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琉球セメント安和桟橋での不当逮捕(2月1日)とその報道のあり方について。

「塩川デイ」に際して

現在東京滞在中のわたしは残念ながら現地に駆けつけることは叶わないのだが、2月21日と22日は「塩川デイ」と銘打たれた、辺野古新基地建設ゴリ押し工事(=政府による蛮行。あらゆる観点からみて間違いだらけの愚挙暴挙)に対する非暴力抵抗・直接行動の結集日だ。
呼びかけ団体は、本部町島ぐるみ会議。県内外から集った市民が通常よりも多い人数で、牛歩による抗議・阻止行動を、主に辺野古埋め立て土砂運搬のダンプトラックに対して繰り広げる。
しかし皮肉なことに、20日、21日と付近の海上の波風が強く、その影響を受けやすい塩川の港では、辺野古埋め立て土砂搬出作業はおぼつかなかった。
わたしは毎日必ず船舶位置情報をチェックし、防衛省沖縄防衛局に雇われた罪深きガット船(クレーン付き土砂運搬船)全21隻の位置を正確に把握しているが、一昨日20日はどうだったかというと、朝7時頃いったん塩川港に着岸した「第三十八ひなた丸(長崎)」がものの20分もしないうちに作業を諦めて離岸し、結局終日、塩川港でのガット船の動きはなかった。ランプウェイ台船(ダンプトラックが乗り込めるタイプの台船)への土砂積み込みも午前11時台にストップし、作業・警備関係者はそのまま解散となった模様(これは現地からの情報による)。
昨日21日(「塩川デイ」初日)、念のため朝7時すぎ、現地・本部塩川港におられる崎山光雄さん(仮名)に電話して、状況を教えていただいた。
やはり風は強く、機動隊どころか、毎日出勤のテイケイ(旧帝国警備保障)警備員の集団も姿を現さず、事業者(防衛省沖縄防衛局)側に作業を始める気配なし。翌22日も天候次第ではあるが、防衛局としては3日続けて作業をストップさせたくはないだろうから、明日は(自分たちも牛歩を)頑張るしかない、とのことであった。
「塩川デイ」に関しては、当然これを沖縄防衛局や警察当局が察知していないはずはなく、22日は機動隊の諸君も、いわゆるカマボコ車輛に乗せられ、現地に送り込まれることだろう。
(注※21日は、塩川港での作業がなかったため、参加者の多くが琉球セメント安和桟橋へ向かい、そのダンプ出入口での牛歩行動を行い、結果として、埋め立て土砂運搬をかなり滞らせることができたようである。本日22日は、朝7時から本部塩川港、琉球セメント安和桟橋、双方で作業が始まっている)

今回に限らず、いつでも短時間でも、駆けつけられる人は、ぜひ本部塩川港(本部港塩川地区)や琉球セメント安和桟橋へ。

そこで本日はあえて、警察やメディア関係者に対して、次のように注意喚起をしておきたい。
・機動隊員含む警察官たちは、憲法によって保障された表現の自由に基づくこのアクションの参加者に対して、不当な逮捕、拘束、強制排除など、絶対にしてはならない。
・また、万一そのような理不尽な事態が起きたとき、メディアの人びとは、まるで警察権力の広報機関へと堕してしまったかのような、間違った報道姿勢を取ってはならない。

本部塩川構内を走るダンプトラックの前で牛歩する女性。2022年7月撮影。
本部塩川港や琉球セメント安和桟橋で牛歩を頑張る女性たちの多くは、ダンブトラックの運転者と目と目を合わせ「止まってくれてありがとう」と、深々とお辞儀をしてからクルマの前を歩み始める人も少なくない。2022年7月。
塩川港構内で牛歩する市民の持つ幟には、「新基地は住民の暮らしと命をおびやかす!」と書かれていた。2022年7月。

「埋め立て土砂が今日もキャンプシュワブ工事用ゲートから入っていきます!」は、間違い。

ところで、本稿の本題に入る前に、読者諸賢に知っていただきたいことがある。あらゆる観点からみて間違いだらけの辺野古新基地建設ゴリ押し工事の埋め立て土砂の運搬の現状について、である。
じつはその実態を誤解している人が意外と多い(メディア関係者でさえ!)という事実を痛感させられたのは、昨年後半ぐらいのことだ。
ずばり言うと、辺野古埋め立て土砂そのものは、辺野古工事用ゲートから搬入されているわけではなくて、すべて海上運搬である。これを誤解している人が、とても多い。
ではその搬出場所は、と言えば、名護市安和の琉球セメント安和桟橋と本部町崎本部の塩川港(本部港塩川地区)である。
つまり、差し当たっての埋め立て土砂運搬阻止のための重要拠点は、この2ヵ所ということになる。この2ヵ所での行動がいかに大切か、と言い換えてもよい。

