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【silent】第3話 こまかすぎるあらすじ&感想

昨年2022年10月期に放送され、社会現象にもなったドラマ「silent」。
ドラマ大好きな私はもちろん当時も見ていましたし、何度も録画も見ましたし、シナリオブックも購入し、ついには円盤も購入してしまいました。
1年が経ち、Blu-rayでディレクターズカット版を観直しているのですが、本当に大好きな作品です。
当記事では「silent」第3話のあらすじ&感想を好きなだけ語っています(笑)


●「silent」概要

公式サイト

放送時期、キャスト、スタッフ

【放送時期】2022年10月期 フジテレビ 木曜22時
【キャスト】青羽紬役…川口春奈さん、佐倉想役…目黒蓮さん(SnowMan)、戸川湊斗役…鈴鹿央士さん、桃野奈々役…夏帆さん、佐倉律子役…篠原涼子さん 他
【脚本】生方美久さん
【プロデュース】村瀬健さん
【演出】風間太樹さん、高野舞さん

●「silent」第3話

3-1. すごく仲の良い友達と、すごく好きな人

高校時代、体育館の壇上で「言葉」というタイトルの作文を読み上げる想。
生徒たちの中に、想を真っすぐ見つめる紬と、紬を見つめる湊斗。

湊斗モノローグ「あんま興味なかったけど、青羽が好きっていうから見た映画。"人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまった"って、なんだそれって思ってたけど、そっか、これか。こういう感じか。」

帰り道、想の背中を見つけて駆け寄ろうとするが、想が駆け出した先には紬。紬と二人で帰っている姿を、立ち止まり見つめる湊斗。

湊斗モノローグ「すごく仲の良い友達と、すごく好きな人だったから、嬉しかった。すごく切なくて、ちょっとだけ嬉しかった。

大学生の湊斗、紬から「ふられた!」というLINEを受信。

湊斗モノローグ「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、嬉しかった。そんな自分のことも、この時の想のことも、許せなかった。なんとなく連絡をとるのも気が引けて、その後会ったのは、大学を出てから、高校の同窓会だった。」

同窓会で再会した湊斗と紬。二次会に行かずに先に帰る紬を心配そうに見つめる湊斗。

湊斗…(涙)
今回は湊斗回ですね。
「silent」は想と紬のラブストーリーが軸にはなっていくけれど、私は湊斗と紬のストーリーも大好きです。
湊斗がどこまでも紬を好きで、想を好きで、自分のことは少し嫌い。
湊斗はいつも優しくて、人の気持ちに敏感で、自分の気持ちには蓋をする。
そんな湊斗が私は大好きです。幸せになってくれ湊斗…(涙)

この3話冒頭の湊斗のモノローグ、「すごく仲の良い友達と、すごく好きな人だったから、嬉しかった。すごく切なくて、ちょっとだけ嬉しかった。」は、湊斗のとても素直な気持ちなんだと思います。
湊斗はもうずっと紬のことが好きで、紬と話した回数や一緒に過ごした時間は、きっと湊斗の方が多かったのに、出会った想と紬は、周りから見てもお似合いで。"あぁ、この二人、お似合いだな"って、シンプルに何の嫌味もなく思うやつですよね。
想と紬のキューピッドとして、協力してあげたい気持ちも、本音。
むしろ二人の邪魔をしようなんて思いはきっと湊斗にはなかったんだろうな。
二人が仲良くなるのは嬉しくて、でも、ずっとどこか切なくて。
そんな気持ちでずっと、二人のそばで高校時代を過ごした湊斗。
もう自分の気持ちに蓋をすることなんて息をするように自然なことになっていたんだろうな。
そしてずっと、想の近くで、想には適わないって思いながら過ごしていたんだよね、湊斗。
想は、湊斗にとっても紬にとっても、大好きで、憧れだったんだろうな。


3-2. 大丈夫だよ

同窓会後、一人ファミレスで仕事をする紬のもとに、二次会へ行くのをやめて現れた湊斗。「仕事楽しい?」と聞く湊斗に、「楽しくないよ、仕事だもん。お金もらってるんだもん。楽しくなくていいんだよ。」と返す紬。

