10冊本屋 (徳島編)
10冊本屋 (徳島編)
2024年8月1日(木)〜9日(金)、「泊まれる本屋まるとしかく」(徳島県美馬市脇町)で「10冊本屋」をひらきます。通販でも注文可能。8月末〜発送予定。『夏葉社日記』(サイン本)も販売中。
※秋が店にいるのは、9日(金)午後のみ。
10冊本屋について
「10冊本屋」は、ぼくがガチで好きな本を10冊だけ選んだ本屋です。3年前の10月、第一弾として東京の高円寺で開催しました。詳しくは、『夏葉社日記』をお読みください。
この企画では新刊ではなく、既刊本に注目しています。何年も前に出ていても「あたらしく読める」、そんな本を選びました。本の意味や価値のひとつは、何年も何十年も先のあたらしい読者に届けられることだと考えています。
高円寺編で選んだ10冊 (2021.10)
↓著者名/タイトル(出版社)刊行年月日↓
① 河田 桟/くらやみに、馬といる(カディブックス)2019.10.20
② 本田哲郎/釜ケ崎と福音(岩波現代文庫)2015.2.17
③ 尹 雄大/体の知性を取り戻す(講談社現代新書)2014.9.18
④ 鳥羽和久/おやときどきこども(ナナロク社)2020.6.25
⑤ 本を贈る/若松英輔、島田潤一郎、矢萩多聞、牟田都子、藤原隆充、笠井瑠美子、川人寧幸、橋本亮二、久禮亮太、三田修平(三輪舎)2018.9.30
⑥ バーナード・マラマッド(小島信夫・浜本武雄・井上謙治 訳)/レンブラントの帽子(夏葉社)2010.5.1
⑦ 出口かずみ/どうぶつせけんばなし(えほんやるすばんばんするかいしゃ)2018.4.24
⑧ M.B.ゴフスタイン(谷川俊太郎 訳)/ねむたいひとたち(あすなろ書房)2017.9.22
⑨ 李龍徳/死にたくなったら電話して(河出文庫)2021.9.7
⑩金城一紀/SPEED(角川文庫)2011.6.25
徳島編で選んだ10冊 (2024.8)
さて、今回の「徳島編」のために選んだ10冊を、著者名/タイトル(出版社)刊行年月日、〈好きな一文〉、「紹介文」という順で紹介します。
金城一紀/GO(角川文庫)2007.6.25
〈俺が国籍を変えないのは、もうこれ以上、国なんてものに新しく組み込まれたり、取り込まれたり、締めつけられたりされるのが嫌だからだ。もうこれ以上、大きなものに帰属してる、なんて感覚を抱えながら生きてくのは、まっぴらごめんなんだよ。たとえ、それが県人会みたいなもんでもな〉
〈でもな、もしキム・ベイシンガーが俺に向かって、ねえお願い、国籍を変えて、なんて頼んだら、俺はいますぐにでも変更の申請に行くよ。俺にとって、国籍なんてそんなもんなんだ。矛盾してると思うか?〉
「勝手ながら、これは〈ぼくの物語〉でもあると思っている。著者の金城さんはむかしのインタビューで、「在日の若い人に読んでほしい。新しい世代に。もし普遍的なものが浮かび上がるなら、日本人の若い人たちにも感応してほしい」といっていた。金城さん、ぼくには届いていますよ!」(秋)こだま/夫のちんぽが入らない(講談社文庫)2018.9.14
〈「そうですか? 僕はこんな心の純粋な人、見たことがないですよ」〉
「こだまさんの本を読むと、いつだって勇気が出る。こだまさんはうまくできない人の代表者のようで、みんなの代わりにいっぱいいっぱい失敗してくれているみたいだ。他人事だとは思えない。ぼくはこだまさんを支持する。圧倒的に支持する。」(秋)クロード・レヴィ=ストロース(大橋保夫 訳)/野生の思考(みすず書房)1976.3.30
〈彼らはフットボールを覚えたが、両軍の勝ち負けが等しくなるまで、何日でも続けて試合をやる。〉
「この難解な人文書を、ぼくは夏葉社で1日30分、33日をかけて読み切った。何度も挫折しそうになりながら読んだこの本は、その後、ぼくを何度も励ましてくれる。」(秋)アントニオ・タブッキ(須賀敦子 訳)/インド夜想曲(白水Uブックス)1993.10.20
