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研究生という名の「フリーター」で過ごした一年を振り返る④


学会誌への投稿を目標に,論文執筆を行う(9~10月)


来年に学会誌に出すための論文を執筆し始めた。今年の〆切には学会入会の手続き等の関係で間に合わなかったのは悔しかったけれど,ひとまず形にしようということになった。
博士後期課程の研究計画書のヒントにもなった。

数日に一度,研究室の先輩とマンツーマンで進捗を確認&相談し,月に一度のゼミでの報告までに執筆を進めた。自分ばかりが相談するだけでなく,先輩の研究相談も自分なりにいろいろな助言や提案をした。

修士課程の研究室では,正直なところ先輩にここまで頼ることはできなかった。自分の研究室は自分よりも5歳以上年上の人ばかりで博士後期課程の人がほとんどで,自分のレベルと先輩のレベルが違いすぎてどう相談したらいいかわからなかったし,初歩的なことを相談したり,自分ができないことをできないと共有したりすることができなかった。

でも,研究をしていく上で,誰か一人は「研究に関してどんなことも相談してもokな相手」という人がいないと難しいことに気づいた。むしろ,そういう人がいることで研究ができることがわかった。

自分は地元で一番の進学校にいた時は成績はトップの方にいたし,大学進学後も東大や早慶といった有名大学の学生やそのような大学を卒業して有名企業に就職または起業した若手社会人のコミュニティにいた。いわゆる優秀なエリートな人間だった。そういう中では,自分の弱さを見せること,できないことを伝えることはとても難しかったし,「恥」だと思っていた。一人でなんでもできることが当たり前,常に効率よくクオリティの高いアウトプットを出さないといけないと思っていた。修士課程の研究室も。そういうことができる先輩が多かった。
そういう面倒くさい意識を引きずったまま生きていくことは限界なんだ,人に頼って頼り合いながら生きていくんだって,とても当たり前なことの大切さをやっと理解することができた。

ゼミでも先生からは個人的に嬉しいフィードバックをいただき,来年の学会報告にもつなげられる可能性も出てきた。いったん11月までで論文執筆はある程度形にでき,それ以降は出願準備を始めていった。

いろいろなところを旅をする(3~10月)


この一年は,特に前半で色んなところに行った。諫早(長崎県),小布施(長野),京都,彦根(滋賀県),真鶴や三浦半島(神奈川県),金沢(石川県),松戸や浦安,佐倉(千葉県),東京など。
フィールドワークや学会,仕事というような訪問が多かったけれど,観光よりも「地域で何かをする」ことが好きな自分には合っていた気がした。

観光のような訪問も自分の中では多かった。高校時代の部活の先輩に会いに行ったり,母とふたりでちょっと贅沢したり,大学の後輩とふらっと自然に触れたり,研究室の先輩と博物館や美術館巡りをしたり…

大学生の時は時間に余裕があるはずなのに,「私立文系の大学に通っていたら,ただでさえ暇で怠けていると思われるから,忙しくしないといけない」という謎の強迫観念を持って異常なまでにアクティブに動いてしまっていたし,学生っぽい旅行やドライブが得意でなかったし,コロナ禍だったというのもあって,いろんな場所に行くことはあまりなかった。

この一年は,嫌でも暇にならないといけない時が少なくなかったし,周りが社会人になって色んな働き方をしていて周りを気にしなくてもいいような気持ちにもなれていたから,「忘れていた青春」のようなものを取り戻していっているようだった。

金沢で先輩にネイルをしてもらった写真
真鶴は山の上から見える景観がとてもよかったし,若い人の活動に元気をもらえた
小布施は第二の地元のようになっている
同い年の人が運営する農園でぶどう狩りをさせてもらった
大好きなコリラックマばかりのホテルに宿泊した時
夜行バスの関係で数時間滞在した京都
念願の六曜社で友達と再会
研究室の先輩と,DIC川村記念美術館

研究助成獲得&学会の研究会の批評論文を執筆する(10~11月)


学会の研究助成を獲得でき,少しずつだけどフィールドワークを始めたり,人の話を聞いたりしていた。地元のゲームセンターを盛り上げるために,駐車場でお囃子の演奏をするという話を聞いた時はちょっと色々驚いたけども,太鼓を叩きながらいつもは聞けない話に耳を澄ませていた。

学会の共同研究でお世話になった先生から紹介を受け,学会の研究会の報告の批評論文を執筆することになった。報告テーマが自分の分野とは少し違ったので,当たり障りのないことしか書けないかも..?と思いつつ,報告テーマの分野の本を5冊ほど読み込んだり,自分のような若手(とも言えない立場かもしれないが..)としての視点を入れたり..と貴重な経験になった。学会の批評論文というものは,そこまで重要な業績や学問的貢献にはならないかもしれないけれど,執筆を通して学会として求める学問の理想や先行研究を理解・確認することができるので,若手が学会に活動する上でとても重要な機会になっていると感じた。

研究をしつつ、今までできなかったことを沢山やる、そんな時期だった。




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