-紬「…大丈夫だよ。」
-湊斗「いやなんも聞いてないよ。」
-紬「私やれば出来る子って言われてんの。上司にもわりとこう好かれてて、うまくやってんの。同期にも頼られててさ。これも本当は同期の女の子がやるはずだったんだけど、青羽さんになら任せられるってなって。まぁ明日までなら、無理すれば無理じゃない内容かなって、私も判断して引き受けて。ありがたいよね、期待されてるってさ。ちゃんと期待に応えなきゃって思う。社会人ってすごいよね。週5で会社行ってさ、家帰って仕事して、土日も働いてるんだもん。えらいよね。戸川君会社の女の人に挨拶で身体触ることとかある?ないよね。する人もいるらしくてさ。いてさ。挨拶なんだって。文化の違いかな。」
-湊斗「ごはんちゃんと食べてる?」
-紬「食べてるよ、当たり前じゃん。」
-湊斗「ちゃんと寝てる?」
-紬「寝てる寝てる。」
-湊斗「ねぇほんと大丈夫?」
-紬「大丈夫だよ。」

紬のパソコンを奪い、Wifiに接続してパソコンを返す湊斗。
「動画、検索して。犬と猫、スペース、仲良しって。可愛いの出てくるからそれ見てて。」と言って席を立つ湊斗。ドリンクバーを取って戻ると、動画を見てほほ笑む紬。

-湊斗「無理なことってあるんだよ。無理してやったことって、無理なことなんだよ。無理すると、ほんとに全部無理になっちゃうんだよ。やれば出来るって、やらせるための呪文だよ。期待と圧力は、違うよ。俺ね、人殴ったことないし、殴りたいと思ったこともないのね。でも、その青羽の職場にいる、青羽に挨拶するやつは、俺会ったら、たぶん殴っちゃうと思う。」

涙が溢れ出す紬。俯いて、「そっか。会わせないようにしなきゃね。」と紬。「青羽ももうそいつに会ってほしくない。」と湊斗。
溢れる涙を手で拭いながら、「ハンバーグでも食べよっかな。」とメニューを手に取る紬。

湊斗モノローグ
「結局紬は食べきれなくて、残りは俺が食べた。次の日、退職願出したよって電話をくれた。それから何度か、お互いの家を行き来するようになって、そういう感じになった。よく寝て、よく食べるようになった。時給や賄いだけでバイトを選んでいたので、紬は何が好き?何に関わる仕事をしたい?と聞いたら、(紬「…音楽?」) 誰かを思い出したみたいにそう言って、その2週間後に、今のバイト先で働き始めた。その誰かが、店に来たらどうしよう。そんなことばかり考えていた。来るわけないのに。その頃にはもう、その誰かは、想は…。」

このシーンもとても好きです。
ファミレスで仕事のことを一方的に語る紬、ずっと湊斗の顔を見ないんですよね。
紬と目が合わなくて、ふとガラスに映る紬を見た湊斗は、紬が泣きそうな顔で喋っているのに気付く。
目を合わせず、ばーっと喋って、大丈夫、食べてる、寝てるって紬が言う時は、大丈夫じゃない時。
この時の紬って、きっともう限界で、そんなことはずっと紬を見てきた湊斗には当然すぐわかって、湊斗らしい言葉を紡いで、紬にそっと渡す。それが、紬の張りつめていた心をそっとほぐしていく。
いつも、湊斗の声や言葉なら、強がる紬も静かに受け取れる
んですよね。
頑張り屋さんの紬が、「殴っちゃうと思う」と湊斗に言われて、ずっとこらえていた涙が止まらなくなってしまうシーン、川口春奈さんの唇を震わせて泣くお芝居がとてもリアルで胸を打ちました。
ずっと一人で黙って耐えてきて、きっと誰かに助けてほしかったし、逃げ出したかった紬を、湊斗が肯定してくれたんだよね。
この時、一緒に泣いた社会人、きっと多かったんじゃないかな。

高校時代も仲が良かった紬と湊斗だけれど、きっとこの時から、紬にとって湊斗は、強がらない自分でいられる場所で、そばにいるだけで癒されて支えられる存在になったんだろうなと思います。
想と別れたから、近くにいた湊斗と付き合ったんじゃない。
ちゃんと紬と湊斗には二人のストーリーがあって、お互い必要で、紬は湊斗が思う以上に湊斗に救われて生きてきた数年間だった

