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【いちばんすきな花】第10話:細かすぎるあらすじ&感想

いちばんすきな花
第10話 2023/12/14(木) 22:00~

第10話。冒頭の3分間で、前回までのレビューで書いた私の勝手な想いがすべて回収されて泣きました(笑)

本記事では、ドラマ「いちばんすきな花」第10話のあらすじや台詞を、感想や考察を交えながらまとめています。
脚本や台詞が好きすぎて細かすぎるほどに残しているので、長いです!笑

※ネタバレを含みますので、これからご覧になる方はご注意ください。





●「いちばんすきな花」第10話

10-1. 丸付け

空港にて、ロビーを歩く男性客が小さな女の子にぶつかりそうになり、近くにいた美鳥を母親だと思った男性客は、「子供ちゃんと見てなさいよ」と美鳥に怒りをぶつける。すぐに女の子の母親がやってきて、勘違いだと気付いた男性客は、謝りもせず去っていく。

美容院にて、間違い探しの絵本を見ている小さな女の子が夜々に話しかける。見開きで見比べるべき二つの絵の片方のページが破られてしまっている。「これは全部違うね」と笑う夜々。

美鳥モノローグ「勘違いされる人生だった。間違い探しをしようにも、見比べる二つの絵の片方も、別物とすり替えられてしまっていた。あまりにも全部が間違っていて、指摘のしようがなかった。そんな人生だったけど、時々ぽつんと他のみんなとは違う人がいて、間違い探しの答えみたいに、一度見つけると気になって仕方なかった。その四人が正解なのか間違いなのかはわからないけど、私にとっては、間違いなく救いだった。

空港で美鳥を見送ったことを三人にLINEで伝えるゆくえ。するとすぐに、美鳥のもとへ、三人それぞれからメッセージが届く。
-夜々「将棋指そうと思ってたのに忘れてた!今度相手してね!」
-紅葉「次のときビール代返します」
-椿「2階のカーテンもいらない?」

美容院で別のページを開いて間違い探しをしていた女の子、見つけた四か所の間違いに赤ペンで直接丸をつけてしまい、母親が慌てて夜々に詫びる。
ページが破れてしまっている絵本だから大丈夫だと笑う夜々、二人が帰った後、破れたページを見つけ、セロハンテープで補修する。
その様子を見た谷本は、「こんなボロボロなの捨てていいよ」と声をかける。女の子が赤丸を付けたページを谷本に見せて笑う夜々。
-谷本「図書館のウォーリーみたいになってんじゃん。」
-夜々「図書館のウォーリー?」
-谷本「うん。誰かがウォーリーに丸付けてんの。もう自己顕示欲がすごいんだよ、俺が見つけたぞ!つってっさ。」
-夜々「みんな丸付けたくなるんですねぇ。」

この冒頭の3分、美鳥のモノローグで、前回のレビューでも書いた美鳥にとっての三人が語られて、号泣でした(涙)

冒頭、女の子のそばにいる女性=母親だと勘違いされてため息をついた美鳥。
そうやって、ぱっと見で関係性を決めつけてしまうことって、きっとたくさんある。

これまでの人生の中で、色々な噂話をされ、自分のキャラクターが人の中で作り上げられ、嫌われてきた美鳥。
親戚の中でも、母親の印象をもって自分が語られ、居場所が見つけられなかった美鳥。
もうそれがデフォルトになってしまっているから、どこからやり直せばいいのかも、どうしたら自分をわかってもらえるのかも、きっとわからなかったし、諦めてしまっていたのでしょう。
それでも、そんな自分以外の"みんな"の中に、"みんな"に染まらない一人と一人と一人と一人、椿とゆくえと夜々と紅葉に出会えたことが、美鳥にとっては救いだった。
前回までは、椿、ゆくえ、夜々、紅葉の視点で語られていた美鳥。
そんな美鳥にとってこの四人は救いだったのだろうということが分かりましたが、今回は初めて美鳥自身の口から四人が語られた
答え合わせが出来たようで、胸にぐっときました。

女の子の間違い探しの表現。
絵を左右で見比べて、片方は正しいという前提で、見比べたもうひとつの絵の異なる箇所を見つけて、丸で囲んでいく作業。
間違いを指摘するということは、正しいとされる正解があるということ。
その正解を正解と決めているのは、いつも人。
人間関係や世の中では、多くの場面で、いつも多数派や強い力のある方が"正解"とされる。
それが本当に正解なのか、誰にとっての何の基準での正解なのか、それに当てはまらないものは本当に間違いなのか、それは、わからなくて。
それでも、人は見比べて、違うところに丸を付けて、間違っていると指摘する。自分は正解側にいるという前提で、丸付けをしてしまう人は多い。
そして、気の済むまで見比べて、丸を付けて、叫んだら、去っていく。
そんなページがあったことも、丸付けをしたことも、すぐに忘れて、次の間違い探しへと進んでいく。
一度ペンで付けられた丸印は消えないし、破られてしまったページはもとに戻らない。
間違いだと指摘された側は、そのレッテルをずっと抱えて、傷ついた痛みをずっと抱えて、それが消えることはないのに。

ほんの3分ほどの冒頭シーンでしたが、この物語のテーマになっている価値観や決めつけというものが、間違い探しという視点で再度語り直される構成で、印象的な映像ばかりでした。

