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(本)辻村深月さん『傲慢と善良』

読む時の参考資料

登場人物

『傲慢と善良』登場人物

繋がりのある本

タイトルの参考:ジェーン・オースティンの名作『高慢と偏見』
18世紀のイギリスの田舎での結婚事情:身分の高い男性がプライドを捨てられなかったり、女性の側にも相手への偏見があったりで、うまく行かないという話。

傲慢と善良の意味

傲慢さ:高ぶって人をあなどり見くだす態度であること。
本書の意味→自分の価値観で判断する様

善良さ:素直で性質がいいこと
本書の意味→鈍感や無知、思考停止。親や誰かの言う通りにしてきた『良い子』、自分がない。

総括

婚活を軸に、主人公である架と真実の人間性が、痛いところまで如実に描かれていました。2人を取り巻く人々にも学びながら、自分のうちにある傲慢と善良について深く考えさせられる作品でした。

また、この本を読んでいる間、自分のうちに潜在的にあった、承認欲求や、エゴなどが辻村さんによって言語化され、輪郭を持ち、まるで生きているかのようにグイグイ自分の心をかき乱してくる感覚がありました。
すごく心をかき乱してきながらも、たくさんのことに気づかせてくれて、たくさんのことを考えるきっかけを与えてくれる本です。

参考価格 

電子書籍 765円 単行本 1760円 文庫 861円

作成目的

私自身の備忘録。
kindleで読みながら心に残った部分をハイライトしていた。
それで終わらせるのが勿体無いなと感じ、後日ハイライト部分に感想をつけたり、より深く思考をしたりした。
記号の意味:🤔感想、✏️抽出、📝思考整理

本編の心に残った場所とメモ

【うまくいかない理由づけ】p99

資産家であることも、個性的であることも、美人であることも、本当は悪いことではないはずなのに、婚活がうまく行かない理由を、そういう、本来は自分の長所であるはずの部分を相手が理解しないせいだと考えると、自分が傷つかなくてすみますよね。
(✏️)良すぎるってとこに注目しても傷つかない。
(📝)ポジティブって盲目なんだろうな。良いところにしか目を向けず、悪いところのせいにしない。ポジティブの方が確かにストレスは少ないだろうけど、ポジティブの方がすごいとは言えない、自分の嫌なところが見えてない、見てないだけかも。

【マッチングアプリの開発背景エピソード】p100

(マッチングアプリが元々友達作りのために開発されたものであるという意見に対して)
「やましい目的のために開発されたわけではないんですよって、言いたいがために用意された作り話じゃないかしら。結婚や、恋人を作りたいという気持ちが『やましい』と理解されてしまう背景にはちょっと言いたいこともありますけど」

(🤔)素直に受け取らないで思考するの、面白い。

【婚活でうまくいく人】p114

「うまくいくのは、自分が欲しいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人」
(✏️)自分の欲しいものがわかっている人は、早く手に入れられる。
(📝)自分のありたい姿とか、成し遂げたいことが明確な人ほど、そこに辿り着くのが早い。逆に、ゴールや目標がないまま発車しても、どこにも辿りつかない。

【ピンとこない、ピンとくる】p121

相手の価値の方が自分よりも高いと思えばピンとくる、そして、そこには言葉や気持ちに対する感謝が生まれる。
だけど、ささやかな幸せを望むだけと言いながら、自分に付けている値段は相当高い。なので、なかなかピンとこない。

(🤔)
まだ分類できる気がする。
自己評価が低い+自信がない
→自分を選んでくれるなんてありがたい、申し訳ない。
自己評価が高い+自信がない
→幸せにしてもらおう、もったいなくないように自分の価値に見合う人を選ぼう。
自己評価が高い+ものすごい自信がある
→自分が相手を幸せにする、誰を選んでも幸せになれる。

【陽子の傲慢】p136

陽子「結婚するまでは、真実のことは私が責任を持ってこの家で見るって決めていたのに。」
真実『家を出るかどうかは真実の選択であって、それは陽子が決めることではない。”結婚するまでは”という言葉にも、無意識のうちの傲慢さが表れている。では、真実が結婚しなかったら、あなたたちはその時、どうするつもりだったのか。結婚することを前提にして娘を自立させないことに何の意味があるのか。

(🤔)陽子にとって、真実は、所有物なんだろな。

【見当違いが生まれる理由】p138

世界が自分の見える世界で完結しているから。
自分の目に見える範囲にある情報が全てで、その情報同士を繋ぎ合わせることには一生懸命だけど、そこの外に自分の価値観や世界があることには気づかないし、興味もない。