辺野古の工事用ゲートに列をなして基地内へ入っていくダンプトラックは、圧倒的に荷台が空の車両が多く、これはすなわち基地内の工事現場を走り回るトラック。砂や路盤材等の道路整備用資材を運び込むトラックもかなり目に付く。あるいは多数の生コン車の車列も新基地建設に携わる車両であることは間違いない。だから市民有志は、工事を1分1秒でも遅らせるために、車両進入の時間に合わせてゲートに座り込む。その意味は大きい。
つまり、厳密に言えば、一部メディアの発する「埋め立て土砂が今日も辺野古の工事用ゲートから入っていきます!」という象徴的なアナウンスは、これは完全に間違いなのであるが、しかし辺野古ゲート前で座り込む行為は、今も間違いなく正しいのだ。
ついでに言うが、ひろゆきや高須克弥(敬称略!)といったネトウヨ同然の人びとは、こんな基本的な事実すら学習する気がなく、沖縄の民意そのものを貶めようとしていわけで、確信犯のレイシスト(沖縄差別をして恥じない者)と断言してよいだろう。県民投票や辺野古が最大の争点の知事選などで何度も繰り返し明確に示してきた「辺野古新基地反対」の民意を、野蛮なやり方で踏みにじってきた政府(とそれを支えてきた多くのヤマトゥンチュたち)の罪深さには一切言及せず、座り込み日数を掲示する看板を茶化すようなレベルの低いTwitter攻撃しかできない輩である。
が、SNS世界の住人には、彼らに騙され乗せられ、付和雷同してしまう人が多数いるらしく、もはや驚愕するほかない事態である。中央のメディアの劣化を含め、この国の悲惨な現状に言葉を失う。
事はひろゆきや高須克弥を嗤うだけでは済まない。全国メディアに属する人びとには、辺野古ゲート前座り込み現場以上に重要とさえ言える琉球セメント安和桟橋や本部塩川港の牛歩の現場ぐらいは、せめて取材してもらいたいものである。

軽微な容疑での不当逮捕をいち早く「実名報道」したNHKの異常さは、徹底的に厳しく批判されるべきである。

本題に入ろう。

去る2月1日の午前中、名護市安和の琉球セメント安和桟橋の通称「ダンプ入口」において、辺野古埋め立て土砂を運ぶダンプトラックの前で牛歩行動をしていた80代男性が、公務執行妨害容疑で逮捕された。
それから間もなく、わたしのスマホにも知らせは届いた。名護市内で朝昼兼用の沖縄そばを食べ、本部半島へとヒカンザクラの花見がてらの気分転換ドライブへと出た道中だった。
私事で恐縮だが、わたしはちょうどその頃思うところあって、慌てて取材に走り回らないこと、あるいは、たとえ「良かれと思って」のことであったとしても気になる現場へ急いで駆け出して行かぬこと、を己に言い聞かせ、自身の「多動傾向」をいさめていた。よって、琉球セメント安和桟橋や男性が搬送された先の名護警察署へ向かうのではなく、その日の夕暮れ時近くにはあえて、ミラムイ(本部富士)のてっぺんに登り、絶景を眺めつつ、呼吸を深~くして、沈思黙考の時を持ったりしていた。(その様子の一端は、このFacebook ライブ配信の通り。
➡️https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=569541078179096&id=100002144582975 )
結局黄昏時まで本部半島の山の中にいたため、安和桟橋へ向かったのは、夜7時を過ぎた頃だった。
そこには、午前中にまさにその場にいて、不当逮捕の瞬間を目撃した山田隆行さん(仮名)がいた。牛歩行動の常連の名護市民の60代男性で、わたしも日頃からお世話になっている人だが、逮捕の状況の一部始終をわかりやすく教えてくれた。

山田さんの説明を要約すると、経緯はこういうことになる。

逮捕されたのは、毎週のように那覇から通ってくる元教員の80代男性。やや足が不自由(=後の新聞報道で脊柱間狭窄症の影響と判明。添付の琉球新報記事参照)なので、普段からゆっくり歩く人。土砂運搬のダンプトラックの前での牛歩は幾度となく経験している。その日もいつも通りの牛歩行動をしていた。現場の実情をよく知り、淡々と行動するこの人が、突飛な行動をしたり、ましてや警察官に対して乱暴な真似をすることなど、断じてあり得ない。この日も、ただプラカード(柔らかいプラスチック素材のボードに書かれた文言は、「サンゴの移植 破壊を止めろ」。)を両手で持って、琉球セメント安和桟橋に入ろうとするダンプトラックの前をゆっくり歩いていただけ。
では、なぜ不当逮捕されてしまったのか。
山田さんは、記憶をたどり、若干想像力も働かせつつ、こう分析した。