女の子が丸付けをしたページを見ていて思ったこと。
間違い探しって、間違いなのに、×印でなくそれを丸で囲むんだな。
ここが違うねって、見つけて、でもそれを否定するのではなくて、丸で囲んであげる。
違うねって、ただ気付いて、見つけて、認めてあげるだけ。
だからどう、あなたが違う、私が正解、そういう世界ではなくて、ただ「ここが違うね」「うん違ったね」、それだけの世界。
多様性を認めるとか、互いを尊重するとか、理解し合う、手を取り合うって、多分こういうこと。
本当はこんなにシンプルなことなのに、大人になっていくにつれて、忘れてしまうのかな。
椿、ゆくえ、夜々、もみじの四人は、美鳥にとって、ただそうやって丸を付けてくれる存在だったんだろうな。

ウォーリーを探せの場合は、正しい本物のウォーリーに丸をつけますよね。
間違い探しは、間違いに丸を付ける。
正しさも、間違いも、たいして違わない。どっちがどっちかなんて、その時々の場面やルールによって変わる。
はぁ。深い。好き。


10-2. 桜が咲くまで

実家の花屋で家に飾る花を選んでいるしている椿。その組み合わせを見て、「絶望的にセンスないね。それあれでしょ?いいと思ったのかき集めただけでしょ?」と楓。
-楓「大事なのは組み合わせだから。好きな花だけ集めたからっていい花束にはなんないんだよ。人間関係も同じだよ。

楓が選んで花が飾られたテーブルで、いつものように話している椿、ゆくえ、夜々、紅葉の四人。
ゆくえが、美鳥から空港で預かった伝言をそれぞれに伝えていく。
夜々には「恋愛は素敵なことだけど、恋愛以外に楽しみを見出して初めて素敵な人間になれる」。
紅葉には「仕事なんて何したってどうせ辛い。どうせ何しても辛いんだから、好きなことして辛くなりなさい。」。
椿には「原状復帰よろしくお願いします」。

物足りなさそうな椿を横目に席を離れる紅葉と夜々。
二人がリビングから出たのを確認して、話し始めるゆくえ。
-ゆくえ「桜が咲くって。そこの公園、桜が綺麗に咲くから春までは住んでみてほしかったって。以上です。」
-椿「あの二人が聞いたら…」
-ゆくえ「じゃぁ春まで!って言いだしかねないから。」

桜があまり好きじゃない、自分の名前が木に春と書くのに、みんな桜が好きだからなんだか申し訳なくて、と話す椿。
「でも、春が春なのは、桜が咲くからじゃないそうですよ。桜が散って、夏の花が咲き始めるから春は春なんですって。一年中春のお花が咲いていたら春は春じゃなくて、他の三つの季節があるから、春は春、夏は夏って…言ってました。」とゆくえ。笑い合う二人。

リビングに戻って来た夜々と紅葉。目くばせする椿とゆくえ。

椿が自分で組み合わせようとした花は、紫、黄色、ピンクと色とりどり。
楓が束ねた花は、赤を基調にしたまとまりの良い花束。
大切なのは組み合わせ。好きなものだけを束ねることが、美しいとは限らない。

例えば人間関係について、椿たち四人はそれぞれの人生の中でずっといつもどこか周りのみんなと自分が違って居心地が悪くて、だからこそ、居心地の良い四人と出会えた今は、その四人の世界では伸び伸びと過ごしていられる。
でもそれも、違和感のあった"みんな"との出会いや経験があったからこそ、見つけられた居心地のよい居場所なんですよね。

季節も、春夏秋冬と日本には四季があって、人それぞれ、好きな季節や苦手な季節があって。その基準なんて人それぞれだけれど、比較する別の季節があるからこそ、その季節が好きだと感じられる

好きなものばかり、同じ意見ばかり、同じ価値観ばかりを集めていたら、その良さにも、価値にも、きっと気付けなくなっていく。
価値観とか、多様性とか、そういうテーマに対して、細かく細かく切り口を変えて色々な形で伝えてくれる脚本だなと感じました。

美鳥からそれぞれへのメッセージ、夜々へはお姉ちゃんっぽく、紅葉へは先生っぽく語りかける口調が、美鳥との関係性がナチュラルに表れていて好きです。
空気を読んで、椿への本当のメッセージは椿にだけ伝えるゆくえちゃん、さすがの配慮でした。
夜々と紅葉が戻ってきた後、その話は内緒ねっていう感じで目くばせをして笑う二人が可愛かった。
こんなシーンがあっても、椿とゆくえの間には特に恋のようなものが芽生える気配はなくて、年上組の二人ならではの関係性がほほえましいです。
この四人は、似ている四人だけれど、年齢的には、椿・ゆくえと紅葉・夜々は10歳くらい離れていて、色々なことの経験値はやっぱり違うから。
この年上組の少し落ち着いた感じ、やっぱり大人な二人が、好きです。