湊斗はそれでもずっと、頭のどこかに"想には適わない"という思いがこびりついていたから、ずっと不安で仕方なかったんだろうけど、紬は湊斗が思う以上に、湊斗のことをちゃんと好きだったんですよね。
そんな二人の関係がわかるシーンでした。

しかし湊斗、まだ社会人になって浅いだろうに、こんな風に考えられてこんな言葉をかけてあげられるって、なかなかできた人間ですよね。
意外と湊斗もストレス溜まってて、一人動物動画に癒されてるのかな。
湊斗はいつも自分に自信がないけど、すごく賢しくて、冷静で、優秀で、人のこともよく見ているし、職場でもきっと期待されていて、なかなかハイスペックですよね。きっと本人の気付いてない良いところがたくさんある。自己肯定感もっとあげていこうよ湊斗。


3-3. 再会

現在、紬と電話で話しながら線路沿いを歩く湊斗。踏切前に紬といる想を見つけて立ち止まる。先に帰ろうとする想。駆け寄り、「想!」と呼びかける湊斗だが、想は振り返らない。
日程を伝えず想と会っていたことを詫び、食事に行こうと湊斗の腕を取る紬。紬の腕を振り払い、ごめんと詫び去っていく湊斗。

湊斗と想がやっと再会しましたね。
ここでの湊斗は、紬と想が勝手に会っていたことに怒っているのではなく、耳が聞こえないと知ってから想を初めて見て、動揺したのだと思います。
今の想をすっと受け入れた紬に対して、湊斗はまだ、いろいろな思いを抱えている状態。想も気まずそうで、この後の二人の展開が今回の第3話の軸になります。


3-4. 想と湊斗

歩道橋、想を見つけてリュックのチャックをわざと開けて駆け寄る奈々。
驚く想、リュックに気付きチャックを閉めてあげる。
奈々といると、気を遣わなくていいから落ち着くと話す想。

帰宅した紬。「お腹減らないな」と言う紬を怪訝に思い「なんかあったの?」と心配する光。「湊斗がイライラしてる」と紬。「湊斗くんに喜怒哀楽の怒ってあるんだ」と光。
「いろいろあるみたいだけどさ、佐倉くん。でも湊斗くん的には、俺に何も言う事ないんかって思うんじゃない?知らないけど。」という光の言葉に、考える紬。

帰宅した湊斗。想に電話をかける。
奈々とカフェにいた想、湊斗からの着信に気付き、「嫌がらせだ」と奈々。
足りなかったフォークをもらうため店員の近くまでいき筆談で伝える想。
今も家族の前以外では声を出さないのかという奈々の質問に、頷く想。

紬や湊斗と再会をしても、想にとってはまだ二人とはぎこちないのに加え、自分は生きていく世界が違うと思っているのでしょう。
奈々と一緒にいる時の自然な笑顔が、聞こえる世界と聞こえない世界の差を表現しているように感じます。
でも想、カフェから出て紬と歩いている時の君、ほんと楽しそうで可愛かったよ。(小声)

光くんはほんとに察しがいいですよね。光は紬と湊斗くんに幸せになってほしいと願っているけれど、何よりも、お姉ちゃんに幸せでいてほしい
きっと、ごはんも食べれず寝れず仕事でぼろぼろになっていた頃の紬を光くんはそばで見ていたから、紬の些細な変化にも敏感なんですね。
こんな弟ほしいランキングNo.1、光。


3-5. 代わりとか思ってない

手話教室にて、春尾と紬。"約束"の場で習った手話は発表出来たが、全然話せなかったと落ち込む紬。
春尾に手話を始めたきっかけを訪ねる紬。大学のボランティアがきっかけだと話す春尾。就活のアピール用に始めたと自虐する春尾。
「知ってます?ろう者の8割くらいがろう者同士と結婚するんです。ろう者同士の方が幸せっていうことですかね。」と春尾。

仕事終わりの湊斗、オフィス前に光の姿を見つける。
「湊斗くん、ど?」と光。

-光「佐倉くん。」
-湊斗「あー、紬からなんか聞いたの?」
-光「代わりとか思ってない。好きな人いなくなったから、いる人好きになったんじゃない。絶対ない。身内が保証する。俺わかるからほんと。俺のへその緒姉ちゃんが切ってるから。だからそういうのわかるから。」