「その方は、昨日今日ポッと安和の牛歩に来たわけじゃないんです。何度も何度もここに通っている方だから、牛歩の要領もよくわかっているし、無茶なことをするはずもない。問題はむしろ、一人の機動隊員にあったんです。見慣れない若者で、もしかしたら安和桟橋の警備は初めてだったかもしれません。彼はなんだか最初から張り切ってしまっていた。いかにも使命感に燃えて、活発に動き回って、いろんな人の牛歩を押さえ込もうとしていた。わたしなんか、彼に直接「そんなに押したりしちゃ駄目だよ」と伝えたぐらいです。その彼に、ちょうどダンプ入口で牛歩中の80代男性は捕まってしまったんです。男性はその若い機動隊員に強い力で肩か腕を掴まれ、痛い、何するんだ、という感じで振り向いて、そのとき持っていたプラカードがコツンと機動隊員に当たったかもしれない。その程度のことで、公務執行妨害だ、となってしまったわけなんです」
この8年余りの月日のなかで、辺野古新基地抗議関連の不当逮捕を何十例も知っているわたしだが、山田さんの話を聞いて、嗚呼いかにもありがちな、というべき微罪中の微罪容疑の「公務執行妨害の疑い」による不当逮捕だと感じた。
一晩警察署に泊められてしまったとしても、翌日には間違いなく解放されるケースだと予測できた。

ところが、である。
不当逮捕当日の夜のうちに(20時19分)、NHK沖縄のWEBニュースが、なんと容疑者の実名報道に踏み切ったのである。
わたしの抱いた第一印象は、「この記事はおかしい。異常な報道というしかない」というものだった。開いた口が塞がらなかった。
いや今も、当事者や関係者がNHKに厳重抗議し、謝罪を求めて当然の報道だったとさえ思っている。
そのとき、すぐにそのような意味のことを発信しなかったのは、例えばわたしがこのNHKのWEB記事のURLを紹介することで、この80代男性の実名が面白おかしく拡散されてはたまらん、という思いがあったからだ。

しかし、今は状況が変わった。

容疑者扱いされたご本人の仲本和男さん(82歳)が、追って琉球新報の直接取材に応じ、同紙2月11日付社会面のその記事には、仲本さんの名前も顔写真も掲載されたからである。
NHK報道で「名誉毀損」されたと言って過言ではない仲本さんにとって、琉球新報のそのインタビュー記事は、「名誉回復」を果たす役割を担うもの、と言ってよかった。わたしは安堵し、このオリジナル記事を書く動機を得た次第である。

ゆえに、比較検証のための証拠資料という意味合いで、ここに各社の記事画像(スクリーンショット)を紹介することを許されたい。

このNHKニュースは、典型的な「警察発表垂れ流し報道」だ。しかも、通常の牛歩を「車の前に飛び出した」と表現し、「突然、左手で殴ってきた」などと、あたかも乱暴者であるかのように印象操作を狙った警察の言い分のみ報じている。明らかに警察側の事実歪曲発表の垂れ流しであり、報道としては最も劣悪で罪深い部類に入るものだ。

翌朝の地元紙2紙も、NHKほど醜悪でないにせよ、率直に述べれば、警察の言い分に重きを置いた駄目な書き方だった。

琉球新報2月2日付社会面。
不当逮捕のニュアンスはまるで感じられない、警察の言い分優先の記事だ。
沖縄タイムス2月2日付社会面。
同紙が逮捕の現場を目撃し撮影していた人の証言も紹介しているのは、せめてもの救いか。しかし、どういう現場で何が起きたのか、詳細がさっぱりわからない記事だ。


逮捕時の一部始終を撮影した動画を繰り返し見て検証したわたしは、これは紛れもない「不当逮捕」だと断言する。

「事件」から何日か経っても、NHKの実名報道、その内容の劣悪さに怒りが消えることのなかったわたしは、後日あらためて、琉球セメント安和桟橋の常連メンバー山田さんに連絡を取った。動画を見せてほしい、と申し出たのである。2月1日の夜にお会いしたとき、動画の存在があることは確認できていた。

