肩関節の不安定性を肘と肩甲骨後傾から考える
以下の2つの記事の続きになります👇
今回は、肩甲骨後傾が肩甲上腕関節関節の安定化に寄与していると判断した評価と治療の流れを解説します。
今回の症例で効果的だった流れになるので、一般論という訳ではありませんが、十分に有効な知見になると思うので、ぜひ見ていってください。
さっそく本題に入ってきます。
🔶不安定性をどのように評価するか
変化を見るためには初期設定を確認しておく必要があります。なので、まずは介入前の状態を確認するところから開始ます。
今回使ったのは、肩甲上腕関節関節の伸展および外旋です。
肩甲上腕関節中間位から肩甲骨に対して上腕骨を伸展させた時の周囲の緊張や抵抗感を確認します。この時、運動学的に伸展位に操作するのではなく、屈曲位から相対的に伸展させることで評価しました。
不安定な状況にある場合、相対的に伸展させていくと小円筋や三角筋に緊張が起こるのでその変化を察知します。
また、外旋させるとより不安定性が強調されます。
この緊張が生じる肢位を確認して、介入後の比較材料とします。
🔶介入の実際
では、ここから介入に入ってきます。
コンセプトとしては、肘の運動に伴い肩甲骨のアライメントが崩れる(今回の場合は前傾になる)ことなく、上腕骨に対する肩甲骨の後傾位を維持できるかです。
これを達成すべく、3つの介入を実施しました。以下にそれらの詳細を解説します。
🔹介入①:上腕骨に対して肩甲骨の後傾させる
前提条件として、上腕骨に対して肩甲骨が前傾にあると肩の不安定性が改善されないのでアライメントを修正していきます。
まず、患者さんの介入対象にある上肢を持ちます。この時持ち上がることはせずにベッドに置いてある上肢の下にセラピストが手を入れて持ち上がる準備をするイメージです。
手を入れたら持ち上がる前にもう一方の手で肩甲骨の後傾に誘導します。この時に烏口突起と肩峰後角を持って後傾させました。
後傾位に保持しつつ、ここで上肢を持ち上げます。そうすると上腕骨が関節窩で視点を作るように圧迫するので、肩甲骨はその位置(後傾位)に止まってくれます。
持った上肢をゆっくり降ろしても肩甲骨が前傾しないことが確認して、アライメント補正を終了しました。
この段階で肩の伸展操作を実施してみると、最初よりは多少可動域が改善しますが、大きへな変化はないです。
🔹介入②:肘伸展の改善
次の肘の伸展に映ります。
肘と肩甲骨に跨るのは上腕二頭筋の短頭です。なので、この上腕二頭筋短頭を治療対象とします。
最初に肘屈曲位の状態から肩を伸展させて安定している角度を探します。そこから少しずつ肘を伸展させて不安定にあるところを見つけます。
そのポジションで烏口突起をモニターしつつ、上腕の前面を圧迫したり滑走したりして烏口突起が動くポイントを探し、見つけたら肩甲骨の前傾に注意しながらリリースします。
肘が伸展できたら、ポジションを変えながら反復します。
この介入でも安定性の改善は見られるのですが、前腕を回外させると一気に不安定になるという所見は改善しませんでした。
🔹介入③:肘屈曲の改善
ぼくとしてもかなり意外だったのですが、最も効果的だったのは上腕後面への介入でした。
肘の屈曲を操作して、上腕の背側のどのポイントに滑走不全があるかを見つけて、そのポイントをリリースしました。
肘屈曲改善に伴って、肩の伸展や外旋が改善してきて、さらに前腕の回外時も肩甲上腕関節の安定性も改善しました。
この一番改善したポイントは、重要なので次回の記事でもっと詳細な手技を解説したいと思います。
🔶介入後の変化
これらの介入後に肩の伸展と外旋が大きく改善しました。大きくと言っても角度が一気に40°や50°増加したわけではありません。
ADL上では、術側の手を使えることはほとんどなく、歩行時も防御的に緊張して手を振ることすらできていませんでした。
この介入後に変化としたは、ほとんど自動運動ができていなかったところから少しずつ動かせるようになっていきました。
この方は普段杖歩行しているのですが、杖の紐を手首に通すときに術側の手を添えて使えたりとか歩行時の自信を持って腕を振ることができたりなど、ちょっとずつの変化が見えてきました。
この症例では、人の考え方として肩甲上腕関節を安定化させることよりも肩甲胸郭で代償できるように運動をリモデリングさせる考えもあります。
しかし、自分で動かすことにおいて肩甲上腕関節に一定の安定性がないとなかなか生活で腕が活躍することはできません。
入院していること、毎日介入できることというメリットを十分に利用できるためにこのように介入してきました。
今回はこれまで。
先ほども言いましたが、次回は肘の屈曲時にどうゆうことを感知して進めたのかを解説します。
それでは。
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