私がとあるボーイズグループの沼に落ちるまで(2)
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5.ポジションバトル本番
ついにポジションバトルの本番当日。
本番前に収録されたと思われるOVER THE TOP(OTT)2班のインタビューではF(落第)クラスのチームメイトが「勝つことが本田くんへの恩返し」「勝って本田くんを泣かせてあげたい」と語っていました。
短期間で慣れないダンスを覚えるのはとても大変だったと思うし(しかも本田くんの振付は結構難しかったんじゃないかと思う)、本田くんのダンス指導を厳しいと感じたこともあるんじゃないかと私は勝手に思っているのだけれど、彼らはとてもまっすぐに、そして曇りなくそう答えていました。
厳しくとも、どういう思いで本田くんが必死に教えてくれていたのか彼らにも充分伝わっていたんだろうなと感じたインタビューでした。
OTT2班のパフォーマンスは細かな動きの多いダンスとフォーメーションをクルクルと変えた立体的な構成で見る者を飽きさせない華やかなステージでした。
練習期間中、ダンスについていけてないメンバーを見たダンストレーナーの先生に「はぁ……心配」と言われていたチームとは到底思えない、全員が素晴らしい仕上がりでした。
また本田くんを除いた全員にソロパートの見せ場があり、まさしくチームで勝つことを目標とした本田くんらしい振付でした。
私もOTT2班のパフォーマンスに心を惹かれ感動しました。
華やかで、それでいて歌詞の内容に沿った強弱のある振付なので決して無理に派手にした、歌の邪魔をする感じはなく、見ていて自然とワクワクするようなパフォーマンスでした。
6.練習生・本田康祐の沼に落ちる
多分、私がしっかり本田くんの沼に落ちたのはこのパフォーマンスを見たあたりだったんじゃないかと思います。
厳密にはポジションバトルの練習シーンで気になる存在にはなっていたし、自然とOTT2班を応援していたし、自分でもどの瞬間にがっつり沼に落ちたのかは自覚はないのだけど、ポジションバトルの結果発表を待つときにはすでに本田くんにいい結果が出ますようにと祈るような気持ちで見ていた気がします。
パフォーマンスを終えてステージ上で投票を待つ間、急に本田くんが感極まって泣き崩れるシーンがありました。
当時は「同情票を買うために泣いたフリをした」なんて心無い声もあったようですが、私にはどう考えてもあれが演技のようには見えなかったですし、今の本田くんを知っている人ならきっと分かってくれるのではないかと思いますがおそらく彼はそんな嘘をつけるほど器用ではないと思いますw(本田くんごめんね)
ただただ責任感が強くて涙脆い、周りの人との関わりを大切にするアツくて夢にまっすぐな人です。
実際現場に観に行っていた方のレポートによると、放送では投票前に泣いたようになっているけど本当はすでに観客の投票は終わったあとで、チームメイトがステージの感想や本田くんへの感謝を泣きながら述べたのを聞いて泣いてしまったらしいのです。
OTTの結果発表、個人戦では1班・2班を合わせた12人中1位に本田くんが選ばれていました。
そして肝心のチーム戦でも2班が1班に勝利。
厳しいと思われていた1班への勝負に勝った瞬間、全員が泣いて喜んでいたことが印象的でした。
その中でも特に印象的だったのは本田くんの表情。
個人で自分が1位になったときは驚いた表情で口元に手を当て半ば固まってしまったようなリアクション。
一方でチームの得票で2班が1班に勝ったのが分かったシーンでは大きな声をあげて泣いて、メンバーと抱き合って喜んでいたのが印象的でした。
これは私の勝手な解釈ですが、個人1位は予想していなかった展開だったのではないかと感じました。
一方でチームでの勝利は「相当難しいこと」であるのは自覚しつつもリーダーとして全員を巻き込んで上に行かなければいけないと当初から明確な目標にしており、ずっとそうなるためにチームメイトと力を合わせて目指してきたことが叶ったこと、これまでの苦労が報われた喜び、そんなものが溢れ出したのではないかと感じました。
後にこのオーディション番組から見事JO1としてデビューを果たしたOTT2班のメンバーでもあった白岩くんは「JO1誕生までの軌跡」という映像作品のインタビューでこのポジションバトルについて「どうやったら格上(1班)に勝てるかをずっとやすくん(本田)と話してた。ここで反逆したらかっこよくない?と。考えて、考えて、考えて、本番当日まで振り合わせして直した」と振り返っており、1班に勝つためにひたすら話し合い、考え抜き、ギリギリまで最高のものを出せるように試行錯誤していた様子が伺えます。
各課題曲ごとの結果発表のあと、今度は練習生全体の中からダンス、歌、ラップ部門の順位発表(個人)があるのですが、なんと見事に全体でもダンス部門で1位になった本田くん。
