クッキー焼いたら…
クッキー焼いたことある?
私は高校生の時に母がお弁当作りを放棄してからというもの、毎日お弁当を自分で作っていた。
母がお弁当作りボイコットした話はまた別で話すとして、日頃から料理をしていたからそれなりに扱いは慣れていたのだけど、お菓子作りは料理とはまた別の難しさがある。
料理はある程度目分量でも美味しいけど、お菓子は少しでも分量を間違えると大失敗する。
ほんの少しの温度差でも膨らまないだとか、とにかく繊細。
私がお菓子作りに手を出したのも高校生の時だ。
バレンタイン、誰もがお菓子作りに挑戦したと思う。私も例に漏れず、友人に配ろうと思って手を出した。
実家のオーブンはお菓子のレシピも記録されていて、材料から作り方までオーブンが表示してくれて、焼き上げは温度調節や時間もオーブンがやってくれる。
至れり尽くせり。
こんなんよっぽどなことしない限り、失敗しない。
材料を用意し、レシピ通りに生地を作った。
型抜きもして、クッキングシートの上に並べる。
もう後は焼くだけ。
オーブンがいい温度でいい時間で焼くだけ。
私は焼き上がるまでワクワクして待っていた。
1人何枚で、ラッピングどのリボンにしようか。
いい匂いがしてきた。
バターの香ばしい匂い、ふんわりと甘い匂い、少し香ばしすぎるかな?
期待して焼き上がりを知らせる音楽を待っていた。
ピロリンピロリン。
やっと焼きあがった。
私はウキウキしながらオーブンに手をかけた。
どんな風に焼けてるかな。焦げ目少しついてるかな?
さ、いざオープン!!
オーブンを開けて飛び出してきたのは、薄さ2〜3ミリの真っ黒な煎餅だった。
炭。
言うなれば炭。
おかしい。
私の知っているクッキーは厚さが2cmくらいで、少しきつね色のとこもあるベージュの生地で……。
こんな焦げた匂いなんてしない。
私はさっきまでクッキーの生地だったものを口をぽかんと開けて見つめた。
何度見てもどんだけ見てもそこにあるのは炭。
持ち上げるとボロボロっと黒いクズが落ちる煎餅のような炭。
え?私が知らんうちにクッキーは煎餅になったん?
もしかして知らんうちに炭のような煎餅のことをクッキーと呼ぶようになったん??
呆然としている横でオーブンがチカチカ光っていた。画面には「こういうときは」という項目が出ていた。ボタンを押すと失敗例と原因が出てきていた。その中に「炭のような煎餅になった」というのは無かった。
翌日学校で友人に件の炭クッキーを渡した。
事前に「クッキーが炭になった」とは伝えてあり、友人も「いや、どうやったらクッキーが炭になるんよ、見てみたいから持ってきて」と言っていた。
ラッピングだけいっちょ前に可愛く仕上げた炭煎餅を恥ずかしそうに渡すと友達は大爆笑。
そりゃもうゲラゲラ笑う。
クッキーで失敗する人居るんだ!!って。
そう言いつつ、その友達は袋に包んでいた炭煎餅を全部食べて「焦げてる!」とまた笑い転げていた。
良い友人を持ったものだと、私はここで感動の涙を全く流さなかったが感謝はした。
この後ほかのお菓子作りに挑戦したものの軒並み炭が出来上がったのは内緒。
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