10-3. 二人組が四つ

自宅で会話するゆくえとこのみ。このみが出かけた後、テーブルに残された雑誌にこのみがドッグイヤーしたページを開き、「高いな」と呟くゆくえ。

椿、引っ越しの日を決めたと美鳥に電話で伝える。「桜咲いたら見に行くから。その時おうちおじゃまさせてね。」と椿。

居酒屋で二人で飲んでいる紅葉と夜々。
-夜々「みどちゃんからしたら私達ってどう見えてるんだろうって、嫌だったかなってぐるぐる考えてて。」
-紅葉「居心地悪かっただろうなとは。」
-夜々「だよね。」
-紅葉「四人組に見えるって言ってた。で、自分が入ると五人組じゃなくて二人組が四つなんだって。」
-夜々「なるほどね。みどちゃんとの二人組が四つあって、だからそれで四人組が出来たんだ。」
-紅葉「そう、関係ない人には全然通じない気がするけど。」
-夜々「でも五人には通じるよ。一発でわかる。四つ二人組があった。うん、わかる。みどちゃんが嫌な思いしてなければなんでもいいんだけど。
-紅葉「夜々に言われなかったら自分で塾やろうって思い立てなかったって。春木がいなかったら誰も信じられなくなってたし、ゆくえがいなかったら教師になる夢諦めてた知って。」
-夜々「佐藤くんいなかったらは?」
-紅葉「なんも言われてない。俺いなくても先生の人生何も変わってないでしょ。」

「佐藤くんがみどちゃんの人生にどう左右したか聞いてあげる」と夜々。「やめて!」と二人で笑いながら話していると、近くの席にいた紅葉のバイト先の同僚が紅葉に気付き、声をかけてくる。
「彼女さん可愛いですね」と言われ「友達です」と夜々が否定するが、二人で楽しく飲んでるじゃないか、別に隠さなくて良いのにと疑う同僚。しまいには「佐藤さんと付き合ってて楽しいですか?まぁ佐藤さんかっこいいですもんね。」と言ってくる。苛ついて笑顔で応戦する夜々。
-夜々「お二人は佐藤さんのお友達ではないんですか?」
-同僚「ただのバ先の先輩です。」
-夜々「じゃあ佐藤さんのことなんてたいして知らないんですね。」
-同僚「まあバイトで会うだけですからね。」
-夜々「じゃあ黙ってろよ。知らないやつのこと知ったように言うな。お前らアレだろ、ヤフコメ書いてんのお前らだろ、このコメンテーター気取りが。ばーか!ばーかばーか!」

紅葉に店外に連れ出されながらも、馬鹿と何度も叫び続ける夜々。

椿さん、春を待たずに引っ越しを決めたんですね。もうなんの迷いもない、清々しい表情でした。

夜々と紅葉は二人で居酒屋に行けるくらい、本当に仲の良い友達にいつのまにかなっていますね。
先日美鳥と五人で椿宅に集まった時、あえていつも通りに過ごしていたであろう夜々と紅葉も、どことなく、美鳥が感じていそうな違和感にはやっぱり気付いていた。
でもその違和感、つまり、五人組にはなれなくて四つの二人組だったという感じが、美鳥にとっても自分たちにとっても嫌なものでは無くて。
関係ない人は、「美鳥は馴染めなかったんだね」と片付けてしまいそうですが、五人にとっては、そうじゃない。
五人組になることが正解でもないから、別に良い。二人組が四つで良い。その価値観を共有出来る五人。それでいいねって、五人が思えていれば、よいんですよね。

最後の夜々ちゃんの馬鹿叫びまくり退場には笑いました(笑)
紅葉くんのバイト先の同僚、ほんとにどこまでもクソだな!!!!こんな失礼な人います?(笑)
失礼すぎるキャラ貫いてくれていて逆に嬉しいです(笑)
そしてここぞとばかりに、この同僚にというよりも、これまで自分に対して決めつけをしてきた人たちに対する怒りをすべてぶつけて叫ぶ夜々。
第1話の「二人に見えんのかよ!!!!!!」の夜々を思い出しました(笑)
紅葉くんの前だと、取り繕わない自分を出せる夜々ちゃんですね。


10-4. 電話するから

紅葉が会計を済ませるのを店の外で待っていた夜々。
「反省してます。もう二度と会わないやつらだと思ったら、溜まっているものが…」という夜々。「深く反省して。俺は会うから。明日会うから。」と紅葉。
-夜々「ごめんなさい。後悔してません。」
-紅葉「うん、いいよ。言ってることは正しかったから。馬鹿とか…馬鹿と買か言う?普通。」
-夜々「馬鹿にも伝わる言葉って馬鹿くらいだから。」

笑いながら歩く二人。美鳥からのLINEが届き読む夜々。
-夜々「"みんなじゃないってことが救いだった。みんなが自分を同じように見てると思ってたから、違う人もいることに安心した。お互い生きにくい性格だけど、ごまかしごまかし生きていこうね" だって。」

-紅葉「今度死にたくなったら死ぬ前に電話するから絶対出て。」
-夜々「うんわかった、私もそうする。」
-紅葉「お腹痛くなった時も電話するから。」
-夜々「それは自分でなんとかしてよ(笑)」

同僚に明日会う紅葉、気まずすぎる(笑)

美鳥の人生にとって、自分はたいして影響を与えていないと思っていた紅葉。
美鳥の言葉により、また自分の存在を肯定してもらえたようで、よかった。
人に影響を与えるって、何かのきっかけをつくったとか、その人のどこかを変えたとか、そういうことだけではなくて。
ただいてくれるということが救いになったり、安心できたり、そういうちょっとしたことだって、十分立派な影響なんですよね。
この四人の中で、紅葉ってたまにどこか三人とは違うキャラクターとして描かれることがあって、それが、「四人はいつも同じ」「四人はいつもひとつ」という一辺倒な描かれ方にならない大切な要素になっていますね。