それだけ言い、「稼いで姉ちゃんに諸々返さなきゃだから」と言って去る光。「車、気を付けてね」と背中に声をかける湊斗。紬へ電話をかける。

この物語において、春尾は手話やろう者というものに対して、現実的でシビアな事も伝えてくれる役割ですよね。春尾の言葉にはよくハっとさせられますし、無意識にある自分の中の偏見とも思っていないような偏見や、偽善的な考えに気付かされます。

光はほんとに良い弟だな。湊斗の性格もよくわかっていて、想との再会を受けて湊斗が紬から離れていってしまうような気がして、繋ぎ止めに来たのでしょうか。光の言葉を聞いて、安心したように笑う湊斗でした。

3-6. 佐倉家

光からの電話を受ける想の妹・萌。「もしかしてお兄ちゃん紬ちゃんに会ってる?」と萌。「あのさ、どういうつもりなの?」と、想がどういうつもりなのか萌に聞く光。「姉ちゃんたちの邪魔しないでって言っといて」と言い放ち電話を切る光。

部屋に入ってきた律子。ノックに返事がなく、「聞こえなかった?」と不安そうに萌に聞く。返事が面倒だっただけと答える萌。
想の様子を見てきてほしい、自分が行くと嫌がるから、と交通費を渡す律子。
「お兄ちゃんお母さんが嫌なんじゃないよ。お母さんが自分の心配してることが嫌なの。知ってる?お兄ちゃん、最近紬ちゃんと会ってるらしいよ。手話勉強してくれてるんだって。なんて言うんだっけそういうの、けなげ?ありがたいんだけどさ、なんかちょっとイラっとするよね。気分いいのかな?今まで何があったかも知らないで、久しぶりに再会して、あなたのために一生懸命手話覚えますって。自分はその間、湊斗くんと仲良く楽しく呑気にヘラヘラ生きてきて…」と萌。
萌を制し、「行かなくていい。お兄ちゃんに余計なこと言いそうだから。」と部屋を出る律子。「お兄ちゃんの心配ばっかり」と萌。

光くんは、きっと想と紬が付き合って別れた時の紬のことも知っているから、また変にかき乱してお姉ちゃんを傷つけてほしくないんでしょうね。
湊斗のところに行って、萌にも連絡して、姉のために必死な光です。

萌ちゃんも萌ちゃんで、本当に察しがよい妹で。
ここでの萌の紬に対する台詞は少々トゲがありましたが、萌ちゃんだってお兄ちゃんが耳が聞こえなくなっていく様子、周りと疎遠になっていく様子をそばで見てきて、兄ばかり心配する母に傷つきながらもいろいろと自分なりに消化して過ごしてきたからこそ、素直な気持ちで腹が立ったのだと思います。

律子は、想の難聴が遺伝性という医者の言葉を聞いてから、萌や華のこともずっとどこかで心配で、ことあるごとに不安と闘ってきたのだと思います。
どうしても想のことを心配してしまって、でも想は距離を置いている。
いつも間に挟まれてきた萌ちゃん、本当は自分のことも心配してほしいんですよね。


3-7. 今好きなのは湊斗

タワレコでバイト中の紬。ゴミ出しのため外に出ると、店の前に偶然いた想。紬のバイト先だと知る。肩から落ちかけた紬のエプロンを直し、「仕事終わるの待ってていい?」と想。バイト後に会う約束をする二人。

カフェで紬を待つ想。店の外からガラス越しに手を振る紬に気付く想。手話で会話し、店内に入る紬。
「湊斗、大丈夫だった?付き合ってるんだよね?怒ってたでしょう?」と想。大丈夫、気にしないでという紬に、「湊斗に悪いから、もう二人で会うのはやめよ。良くないと思う。」と想。

-紬「私、湊斗のこと大好きなんだよね。二人で会うの、湊斗に悪いって思うのは分かるけど、でも、私達別にそんなことで喧嘩になったりしない。別れたりしない。それより、湊斗ともまた仲良くしてくれたらいいなって思ってた。私が言う事じゃないから無理に会わせようとしなかっただけで。佐倉くんとは、時々ごはんとか行って、手話で話せたらいいなって思ってたの。なんか、もっとどうでもいい、なんでもない話、したかっただけだよ。今はもう、佐倉くんのこと、高校の同級生としか思ってない。今好きなのは湊斗。佐倉くんは違う。好きじゃない。
-想「湊斗。湊斗って呼んでるんだね。」