〈人の顔を憶えているとは、いったい、どういうことなのか。写真は持っていなかった。あるのは思い出だけだ。〉
「この本の内容を詳しくはおぼえていない。だけど、インドの粗末なホテルのシャワーの音だけは思い出せる。」(秋)尹 雄大/脇道にそれる(春秋社)2018.5.20
〈私は他者を理解していない。だが他者性を理解するようになった。私はあなたのことはわからないが、「あなた」はわかる。〉
「友人につきあって立ち寄った本屋さんで、ぽつんと棚に残っていた『脇道にそれる』。何気なくページをめくった瞬間、これは大切な一冊になる、と確信した。尹さんは人生をかけたトライ&エラーを通して、自己否定は幻想だということを繰り返し教えてくれる。この本を読んだときのあの体の震えは、いまでも忘れられない。」(まるとしかく店主・うちだみく)さくらももこ/ひとりずもう 上下(集英社文庫)2014.7.18
〈「そういえば私、今年はお父さんにカブト虫欲しいって言わなかったな…
お父さんは少し寂しかったかもしれないな。…私も少し寂しい。」〉
「ずっとずっと、泣きたくなるような気持ちを抱き締めながら読んだ。高校生のももちゃんが漫画家になるかどうか悩んでいるころのこと。選んだのはコミック版。」(秋)鳥羽和久/おやときどきこども(ナナロク社)2020.6.25
〈私たちは関係性そのものでできていて、私たちには本体はなく、単に現象のみがあるからです。〉
「この本を子ども目線で読むと、何度も救われる気持ちがする。そうだ、そうだ! と思えてしまう。だけど鳥羽さんは、たんに親が悪いとはいわない。これは親と子の関係性について書かれていて、それは親と子に限らず、〈あなたとわたし〉の関係性について書かれているとも読める。鳥羽さんは冷静に、親も子も見つめている。だけど、そこに冷たさはなく、いつでも愛があふれている。」(秋)本田哲郎/釜ケ崎と福音(岩波現代文庫)2015.2.17
〈神は、「不足がちのところ」をなによりも尊重すべきものとして、体を組み立てられました。〉
「ヴァチカンで聖書の研究をしていた本田哲郎さんは日本に戻り、神父として大阪・釜ヶ崎を赴任先にえらぶ。家賃17,000円 、水道光熱費を入れて2万円ちょっとの生活。彼は神父でありながら、釜ヶ崎の労働者に「洗礼を受けたほうがいい」とはいわない。それどころか、「洗礼は受けなくてもいい」「受けないほうがいいよ」という。そんな「不良神父」の話をぜひ聞いてほしい。」(秋)島田潤一郎/あしたから出版社(ちくま文庫)2022.6.10
〈では、本がなにを伝えられるかというと、かなり大雑把だけれど、こころであり、気持ちだと思う。〉
「夏葉社・島田潤一郎の原点。この本の島田さんはドタバタしていて未完成で、とても素敵だ(もちろん、いまも素敵です)。ぼくはいまもずっと、この島田さんを追いかけている。あとがきにはラッキーなことに、ぼくの名が出てくる。」(秋)河田 桟/くらやみに、馬といる(カディブックス)2019.10.20
〈馬ががなににも束縛されず、自由に、馬らしくあればあるほど私も解き放たれる。〉
「いままで読んだ本のなかで、いちばん好き。ぼくはこんな本がつくってみたくて、編集者をつづけている。」(秋)
特設通販ページ(「10冊本屋」 徳島編)
こちらで購入すると、ちょっとしたオマケがつきます。
【8月9日イベント】夏葉社・島田潤一郎 × 秋月圓・秋 峰善(配信あり)
最後に、大事なお知らせです。
8月9日(金)19:00〜20:30、夏葉社・島田潤一郎さんと秋月圓・秋 峰善で、「泊まれる本屋まるとしかく」(徳島県美馬市脇町)にて、トークイベント「本をつくること、次に伝えること」をおこないます。
これまで島田さんとは2回イベントをやりましたが、ふたりが揃う機会はこれが最後になる予定です。配信もございますので、よかったら見に来てください。
↓イベント予約ページ↓
2024.7.31
秋月圓 秋