そして、紅葉にとってお腹痛いときにお腹痛いって言える相手に、いつの間にか夜々ちゃんも入っていて嬉しかったです。
この言葉だけで、紅葉が心を開いたんだなということがわかってほっこりできるのは、これまで物語を見守ってきた私達視聴者にとってのごほうびですね。

それにしても、夜道を二人で歩く夜々と紅葉。マジで顔面偏差値が高い。美男美女。そんなことを今さら思いましたね。
でもそんな二人が並んで歩いていても、愛だの恋だのを感じさせない二人の雰囲気。
この雰囲気は、これまでの話の積み上げの中で、しっかりとキャラクターや心情が描かれてきたからで。
これだけの美男美女を組み合わせてこの二人を恋愛関係にしなかった脚本とキャスティングが最高だなと改めて感心しました。


10-5. 別に誰でもいいんだよ

椿宅にやってきたゆくえ、玄関先に埋められた指輪に立てられた「オクサマ」の印を見て、「指輪って土に帰るのかな…」と呟く。
家に入ると、今月末の引っ越しに向けて荷造りを始めている椿。既に集まっていた夜々と紅葉。
引っ越しに向けて、ここで四人でやりたいことを募集しますという椿だが、無言になる三人。
強いて言うならおしゃべりがしたいというゆくえ。同意する三人。
引っ越しまで、引き続きおしゃべりをしようという意見でまとまる。

学校にて、教室のドアの前で立ち止まりなかなか中に入れない希子。周りの生徒たちはその姿を見てひそひそと話している。
希子に気付いた朔也が希子のそばへ寄ろうとすると、引き返し廊下を歩いて行ってしまう希子。朔也は希子を追いかけ、話しかける。
-朔也「教室来てみたの?」
-希子「教室いくとみんなこっち見てくるし何か言ってくる。いる方が変みたいに見られる。普段いないから変って言ってるくせに。
-朔也「何言ってたかわかんないけど。」
-希子「でも何か言ってたでしょ。あれ、ネットニュースの見出しみたいな感じ。嘘をほんとっぽく言うのみんなうまいの。信じられる人はいいよね、傷つける側にまわれて。傷つかなくて済むから。…ついてこなくていいよ。」
-朔也「でも…」
-希子「間違い探しの答え見つけた時、違ってるところ見つけた時、人に言いたくなるじゃん。ここが違うとか、自分が一番に見つけたとか。それと同じ。他人の間違ってるとこみんな好きだから。学校退屈だから間違い探ししてみんなでそれを共有して。」
-朔也「なんでそれが望月じゃないといけないの?」
-希子「…別に誰でもいいんだよ。誰でもよくて、途中で誰かに変わったりするから。だから穂積は保健室来なくていいって言ってんの。」

そう言って、保健室に入っていく希子。何も言えず立ち尽くす朔也。

この朔也と希子の廊下長回しシーン、すごかった。

不登校の希子ちゃん。本来学校という空間では、登校して教室に行くことが当たり前であり正解のはずなのに、いないことが多い希子ちゃんは、そこにいるだけで、まるで不正解みたいに、周りから好奇の目を向けられてしまう。
何が当たり前で、何が普通で、何が正しくて、何が違和感で、そんなもの、いつのまにかころころと変わっていく。
その流れに乗っかって、その時々の"正解"側にいることが、自分が"間違い"にならないためのスマートな生き方だ。
そんな風に、学校という初めての社会の中にいる段階で、人はいつしか経験値として学んでしまうのでしょうか。
物語はあと1話で終わってしまうけれど、希子ちゃんと朔也に光が差すといいな。
希子ちゃんが学校に行けるようになりました!とはならないと思うので、どういう形で描かれるのか、見守りたいです。

そしてこの二人のシーン、二人が会話をしながら歩いて行く背景、廊下の壁には、「みんなの力」と中央に書かれた色とりどりの手形の寄せ集めや、「責任感を持ち 時には助け合い みんな仲良し 笑顔いっぱい」と大きく張り出された紙。
学校という社会が強要する正しさ、あるべき姿と、この二人の本質をついた現実的な会話が、皮肉っぽく対比されていて、痛烈なメッセージを感じます。


10-6. 疲れたね

出版社にて、スマホを見ながらため息をつく紅葉。
担当者が、前回の表紙絵の評判がいいと伝えるが、「本当に評判いいですか?」と疑う紅葉。
「心無いこと言われました?評判いいのは本当です。気にしない方がいいですよ。こういう仕事するならメンタル強くした方がいいです。誰かと比べるのも無駄です。それでいちいち落ち込んでたらキリないです。」と担当者に言われ、「はい」とだけ言う紅葉。次の仕事の打ち合わせを続ける。

紅葉と待ち合わせをしていた椿。紅葉の次の仕事が決まったことを知り、会って早々に「すごいね!」と声をかけるが、暗い表情の紅葉を見て、「うん。疲れたね。あったかいもの食べよう。」と声をかける。