(✏️)井の中の蛙大海を知らず。
(📝)
自分は自由を求めるので、もっと広く海を知りたいと思う派だ。
でも、広い海の方が楽しいと感じている時点で、水族館生まれ、水族館育ちではないのだと思う。
大海を知れる範囲が広い人は、好奇心が旺盛で、行動力があったり、交友関係が広い人であったり、情報メディアや、本などから、知識を吸収している人なのかなって思う。
外に出れない仕組みがある、もしくは外がないと思い込んでいるとなかなか遠くへはいけないんだろうな。

【親が決めてくれたor親に押し付けられた】p152

自分で決めることに慣れていない人生では、親が決めてくれたことに従う。
(🤔)決めてくれたって感謝になることがびっくり。自分だったら、決められた、口出しされたって解釈になりそう。私は、自分の人生の主導権を他人に握らせたくないという思いが強いんだろうな。
自分らしい選択ができるかどうかは、なかなか親の干渉度の影響を受けそう。

【自己評価額が高くなる理由】p157

自分の収入が低くても外見が悪くても、相手より自分が優っている部分にしか目がいかない。自分本意のパラメータ。
(✏️)自分の弱さを見れない人が、自分の評価を高くする。
(📝)逆にいうと、自分の弱さだけを見ている人は、自分の評価を低くするのかな。
極端すぎるのはよくない。自分の弱さを知りつつ、自分の強い部分もしっかり認められることで、無理なく自己肯定ができそう。

【真面目でいい子からの脱皮】p163

他から教えられて脱皮はできない。悪意とかそういうのは、人に教えられるものじゃない。巻き込まれて、どうしようもなく悟るもの。
教えてもらえなかったって思うこと自体がナンセンス。
悪意を知り、打算を学ぶーそうした負の感情を取り除かれ、苦労が内容にと親にお膳立てされた道を歩き続けると脱皮はできない。
親の望んできた『いい子』が必ずしも人生を生きていく上で役に立つわけじゃない。

(✏️)揉まれなければ学べないこともある。
(📝)いろんな事を経験する、もしくは本や映画で擬似体験しておくことで、人生の経験値があがる、対応力があがる。道徳ばっかじゃ意味がない。

【本書のテーマ】p169

傲慢さと善良さ。婚活に、傲慢さが障害になることの方は身をもってよくわかっていた。けれど、美徳である方の善良さがそうなるのは、あまりにもいたたまれない。
(🤔)ここの一文が今回のテーマみたいなところだと思う。傲慢さが足枷になることは、想像しやすいが、善良さが足枷になっていることは、気づきにくい。その、気づきにくい事を気づかせることがこの作品のゴールになっている気がする。

【ボランティアでの出会い】p118

そこでできた仲間や地元の人たちとは今でも連絡を取り合っていて、そう言う繋がりって自分には今後ずっと財産になる。
(🤔)『自転しながら公転する』でも、ボランティアに行ってたって話が出てきたな。ボランティアする機会があったらしたいし、そのためにアンテナ張っておこう。

【親の束縛の根源】p191

子供が信じられない。自分お子供のことを決めてやらなければ、動いてやらなければ、というう親たちの思い込みもまた、彼らが真面目で善良(鈍感や無知、思考停止)だからこそ起こるの
(✏️)考えずに尽くす事が、信じる機会を無くしている
(📝)自分の考えだけで、相手のためにやることをできるだけすることは押し付け、制限、伸びしろを奪う行為にもなってしまう。相手の状況、能力をアセスメントし、相手の意思を尊重した上で、最低限の補助をすることが、相手のためになる手助け。

【架が真実を探す理由】p211

婚活を再開する恐怖からきてる節もあるのでは。
真実のことが心配な一方で、自分の孤独と不安を直視できない。
自分はどうして真実を探しているのだろう。それは真実のためではなく、自分のためではないか。

(✏️)他人のためにしていると理由付けすることで、自分の問題から逃げようとする。
(📝)「あなたのためにしてる」なんて存在しないのでは?誰かのためになりたいのは、誰かが自分のしたことによって喜ぶ事が、自分の自己肯定感や存在意義に繋がっているからなのでは。相当愛していて、自分の事のように思えるもの、例えば、恋人や、自分の子供になってようやく、あなたのためにしている(自分の一部のためにしている)が成り立つ気がする。それが行きすぎて所有物のような扱いになって、陽子のところに繋がっていくっぽい。

