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秋のエッセイ

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『夏葉社日記』を書いて (400字)

『夏葉社日記』を書いて (400字)

『夏葉社日記』を執筆して半年経つが、あれから一度も読み返していない。どうにも照れくさく、いまだにページをめくることができない。編集志望のぼくが、まさか自分で本を書くとは思わなかったのだ。それでも本にしたのは、ぼくを救ってくれた夏葉社をみんなに知ってほしかったからだ。
本書はウェブサイトでの連載をもとに加筆修正をおこなった作品であるが、書籍化するにあたってのいちばんの心配事は、縦書きにたえられるかと

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一服/夏葉社日記(番外編)

一服/夏葉社日記(番外編)

夏葉社で働くことが決まったときから夢見ていたことがある。それは憧れの編集者である島田潤一郎さんの本づくりを学ぶことでも、彼と昼食をともにすることでもなかった。ただ、島田さんといっしょに煙草を吸ってみたかった。
2021年2月4日、夏葉社初出勤日。茶色に白のピンストライプのジャケットを慌てて羽織りキャメルのコートを持って、家を飛び出した。「始業に間に合わないかもしれない」、ギリギリだった。最寄駅に向

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100歳のおばあちゃんが死んだ──秋月圓を立ち上げる

100歳のおばあちゃんが死んだ──秋月圓を立ち上げる

いよいよかもしれない、という連絡が母から入ったのは祖母が死ぬ3日前だった。2週間前に大腿骨を骨折して入院した祖母はその日、急に意識がなくなったようである。父と母、親戚たちはすぐに病院へ駆けつけたが、ぼくは行かなかった。月末に刊行予定の『夏葉社日記』の校了中(締め切り)だったからだ。

1999年9月9日、83歳で祖父が死んだ。吉か凶か、その日は朝鮮民主主義人民共和国の建国記念日だった。それから約2

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