学校を終えておのでら塾にて机に突っ伏している希子。「そっかそっか、疲れちゃったね。」とゆくえ。
-希子「みんなはみんなで辛いと思う。私のこと嫌ってないとみんなと仲良く出来ないから。それはそれで辛い子いると思う。」
-ゆくえ「そんなこと気にしなくても。」
-希子「気にするなって言われて気にしないで済むことなら最初から気にしてないよ。
-ゆくえ「そうだね。それはそうだ。ごめん。」
-希子「数が多い方が正解だもん、しょうがないよ。
-ゆくえ「それは違うよ。多い方が正解なんてことない。」
-希子「みんなでいなきゃいけないのと、一人でいなきゃいけないの、どっちの方がしんどいんだろ。」
-ゆくえ「しんどい時は自分のことだけ考えていいよ。自分のしんどさが一番でいいの。それは我儘じゃないから。なんかあったかいの飲もうか。」

紅葉、スマホで自分の作品に対するレビューをチェックしてたのでしょう。否定的な意見を目にしたであろう紅葉に対して、よかれと思って声をかける担当者ですが、それに対して、その人と話を続ける気も失せて「はい」とだけ言って終わらせた紅葉がリアルで印象に残りました。
紅葉が評判を気にしていたのって、別に励ましてほしいわけでも、確かめたかったわけでもなくて、否定的な意見もひとつの意見なのに、それを無視しろ、気にするなと言われる世界。
そういう価値観でイラストを、作品をつくっていける紅葉ではきっとないから、担当者がよかれと思って言った言葉にも引っかかってしまったんでしょうね。

紅葉の様子にすぐに気付いた椿さんと、希子の話を聞くゆくえ。
「疲れたね」と「あったかいもの」で繋がる描き方に、心がほぐれました。
しんどい時って、無理にポジティブに引っ張ってもらえるような言葉よりも、「疲れたね」「しんどいね」って、気持ちを肯定してもらえることで安堵できる時ってありますよね。
紅葉や希子ちゃんのそばに、そういう人がいてよかった。

希子ちゃん、学校のことを話す時の様子が、本当にお腹が痛そうな表情で。
どこかいつも冷めていて、自分の事も周りの事も一歩引いて俯瞰して分析している感じ。でもやっぱり、人だし、子どもだし、傷はちゃんとついてる。ちゃんと苦しい。そんな様子が伝わってくる本当に繊細なお芝居で、思わず希子を心配してしまいます。玉季ちゃん、さすがだな。


10-7. 価値観

椿宅に集まった四人。ゆくえが紅葉に、幼馴染が表紙絵を描いたことを塾長に自慢した、みんな褒めていた、と嬉しそうに声をかけるが、紅葉は浮かない表情。
-紅葉「ゴミ。表紙のイラストがゴミすぎる。世界観わかってない。呼んでないやつが雰囲気で描いたのバレバレ。マジで装丁ゴミすぎて残念。読む気失せるレベル。」
-ゆくえ「やめな。見なくていいよ。」
-紅葉「仕事の意見だから無視できないし。」
-ゆくえ「悪意がある意見なんか無視していいよ。」
-紅葉「悪意ないと思うよ。この人たちにとっては正論なんだから。正義なんだよ。
-ゆくえ「だったらなおさらだよ。悪意に自覚ない人の言葉なんかなおさら聞かなくていい。
-紅葉「ゴミかどうかって価値観なんでしょ?じゃあ否定できないでしょ。この人たちが自分の価値観でゴミって言ってんだから。嫌いって言ってんだから。ゆくえちゃんにはわかんないよ。勉強とかと違うし。マルかバツかっていうのじゃないし。」
-ゆくえ「そうだね。うん。だめだね否定しちゃ。ごめん。」

「ちょっと散歩」と席を立ち家を出て行くゆくえ。二人の様子を見ていた椿と夜々は心配そうな表情。ゆくえが出て行き、ぽつりと喋り始める紅葉。

-紅葉「気にすることじゃないってわかってるんですけど、気にしないとか無理で。」
-椿「うん。そうだよね。」
-紅葉「それに本当に悪意じゃないと思うから。本心だろうし、本当に価値観の違いでしかないと思うから、こういうの。
-椿「婚約指輪、ゴミになりました。その辺に埋めてあります。要らないから埋めました。左手の薬指に指輪してる人みると、あー指にゴミつけてるなって思います。」
-夜々「私は、担当したお客さんの会員カードがゴミ箱に捨ててある現場見たことあります。カード家に置いてきちゃったのすっごい後悔する人とかもいるのに、うん、ゴミになるかどうかなんて人それぞれ。」
-椿「うん。人それぞれ。指輪なんてただの金属。」
-夜々「会員カードなんてただの厚紙。」
-紅葉「待って。慰め方が下手すぎる。」
ありがとうと笑う紅葉。

-夜々「人の価値観否定するのは確かにダメだけど、でも受け入れなきゃいけないってことも…
-椿「ないよ。ない。そのまま受け入れるのは違う。
-夜々「なんかあったかいの飲も。一人になりたかったらあれだけど、嫌じゃなかったら喋ろ。」
頷いて、席に着く紅葉。
-夜々「話し合えば分かり合えるなんて嘘だし。」
-椿「違いは多様性とか言って受け入れなきゃいけないくせに、間違いはとことん排除しようとして。
-夜々「そう。その間違いだってその人の価値観でしかないんだから。」
-椿「そう。決めつけてるだけ。(大量購入した紅葉の装丁の本を指さして) 見て。あんなに好きな人もいるから。」
-夜々「あれはもう正義とか悪とかそんな感覚の話じゃないから。事実だから。
-紅葉「うん。ありがとう。」