【自意識過剰】p235

そんな値踏みするような目で、人は他人のことを見ない。家族になった状態を、恋人同士でいる状態を、ただそういうものかと見るだけだ。なのに、只中で苦しいうちは、自意識過剰にそんな物に拘泥してしまう。
(✏️)自分が気にしていて、よく見せたいと思ってる部分は、他人から見ると眼中にないどうでもいいことの可能性がある。
(📝)逆に相手を値踏みしてしまう部分=自分の気にしているところかもしれない。
自分に自信がある人ほど、相手に対して、そこまで注意深く値踏みしない。
逆に、自分に自信がない人ほど、相手の事をあらゆる分野でよく、値踏みする説。

【都合のいい物語】p248

相手の気持ちを蔑ろにし、自分が納得した相手でなければ自分の人生の物語に存在しないものとして目に映さない。
ー言い得て妙だと思う。相手のことを見ずにあくまで自分の意に沿うしか見えない恋は確かに「孤独」だ。

(✏️)求めすぎって思われたくないので、存在を消す。
(📝)求めすぎる=悪い子。あくまでずっといい子だと思われたい。いい子だと思われるために、自分がもらっている物をもらってないことにして、自分を弱く見せる。
お金持っているのが見え見えな人が、路上でお金くださいって言っていても、お金あげたくならないけど、ほんとに痩せ細ってて、どうしよもない状態に見える人が路上でお金くださいって言っていると助けてあげたくなる。自分が何も持ってないように見せるのって、あざといな。

【被害者になりたい】p287

マイナスのことを書く時でさえ、あくまで自分のことを『似合う』って言葉で肯定するような。そういう子。(←孤独な恋が似合う)
自己評価は低いくせに、自己愛が半端ない。諦めているから何も言わないでって、ずっといろんなことから逃げてきたんだと思う。
(✏️)私って可哀想って言い方してる時点で自分の事大好き。
(📝)ほんとに、自分の状況に満足していない+自分の事を好きになれない人は、もっとそこから抜け出すために努力するor変われない自分に怒る気がする。悲劇のヒロインにして、努力せず自分の事を愛せるなら、それでいいが、自分はそうなれない。だから、努力をして、より自己評価を高めるための理由付をしているのかな。今は、自分の現状を、主観的に、ある程度のものを持ててる、手に入れたって捉えてるけど、貪欲のため、満足しきれてない。
常に向上する姿勢をもっている時の方が、自分に自信が持てる。

【学びのスタンス】p301

ジャネットに以前、「あなたの行動力と語学力が羨ましい」と直接言ったことがあるけど、
その時、ジャネットが「真実は、自分の言葉で外国人とちゃんと話したいと思う?どこか違う国で暮らしたいと思うの?」と聞いてきた。「あなたがそうしたい、と強く思わないのだったら、人生はあなたの好きなことだけでいいの。興味が持てないことは恥ではないから」
(✏️)興味がないなら学ばなくていい。
(📝)たくさん学ぶことのできる人は、たくさんのことに興味がある人。好奇心が旺盛な人。この好奇心は、小さい子供により純粋なものが備わっていると感じる。真実のように、そういった好奇心から生まれる自由な行動を制限され続けると、自分からは何も興味を持てなくなるのではないだろうか。

解説部分の心に残った場所とメモ

【解説者選びと結婚選びの類似性】p440

作品に合う解説者を選ぶというのは、相手を選んでいるようで、自著の価値を客観的に測る作業なのである。
(🤔)この類似性を見つけられるのがすごい。

【作品が重く感じる理由】p440

何か・誰かを”選ぶ”とき、私たちの身に起きていることを極限まで解像度を高めて描写することを主題としているから。
(🤔)解像度を高めて描写してくれる分、受け手側も思考がしやすい。今までぼんやりしていた部分や、見えていなかった部分の輪郭が見えた。

【善良側の人生総括】p466

自分の意思によるビジョンではなく、不正解を避け続ける減点法の人生。
その人生を送っているうちは、不正解なわけでないので、取り立てて明確な不満も生まれない。だが、その状態に慣れると、自分が何を不満に思うのかというアンテナまで鈍っていく。不正解でもこれがしたい、という推進の意思を失うことは、正解であってもこれをしたくない、という反発の意思を失うことと同義なのだ。そうなると、ポジティブな方向にもネガティブな方向にも自分の意思が働かなくなり、ビジョンのない流れの中をただ揺蕩うことになる。

(🤔)山登り型や川下り型とは違う、ベルトコンベア型。自分には合わなさすぎて、考えただけで、息がつまりそう。

お礼

誰かに見られることを意識し、自分の中の感情を、できるだけ丁寧に言語化してみると、すごく考えが整理され、スッキリしました。
見てくれて、反応してくれてありがとうございます。
見てくださった方にも、何か良い影響ががあれば幸いです。



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