何も言えない紬に、「わかった。気にしすぎだった。また連絡するね。」と言って店を出る想。俯き、涙を流す紬。

エプロンの肩ひも直す想くん、あざとすぎて好きです(笑)
私の肩ひも、直してほしくてずっと下がったままなんですけど早く来てくれませんか?(笑)

紬と湊斗の邪魔をしないようにと気を遣う想。でも本当は、こうやって紬と会い続けることで、想の中にある紬への思いが膨らんでいってしまうからという想いもきっとありますよね。
湊斗のことを好きだと言い、自分の事をもう好きじゃないと言う紬の話を聞く想の表情が、想の中にある想いを物語っていました。
想が一方的に振ったんだけどね!!!!!!!!!!!
一方的に振って、8年経って再会して、俺の存在が二人を邪魔しているんじゃないかと心配するなんて、すごくいじわるな言い方をすると、そんなに自分に自信あるんかい想、という感じでもありますが(笑)
でも、背景には想と湊斗の親友としての絆もあって。湊斗の気持ちが分かる想だから、素直な気持ちで心配なんだろうな。
きっとやっぱり、自分は生きる世界が違うという気持ちがあるから、再び道が交わってしまったせいで、誰かを傷つけたくないんだろうな

紬が話した事はきっと本心。これからも想と前みたいに友達として付き合っていきたいし、湊斗と想にも、以前のように戻ってほしいから、あんな別れ方をした自分と想の間に変なわだかまりが残ってしまわないように、あえてはっきりと言葉にしたのでしょう。
8年経って、やっと言えた、佐倉くんへのサヨナラですね。
でも、どこか自分に言い聞かせているようなところもあって。話せば話すほど、自分から想との間にきっぱり線を引こうとするほど、何か自分の中にある気持ちが顔を出しそうな気配を感じているような様子。

今好きなのは湊斗。でも、佐倉くんのことを想くんって一度しか呼べなかったこと、想には紬と一度も呼んでもらえなかったこと、その時の切なさはその時のままずっと残っていて、なんとも言えない気持ちになってしまったのかな。
初めてちゃんとサヨナラを、もう好きじゃないと伝えて、自分で線を引いて、サヨナラを実感してしまったのかな。
自分との気まずさを理由に、また想が自分の前から突然いなくなってしまうんじゃないか、そんな不安もあったんじゃないかな。

やっと会えたけど、また前みたいにどうでもいい話をして笑って一緒にいたいけど、8年の時と、その間に変わってしまったことが、そうはさせない。そんな現実のもどかしさを感じたシーンでした。
8年って大きいですもんね。ほんと、大きいよ。


3-8. 聞こえない

居酒屋で偶然春尾と会った湊斗。青羽がお世話になっていますと伝える。
「青羽さんの弟さんですか?」と春尾。湊斗の様子を見て慌てて「あ、彼氏だ、彼氏だと思いました…」と取り繕う。
湊斗が以前言っていた「昔の友達」=紬が手話で話したい相手≠今の彼氏の湊斗、という構図を察する春尾。

-湊斗「会ったんです、俺も、その友達、久しぶりに。背中に名前呼んで。昔みたいに名前呼んだんです。でも振り返ってくれなくて。聞こえないから当たり前なんですけど、でもなんか、どっかでちょっと、もしかしたらって。なんかの間違いとかあって。よくないってわかってたけど電話とかしちゃって。もちろん出なかったんですけど。」

「聞こえないなら振り返らないですよ。当たり前じゃないですか。」とほほ笑む春尾。

-春尾「家族とか、恋人とかって、未来を見据えて一緒にいるじゃないですか。でも友達って、今を一緒にいる人っていうか、瞬間を共有して楽しむ相手だから。だから、急に未来が変わっちゃうと、受け入れきれないんですよ、きっと。」