この物語のテーマについて、改めてまとめたおさらいのような形で、台詞になって四人からちゃんと語られましたね。
この物語が言いたいことのひとつが、ここに凝縮されているようなシーンでした。

"違い"と"間違い"は、違う。
違いは事実で、間違いは価値観。
誰かにとっての悪意は、誰かにとっての正義。
人によって、時によって、条件によって、場面によって、変わるものだから、ひとつの答えが常にあって採点出来るようなものではない。
そして結局は人は、基本的には自分の視点で世界を捉えるものだから、それぞれに正解や間違いや違いや価値観があって当然。
そのそれぞれにある個性を、それぞれの価値観を、否定しあうことや競い合うことは無意味で。
あることをただ肯定して、でもそれはそれでよくて、すべて受け入れないといけないわけでも、合わせないといけないわけでもない。

こういうメッセージって、「はっきりしないな」「結局何が言いたいの?」と思ってしまう人も一定数いるとは思うのですが、あえて答えを明言せずに示すというか、現実の世界でなかなかそう簡単には割り切れたり分かり合えたりしない価値観を、そういうものだよねっていう提示で視聴者に委ねる描き方は、私は好きです。

あと、ゆくえちゃん。
ゆくえちゃんって、自分の考えとか結構しっかり持っているし、言える人には言う。
でも、違うな、間違っていたなって思ったら、「ごめん」とすぐ謝れるし、自分が間違っていたと言える。
別の言い方をすると、いつも空気を読んでしまうところがあったり、ころころ意見や考えが変わるという言い方も出来るのかもしれませんが、こういうキャラクターの描かれ方ってとてもリアルで、新しい主人公だなって思います。生方脚本の世界観ですね。


10-8. 結婚指輪とポイントカード

散歩から帰って来たゆくえ。紅葉に買ってきた精神安定パンを差し出す。
-ゆくえ「これ買った近くのコンビニの店員さん、左手の薬指に指輪してて、椿さんからしたらそれもゴミですけどねって思った。玄関先に埋められますよって。あ、思っただけね。言ってないよ。でも思った。あとね、隣のレジにいたおばさん、ポイントカード家に置いてきたとかでずっと怒ってんの。私こそこそしちゃった。これ買ったけどポイント付けなかったから。そのおばさんからしたらきっと許せない行為だろうね。あとね、歩きながら色々考えてて…他にも思いついたんだけどな…人それぞれだよってこと。」

大丈夫と笑う紅葉。おかしくてたまらず笑う椿と夜々。「あー時間無駄にした」と笑う夜々。よくわからないゆくえと、笑いが止まらない三人。

別日、塾の自分のデスクにココアが置いてあるのを見つけたゆくえ。「それ希子ちゃんが置いてった。冷めちゃったらごめんねだって。」と塾長。
この日、誕生日会のために早上がりしたゆくえ。家でこのみの帰宅を待ち、このみが帰宅した瞬間、クラッカーを鳴らし、「お誕生日おめでとう」と叫ぶ。HAPPY BIRTHDAYと書かれた帽子と、ケーキのモチーフのサングラスと、大きな蝶ネクタイを身に着けて笑うゆくえ。驚くこのみは「やめな。無理は良くない。」と静かに言う。「お姉ちゃんはお姉ちゃんのまんまでいいの。人は無理すると死ぬ。」とこのみ。「ありがとう」とゆくえ。
二人で寿司を食べてこのみの誕生日をお祝いする。
「ありがとう。超うれしい。全然うれしそうに見えないと思うけど。」とこのみ。「大丈夫。わかる。うれしい時の顔してる。」と笑うゆくえ。
小さい時にサンタに愛嬌をお願いしたけれどもらえなかったと話すこのみ。
妹をお願いしたら本当に妹をくれたと話すゆくえ。笑い合う二人。

夜々、仕事を終えて椿に電話をかける。ゆくえも紅葉も今日はいないが、自分一人でも家に行っていいかと椿に聞く夜々。

「人それぞれ」を色々な例えでなんとか伝えようとするゆくえ。
会員カードやゴミ袋の袋がここで回収されたのが嬉しかったです。
自分たちと結局同じことを言っているゆくえがおかしくて笑いだす椿と夜々が可愛らしいシーンでしたね。
たくさん喋って、たまにあれってなって、でもまた喋って、元に戻れる四人。
椿の引っ越しまで、あとわずかだから、紅葉も部屋にこもらずにダイニングテーブルの席についたし、ゆくえも戻って来た。
ほっこりする一方で、残り少ない、この場所で四人でおしゃべりする時間を大切にしている四人の姿に、少し寂しさも感じました。

このみちゃんの姉妹のシーン。
このみちゃんは、お母さん含めて周りの人から見れば、愛嬌のない、いつもむすっとした感じで、何を考えているか分からない女の子。
ゆくえは、ちゃんとこのみのことを理解していて、このみは、ちゃんと嬉しいとかありがとうとかって言える子。
この姉妹にもほっこりさせられるシーンでした。