チームメイトが本田くんのために喜んでいる姿も印象的でしたし、全く別のチームである川尻くん(現JO1)が本田くんのダンス部門1位に泣き崩れるように喜んでいました。
「俺より泣いてどうする」と照れる本田くんと、「めちゃめちゃ悩んでたのも苦労してたのも知ってたから。報われて良かった」と号泣する川尻くん。
これはオーディション中に培った彼らの絆のひとつでもあったと思いました。
ポジションバトルの練習中、本田くんが川尻くんのいるチームの練習風景を眺めているシーンがありました。
本田くんにチームのダンスの出来を尋ねる川尻くん、川尻くんとそのチームメンバーにアドバイスをする本田くん。
逆に「苦労してたのを知ってたから」と川尻くんが言うように、本田くんも川尻くんに「めっちゃ相談に乗ってもらってた」と語っています。
前回の「私がとあるボーイズグループの沼に落ちるまで(1)」のnoteにも書いたのですが、私はこういうオーディションというのはもっとずっと練習生同士がギラギラバチバチギスギスしていて重い雰囲気のものだと思っていました。
だって自分がオーディションに合格してデビューするのが目的で受けているのだから、自分以外は全員ライバルだし、自分が一番目立ちたいし、ライバルのために協力なんてできない……私ならきっとそう思います(だいぶ荒みきっている私の心)。
オーディション期間中は常に過酷と言ってもいいほどで、皆寝る時間も削って短い期間で歌やダンスを覚えるような切迫した日々の中で、自分以外のことに時間と心のリソースを割ける余裕なんてあるだろうか。私には多分無理です。
だけど彼らはそうではないんだなと心底思い知らされました。
ポジションバトルの練習中に本田くんが一瞬厳しい態度になったのも、自分だけのためというよりはチームみんなで上を目指さなければというリーダーとしての使命感と、このままのやり方では1班には勝てないよと気付いてもらうためだったのかなと思います。
実際、前回も書いたように自分のためだけであれば振付を担当した本田くんがダンスの苦手なメンバーにはもっと簡単な振付を渡して本田くんが教える時間を減らし、自分を中心にしてもっと目立たせる構成にしてしまうこともできたはずですが彼はそうはしていませんでした。
むしろ本田くんだけソロパートがなく、またフォーメーションも1番移動の多い大変なポジションを担っています。
だからその思いはチームメイトにも届いていたように私には見えましたし、決して仲の悪くなるような空気の悪さにはならなかったのかなと感じました。
時間は少し戻りますが、最初のレベル分けのあと3日後に再評価といってもう一度レベル分けを受ける日があったのですが、練習生たちはそのたった3日間ではじめて発表された番組のテーマ曲(「ツカメ ~It's Coming~」)とダンスを覚えなければいけませんでした。
これはもう、歌やダンスが得意な人でもかなりの試練のように思えます。
実際彼らは合宿中、ほとんど眠る時間もとらずに練習に明け暮れていました。
しかしその再評価までの短い期間中に川尻くんや本田くんといったダンスの得意なメンバーで各クラスにダンスを教えにまわっていたらしいのです。(第1回の順位発表式でも本田くんのエピソードとして少し触れられています)
「全体のレベル上げをして全員で良いパフォーマンスをしたい」との考えからだったそうです。
彼ら、一体どれだけ人間が出来ているのでしょうか。
私だったらライバルに協力なんてできないと考えている世界最小クラスの器しかない私とは天と地ほどの差があります。
もう、人としての性根が違う。人間としての周回数が違う。心から土下座して謝りたいです(誰に?)。
このエピソード自体は後から知ったものなのでオーディション当時は詳しくは知らなかったことですが、ああやって自分だけが目立てばいいという考えではなくチーム全員で勝つために嫌われてでもその役割を果たさなければと必死になったり、他のグループにアドバイスをしたり、他の練習生の1位を心から喜んであげられたり、そんな彼らのまっすぐさは人としてシンプルに見習わなければいけないと思いましたし、応援したいとはっきり思った瞬間でした。
そして自分1人目立てばいいということではなく、グループで活動しパフォーマンスするということの本質を分かっている人たちなのだなと感じたエピソードでした。
(3)へつづく
※
残念ながらProduce 101 Japan(シーズン1)の本編は現在配信されておらず、またYouTube上にあった公式のパフォーマンス動画もオリジナル曲ではないカバー曲は権利の関係か削除されています。
が、ファイナリスト(ネタバレ)の20人にはファイナルに向けた紹介動画が作られており、その中でのみカバー曲のわずかな欠片は見ることが可能です。
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