵を思い出しました。
パオロ・ウッチェロという画家の《聖ゲオルギウスと竜》(1470年頃)です。(なんと偶然にも、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」にて来日中。東京展は終了し、現在は大阪へ赴いています。)


ロンドン・ナショナル・ギャラリー展HP
(みどころNo.2の「構成と主な作品」をご覧ください。)

ロンドン・ナショナル・ギャラリーHP


何百年も昔に描かれたとは思えない、奇妙な絵です。「絵画」というよりは「イラスト」のよう、とでも言いましょうか。
展覧会HPでは、次のように解説されていました。

「初期ルネサンスの画家ウッチェロは、遠近法や数学に長けたことで知られます。ゲオルギウスは竜退治で知られる戦士姿の聖人で、ここでは疫病をもたらす竜を成敗し、囚われの姫を救い出す逸話が描かれます」

でも、この解説を読んでからもう一度絵を見ても、そんなふう(騎士によるお姫様の救出劇)には見えないのです。
何なのでしょう、この拭いきれない違和感。

戦闘を無表情で見守るお姫様、一見しただけではわかりにくいお姫様と竜との関係(囚われの身というより、竜を従えている魔女のようにも見えるのです)、ひとり孤独に奮闘する戦士……

そう、この絵のお姫様が、なんとも姫宮アンシーっぽいのです。だんだん、ルネサンス絵画が『少女革命ウテナ』のワンシーンに見えてきます。



絵だけでなく、音楽や文学、演劇といった様々なところでも、こういうことは起こり得るんですよね。時代も国も違うところに、似通ったイメージを見つけてしまう、ということ。
そうやって、皆んなが、色んなものを、自分なりの線でつないでいて、最終的にはすべてのものが、どこかで何かとつながっているのだろうと思います。


画像1

せっかくなので、姫宮アンシーを描けば良かったのですが……
これは天上ウテナ

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