10-9. そういうとこが好きです

両手いっぱいの買い物袋を抱えて、「ごはん作ります」と椿宅を一人で訪れた夜々。料理嫌いでしょ?と言う椿。
「嫌いは嫌いなんですけど、得意なんです。ちっちゃい時に母親から教え込まれたから実は得意で大体なんでも作れます。強制されて始めたから嫌いになっちゃっただけで。」と夜々。
高校時代、好きな男の子にお弁当を作ったが、「どうせ母親が作ったんだろ」などと周りから言われて以来、料理が得意と言うのも、人に作るのもやめたと言う夜々。「椿さん、もう好きな男の子じゃないんで作ってあげますね」と笑う夜々。

-夜々「紅葉くんに作るのはちょっとやだな~。あの人私には正直なんですよ。味薄いとか平気で言いそう。」
-紅葉「夜々ちゃんにはすごい本音言うね。」
-夜々「話し相手にちょうどいいって思われてるんです。」

「なんか手伝いたい、仕事ちょうだい」という椿に、いいです見ててくださいと言う夜々。じっと手元を見てくる椿に、やっぱり見ないでと笑う夜々。

料理を作り終え、一口食べた椿。「おいしい!」と笑う。
「おいしいですよね?!これ特技って言っていいですよね?!」と嬉しそうな夜々。
-夜々「あの…ちゃんと言ってなかったのが悪いんですけど、聞いていいですか?ばれてるからいいやって曖昧にしてたけど…私って、やっぱり可能性ないですか?」
-椿「…うん。ごめん。」
-夜々「ないか!ですよね!うん。ですよね。」

明るく努めながらも涙が出そうで必死にこらえる夜々。「すみません、ごめんなさい、大丈夫です、すみません」と笑いながら涙がこぼれてしまう。
何も言わず、ティッシュを差し出す椿。

-夜々「そういうとこが好きです。」
-椿「…え、どこ?」
-夜々「普段めちゃくちゃ喋るのに、こういう時余計なこと言わないでティッシュを持ってきてくれるとこです。」
-椿「…いつも余計なことばっか言ってるみたいだ…」
-夜々「(笑って) ありがとうございます。」
-椿「ううん。ありがとう。」

涙を拭ったティッシュをゴミ箱に投げる夜々。
「入ったら付き合ってくれます?」とふざけて言う夜々。「付き合わない」と即答する椿。わざと外す夜々。笑う二人。

好きだったり得意なことを、こんな感じで言わなくなってしまうことってありますよね。
周りの目を気にしたり、入り口が無理やりだったりで、伸びたかもしれない可能性の芽が摘まれてしまったり、自分の強みになるはずの個性が隠されてしまったり。
個性を尊重するとか、育てるとかっていうところにも、いろんな外的要因が妨げになってしまうことがある。
何気ないようなシーンでしたが、深いテーマでした。

あらためて想いを伝えた夜々ちゃん。そしてはっきりと答える椿さん。
ほんと、こういうところで変に逃げたりごまかしたりせずに、でもきっぱり伝える椿さんの、この突然な大人の男の魅力ってなんなんですかね (好きです)。
前回、「純恋さんの代わりに…」と遠回りな言い方で少し逃げてしまった夜々ちゃん。
今回は、この家が椿の家でなくなることもあり、思い切って勇気を出してちゃんと伝えてみたんですね。
恋愛の二人組にはなれなかった二人でした。


10-10. 好きなんだよね

このみの誕生日会をしているゆくえとこのみ。このみが寿司のネタだけを食べるのを見て注意するがマイペースなこのみ。
紅葉からゆくえ宛てに、このみへのお祝いメッセージが届く。
「紅葉くん呼べば?意外と二人で話す機会ってないんじゃない?」とこのみに言われ、そうだねと紅葉を呼んでみるゆくえ。

やってきた紅葉。「食べ残しでいいとは言ったけどさ…」と、このみが残したシャリだけになった寿司を眺めながら呟く。
このみはコンビニに行っており、ゆくえと紅葉の二人きり。
-紅葉「ごめん、この前のあれ。」
-ゆくえ「ゆくえちゃんみたいな堅い仕事してる人には俺みたいなクリエーターの気持ちはわかんないよ!ってやつ?」
-紅葉「なんか大げさになってる…」
-ゆくえ「でも実際そうだよ。それも人それぞれでしょ。経験ないことなんてわかんないし、わかった気になる方がよくない。よくなかった。ごめんね。」
-紅葉「ううん。ごめん。…ゆくえちゃんわかってるでしょ?わかってて、俺が傷つかないように、期待とかしないように、ちょうどいい距離感っていうか、そういうの考えてくれてるでしょ?」
-ゆくえ「なんのことですかー?」
-紅葉「なんで敬語なんですか(笑)」
-ゆくえ「…傷ついてない?」
-紅葉「うん。」
-ゆくえ「期待もしてない?」
-紅葉「うん。全然期待させてもらえなかった。」
-ゆくえ「それはそれでちょっとひどい?」
-紅葉「ううん。ありがたい。でも、そういう気遣いっていうか、好きでもない俺のためにさ、距離感考えてくれるようなとこが好きなんだよね。」
-ゆくえ「急にはっきり言うじゃん(笑)」
-紅葉「大丈夫。わかってるから。大丈夫。」
-ゆくえ「…うん。」
-紅葉「弟みたいな感じ?」
-ゆくえ「ん?兄弟は、このみという可愛い妹が一人いるだけです。」
-紅葉「そうですか。」
-ゆくえ「紅葉は、なんかまぁ、紅葉って枠でしかないよね。子供の時から一緒にいたから友達ともちょっと違うし、でも家族ってわけじゃなくて。だからまぁ、紅葉は紅葉だよね。」
-紅葉「ふーん。」
-ゆくえ「彼氏にはならないかなー(笑)」

