見出し画像

戦争論より2 斜行戦術〜勝利をもたらす画期的アイデア!

私が現代語訳した新刊、
超約版・戦争論
(ウエッジ、本体1100円)
について、お話しさせていただいています。

19世紀、クラウゼヴィッツが本書を書くにあたり、
影響を与えた人物が2人います。
1人は少し前の時代のプロイセン王、
フリードリッヒ2世(大王)。
もう1人はクラウゼヴィッツも戦った
フランス皇帝・ナポレオンです。

その2人の何がすごいのかは、
「戦争論」のカギにもなりますが、
まずはフリードリッヒ大王。

画像でフルートを吹いている人物ですが、
こんなふうに音楽を発展させることで
プロイセンを文化大国に押し上げた人物でもあります。
バッハを敬愛していたそうですね。

ベルリンを首都にし、
のちに「ドイツ」統一の中心となった国、プロイセンですが、
この頃、大王がこの国を他から抜きんでた国に
強化したことが大きかったわけです。

そんな彼が生み出した画期的戦術が、
「斜行戦術」なるもの。
この言葉、本書を訳して初めて知ったのですが、
なるほど、よく映画や漫画でもあるかもしれない。

簡単にいうと、
たとえば軍の先鋒隊に敵部隊の左側を攻撃させる。
敵は当然、応戦をしますが、
その間に先鋒隊をぐるっと回転させて、
本体が左側から奇襲攻撃するわけです。

言うのは簡単ですが、
実行するのはなかなか勇気もいるし、
条件も必要になる。

しかしこの戦術で
自軍の何倍もの軍勢を打ち負かしてしまったのが
フリードリッヒ大王なんですね。
当時、多くの将軍がこの戦法を真似たのですが、
完全に真似ることのできた人は
1人もいなかったそうです……。

ただ、そんな戦術よりも、
大王が優れていたのが、その戦略です。

フランス革命が起こり、ナポレオンが登場し、
列強国がことごとく翻弄された当時。
まだ小国だったプロイセンは同盟の都合上、
対フランス戦に参加しますが、
「負けても兵力を失わない戦い方」に徹しました。

結果、当時、ドイツを圧倒していた
オーストリア帝国が弱体化し、
プロイセンはドイツ地方のリーダー的存在国に
のしあがることができたわけです。
戦争の混乱を実はうまく利用したんですね。

戦争は「嫌なもの」ですが、
歴史を見れば、
鉄や火薬から原子力やインターネットまで
技術革新のアイデアが生まれた土壌にもなっています。

クラウゼヴィッツの視点は、
そういう部分にも注がれているんですね。

いいなと思ったら応援しよう!