教員でもサ高住でのワークショップにてこずります。その理由は?
サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)のアーティストレジデンスに参加、つまり、サ高住に滞在しております。4月から3月まで、1年間です。
私は、現在学生をしておりますが、
並行して、
ここ10年ほど書写書道の非常勤講師(中学高校)や、大人向け通信添削講座のの添削講師をしておりますので、書道を教えるということに関しては、一応プロです。
1クラス40人の中学生、最近は未経験者が多かったり発達障害持ちの生徒さんが増えてきていますので、道具の置き方、使い方、片づけ方、汚さないようにどんなふうに体を動かすのか、一つ一つ丁寧に説明することに慣れております。例えば、墨汁を硯にそそぐ際に、遠くの方から注いだら、飛び散って周囲を汚しますから、そうならぬよう、硯にできるだけ近づけて注ぐように伝えますし、注いだ後に、蓋をしないで置いておく生徒さんもチラホラいらして、その結果、机から落ちたらどんなふうに床やご自分の服がどんなふうに汚れるか、一つ一つ解説しています。
それでも、なかなか伝わりません。クラス内を何度も歩いて、手取り足取り(足は取りませんね)教えて回るので、一人で対応するのは、かなりキツイですが、それでも、何とかだんだん生徒の皆さんに覚えていただけています。4月から始まる授業ですが、5月に入り、何度目かの授業になりますと、もう、ほとんどの生徒さんたちは、自力で準備・後片付けを軽やかにこなします。
上達させるのも上手いと自負しております。プロジェクターに自分の手を映し、書いているところをしっかりと見ていただきつつ、言葉で理解、頭で理解しながら練習していただきますので、ドンドン皆様上達されています。(個人的な意見ですが…)
しかし、です。
そんな私でも、サ高住でのワークショップはてこずります。
滞在開始後、はじめてのワークショップは…
入居早々、4月末から5月初めのゴールデンウイーク中に書道のワークショップを開催しました。
最初にご参加くださったのはたった2人の女性でした。
少人数なので、どんどん進めて、どんどん上達して頂こう!教えるのは得意!と意気揚々と立ち向かったのですが、、、
まず、上手になりたいと思ってはいないということがわかりました。
2人のうちの1人は、なんと、書道では禁じ手の手本を下に敷いて
敷き写し
をし始めてしまいました。
えええええ!書道で、敷き写しなんて、小学生だって禁止だって習って知ってるはず…
聞けば、この女性の旦那様は学校で校長先生だったそうです。だから、敷き写しはご法度とよ~くご存じのはずなんです。なのに、目の前の女性は、平然と敷き写しをしている、なんでなんで??と私の頭はパニックでした。
でも、顔に出さずに、平然を装っておりました。
もう1人は、ただ、話し相手が欲しかったご様子でした。
これまでの人生をただただ、ひたすら話続けてらっしゃいました。個人情報なので、書きにくいことなのですが、ふんわりと。
結婚、ハネムーンに始まり、旦那様を10年間介護したこと、相続で子供たちともめたこと、一通り出来上がった口上のように、ツラツラと最後まで、とにかくひたすらお話されてらっしゃいました。
そして、その女性お2人が、仲良くなるかと言えば、そうでもなさそうです。どちらの方も、ご自身の言いたいことだけ言っているだけに見えるのです。むしろ、自分が話したいのに、話をさえぎられることを嫌うようにも見えます。
話し相手が欲しいだけなのでは…
どちらの方にとっても、書道は興味の対象ではないのでは?と感じました。お2人とも、お友達は欲しい、でもそのお友達は、自分の話を聞いてくれる人、相手の話を聞きたいわけではなさそうです。
この時の私はただ、そこに聞き役として存在するだけでした。
ワークショップ講師としての役割は無い、と感じた時間でした。
数か月後になって、気づいたこと
いろんな方々のご助言を頂いて、気づいたのは、高齢者の皆様も、私の年代も、中学高校の生徒の皆様も、内気なタイプと外交的なタイプと、どの年代でもいろんなタイプがあるということです。
こんなこと当たり前のことです。でも、気づくのに時間がかかってしまいました。
なかなか内気な居住者様とお話するチャンスを作れずにいたのです。
今ならわかります。
見ず知らずの講師が開催するワークショップにわざわざ意気揚々と参加できる方々は、外交的な方々、話し好きな方々です。
内気な方々は、なかなかお誘いしても出てきては下さりません。
おそらく、日によっては体調が悪かったりもします。気持ちも不安定だったりもします。自分に自信が無い日もあると思います。それを乗り越えて出てきてくださるというのは、大変なことです。
押しかけワークショップをチャレンジしています
だから、最近は、押しかけワークショップをしております。
なかなかワークショップ会場まで出てきてくださらないので、お部屋のドアをトントンとノックして、10分程度何か作ってもらって、会話をして、それで次の部屋へ、というような、いわば、突撃といいますか、押しかけワークショップです。
このワークショップの参加くださる方は、他の居住者様に会わずに済みますので、心理的に気楽なご様子です。
居住者様どうしでお友達になることの難しさ
どの居住者様も人生経験が豊かな方々ばかりです。だから、自分がお友達になりたいタイプとそうでないタイプの切り分け感覚が、すでに出来上がっているように見えます。無理にお友達になって、心配事が増えるよりも、心静かに一人で過ごしていたい、苦手な方からのアプローチは、全力で阻止する、気力を振り絞って阻止する、そんな気持ちが伝わってくる時があります。
居住者様たちは、平均年齢85歳です。自力で外出できる方は一部です。ほとんどの方は独力で外出がむつかしい方々です。だから、自力で外とつながり交友関係を作ることは難しいです。
外部とお友達関係を構築できる可能性が広がれば、お友達候補が沢山出来て、孤立せずに過ごせるのではないかと、今考えている課題の一つです。