仮に結婚したらこのみが妹だよと話すゆくえ。絶対無理、ごめんね、他の誰かと幸せになってね、と紅葉。笑い合う二人。

紅葉くんの恋も終わりました。

紅葉くんって、本当にゆくえのことが好きだったのかな。
いや、好きだったとは思うんだけど、紅葉ってその容姿からモテる系に分類されがちだけど、自己肯定感の低さゆえに同姓の友達に対しても劣等感を抱いていたし、女の子の恋することもほとんどなかったんだろうなと思うし、ゆくえちゃんへの好意は、恋愛感情だったとしてもそれだけではなくて、紅葉にととってゆくえは"みんな"じゃない人だったから、それもあっての好きだったんじゃないかなと、ちょっと思うわけです。

ここであえて言葉にしてみて好きだと打ち明けた紅葉ですが、ゆくえの気持ちや答えはとっくにわかっていたはずで。
別に付き合いたいとか、そういう希望を持ってした告白ではなかったように思うんですよね。
自分がはっきりと伝えないせいで、ゆくえの方が自分の気持ちを察して、気遣って、よい距離をキープしてくれたこと。
自分の好意を伝えたいというよりは、そんなゆくえに対する感謝をちゃんと言葉にして伝えたかったという感情だったような気がします。

紅葉にとっても、ゆくえちゃんはゆくえちゃんっていう枠だった。
ゆくえにとっても、紅葉は紅葉って枠だった。
ある意味両想いで、お互いにとって必要で大切な存在。
こちらも、恋愛の二人組にはなれなかったけれど、尊い二人組です。


10-11. 四人で住む

ゆくえの家からの帰り道、夜々からの電話に出る紅葉。
-紅葉「死にたいことあった?」
-夜々「失恋した。慰めて。深い意味はない。」
-紅葉「人のこと慰めてる余裕ない。」
-夜々「え、そちらも?」
-紅葉「うん。」
-夜々「あらら。慰めましょうか?」
-紅葉「傷の舐め合いになるよ。醜いよ。」
-夜々「かすり傷もちゃんと治しておかないと。」
-紅葉「それはそうだけど。」
-夜々「こういう時にね、紅葉くんで寂しさ埋めたろって気にならないから、紅葉くんはやっぱ友達だわ。」
-紅葉「(笑って) 大丈夫。同じこと思ってる。」
-夜々「(笑って) ある意味両想いだ。電話したらちょっと大丈夫になった。風呂入って寝る。」

翌日、残り物の夜々の手料理を四人で椿宅で食べる。
美味しいと驚くゆくえ。感想を求められて「おいしい」と言う紅葉。
食べながら、「四人でやりたいこと思いついちゃいました。ちょっと住みたいです。」と言うゆくえ。みんな泊まっていいよと言う椿。
-ゆくえ「泊まるんじゃなくて、ちょっと住みたい。」
-椿「ん、違うの?何度か泊まってるのとちょっと住むの。」
-ゆくえ「泊まるのは寝て起きるってことだけど…」
-紅葉「あ、わかる。住むのは行って帰ってくるってことでしょ。」
いいね、わかる、と盛り上がる四人。
「みんなでちょっと住みますか」と椿。笑い合う四人。

紅葉と夜々の電話、和みますね。
ちょっとかすり傷がついた時に、ちょっと聞いてほしくて電話を出来る友達。
そんな友達、10週前までは夜々にも紅葉にもいなかったのにね(号泣)
この二人こそ、男女の友情成立パターンの二人になるのかな。
普通のドラマだったら「くっついちゃえ」と思ってしまうような組み合わせなんですが、きっとこのドラマが好きで共感している視聴者は、この二人に対してそういう風には思わないんじゃないかな。
なんか別に、付き合えばいいのにとも思いもしなければ、永遠に恋愛感情にならない友達でいてねとも思わなくて。
紅葉は紅葉、夜々は夜々、お互いにとってその枠でいてね、と穏やかに思います。

そしてラスト、最終回に向けて、ちょっと一緒に住もうという展開。
ラスト一話でどんな風に物語が進み、終結するのか…
終わってしまうのが寂しいけれど、見届けたい。

普通に冷静に考えて人の家に住み着く大人四人ってちょっと異常かもしれないんですけど(笑)、なんかいいな~いいじゃん~と思わせる四人。
なんだかもう、最終回どうなるのかな、男女の友情って成立するのかな、とかっていう考察めいた気分にはもはやならなくて、ただこの四人のおしゃべりと空気をもう少し覗いていたいという心境です(笑)

美鳥ちゃんもそうだし、赤田や相良くんの回収のされ方も気になりますね。
あとはやっぱり、希子ちゃんと朔也くん。

はぁ。泣いても笑ってもあと1話。みんなで見届けましょう!!


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