そうして入手できた動画の逮捕シーンを、前後の数分含め何度も巻き戻して見た。
確かに他の機動隊員よりも活発に動く一人の隊員がいた。マスクにサングラス姿なのでその表情はうかがいにくいが、奇妙な一生懸命さとでも呼ぶべき気配がはっきりと見てとれた。
仲本さんのところへ向かう直前には、ダンプトラックの接近に合わせて牛歩を開始しようとする男性に駆け寄り、体に手を掛け、歩み出しの一歩そのものをストップさせている。
次の瞬間、ダンプ入口のゲートぎりぎりの、ところを、カメラ位置から見ると手前から向こうへ(地図上で言えば名護から本部塩川方向へ)歩き始めた仲本さんに気付き、その背後へ駆け寄る。
そして、この機動隊員は、もうすぐダンプ入口のゲート部分を渡りきり歩道へ達しようかという仲本さんの右腕を、自身の左手で明らかに強い力で掴んで、強引に押した。
仲本さんはややよろけながら、「何をするんだ」という不満を露にした風情で振り向き、機動隊員の(力の入った)右腕を、自らの左手で(しかも平手で)軽く叩いた。明らかに「こんなに強く掴んで押すのはやめてくれ!」という意思表示だ。
次の瞬間、機動隊員はさらに強い力で仲本さんの体を拘束し、あっという間に琉球セメント安和桟橋構内へと、仲本さんを連れ去った。
それからしばらく、仲本さんは、複数の警察官に取り囲まれることとなる。
翌日名護署で解放されたとき、仲間の前で仲本さんは逮捕時の様子を説明した(これも動画が残っている)。そのときには、自身がやや足が不自由でゆっくりしか歩けないところを押されてよろけて危険を感じたこと、この機動隊員に掴まれたところはアザができていること、拘束されて琉球セメント桟橋構内に立たされている間も、近くで警察官たちが逮捕してよいかよくないかを話し合う声が聞こえていたこと、などを仲本さんは話した。
目撃者の山田さんによれば、「拘束されたのが9時20分頃で、パトカーが来たのが10時近かったと思います」とのことだ。

わたしはさらに注意深く、証拠の動画をチェックした。
拘束される直前の仲本さんは、ダンプ入口ぎりぎりの場所を向こうからこちらへ(塩川から名護方向へ)、女性と並んでゆっくり歩みを進め、機動隊員に指一本触れられることなく、こちらへ渡りきっている。

逮捕シーンの直前、機動隊員の過干渉を受けずにこちらへ渡りきる仲本さんと女性の牛歩参加者。
黄色い目印のポイントが、仲本さんが拘束された位置。


逮捕シーンを見ても、機動隊員が強引に背後から腕を掴みに行かなければ、あとほんの数秒で、ダンプ入口ゲートの向こう側へたどり着くところだった。
「あとほんの数秒」を待てずに突進するような危険なダンプトラックの運転者はいない。
警察側の安全確保のための適切な職務遂行、などという詭弁は通用しない。
つまりは、警察側(一人の機動隊員)の牛歩の市民に対する過剰警備・過干渉の行為が、82歳男性の抗議のリアクションを誘発させたのであり、それゆえ、紛れもない不当逮捕だと断言できるわけである。

これは、仲本和男さんにとって「名誉回復」の役割を果たす大切な記事なので、証拠資料として全文読める形にさせていただいた。関係各位、ご寛容ください。
本部塩川港。2022年。
本部塩川港。2022年。
本部塩川港。2022年。
本部塩川港。2022年。
琉球セメント安和桟橋、ダンプ出口。2022年。
琉球セメント安和桟橋、ダンプ入口。2022年。
琉球セメント安和桟橋構内、ストックヤード。2022年。

じつはこの #note 記事、塩川デイのスタートに合わせて発表するつもりが、あまりに久々の投稿のため、操作に戸惑い、塩川デイ2日目がとうにスタートしたこんな時刻になってしまった。

わたしたちはこれからも、警察含む中央権力側の印象操作に惑わされることなく、沖縄の民意の正しさを、しっかり認識し続けていきたい。
本部塩川港や琉球セメント安和桟橋で牛歩を頑張ってくださっている皆さん、今日も、これから先も、ずっとご無事で。
それから、蛇足を承知でくどいぐらい書くわけだが、マスメディアに属する皆さんは、塩川と安和の2ヵ所の重要性を再認識し、権力への監視の眼差しをもって取材に当たってください。よろしくお願いします。
(了)

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