湊斗の想に対する素直な気持ちが表現されたシーンでした。
当たり前のように想のことを受け入れて、手話を覚えて、まっすぐ向き合っていく紬。湊斗はまだ受け入れられなくて、どうしても以前の想のイメージがこびりついて離れない。
想との関係が対照的に描かれますが、湊斗の気持ちや行動って、決して非難されるべきものではなくて、きっとすごく自然。
大好きで、大切だった親友が、8年前に一方的に姿を消して、やっと現れたと思ったら、声が届かない。
信じたくないし、そんな想をすっと受け止めてあげられない自分のことも嫌だし、なんで親友の俺に相談ひとつしてくれなかったんだっていう想いもあるでしょうし。
紬もひとつ前のシーンで言っていたように、もしいつか再会したら、どうでもいい話、したかっただけなんだよね。
想って呼んで、笑い合って、どうでもいい話して、サッカーして。湊斗だって、突然想を失って、傷ついてきたもんね。


3-9. 昔のようには戻れない

想の自宅、訪ねて来た萌。
「萌、何しに来たの?」と声を出して話しかける想。お母さんに言われて様子を見に来たと、途中まで声で話、伝わっていないことに気付いて途中から手話で話す萌。「声で話しかけるとさ、聞こえてる気がしちゃうんだよね。手話するの忘れちゃう。」と萌。
湊斗や紬との再会について聞く萌だが、昔のようには戻れないと答える想。

-萌「もうあれでしょ、昔の事じゃん。普通にどっちとも仲良く友達に戻ればいいじゃん。別にお兄ちゃんがいいならいいんだけどね。萌関係ないし。心配させたんだから、病気隠してたこと、謝ったら?」

相変わらずナイスアシストな萌ちゃん。でも頑なな想。
家族の前では最低限の声は出して話す想。でもきっと声を出す度に、聞こえないことを思い知るようなところもあるんだろうな。


3-10. テントウ虫

紬の自宅にて、紬と湊斗。中断してしまった新居探しを再開しようと言う紬に、「いつでもいいよ」と返す湊斗。

買い物に出かけた紬。スーパーの前で光と偶然合流した紬。そこへ、想から「家の近くにいる」とLINEが届く。
紬の家で一人待っていた湊斗。部屋に紛れ込んできたテントウ虫を逃そうとベランダに出る。逃す前に写真を撮ろうとしたが、飛んで行ってしまったテントウ虫。その先にいた、近くまで来ていた想と目が合う。「ちょっと待って」と慌てて家を出て想の元へ駆け寄る湊斗。
湊斗のもとへ、紬から電話がかかってくる。心配して動揺している紬に、「大丈夫だから、落ち着いて。じゃぁ待ってるね。急がないでね、転ぶから。ゆっくりでいいから。」と湊斗。想を紬の自宅に招き入れる。
慌てて家に戻る紬と光。

何気ないようで、それぞれの性格がよく表れているシーンでした。

湊斗はもう、紬と想の未来を想像してしまっているから、紬と自分の新居探しは進める気がなさそうですね。物悲しい表情の湊斗が切ないです。
ここでぐいぐい新居探しを進めてしまって、紬の心が想に向かないように引っ張っていってしまうことだって出来たはず。
でもそんな風に振舞える湊斗じゃないし、紬の心がもう想にあるなら、自分が縛り付けたくないんだろうな。二人の邪魔者になりたくないって、湊斗も思っているんでしょうね。

前回気まずく分かれてしまった想と湊斗の再会に慌てる紬。
慌てる紬の声を聞いて、逆に落ち着くことが出来た湊斗。
湊斗はいつも紬の前では優しくて穏やかで余裕そうだけれど、本当は自分にだって余裕なんかない。でも、紬のためならいつだってそうなれるんだよね。
しかし家の近くまで来ているから話したいという想。ちょっとホラー(笑)
想は想で結構ぐいぐい来ますよね。湊斗と話したいんだろうけど、湊斗に連絡すればいいのに!

そして、部屋に迷い込んできたテントウ虫ですが、テントウ虫って、幸せを運ぶと言われています
紬は良く窓を開けっ放しにしていて、虫が入ってくるからやめろと光に怒られていました。きっと今回も、紬が開けっ放しにした窓からテントウ虫が入ってきたのかな。

紬が閉ざさずにいた窓から、飛び込んできたテントウ虫。
そのテントウ虫を、そっと優しく逃そうとする湊斗。
湊斗の元から飛んで行ってしまったテントウ虫。その先に、想。
まるで、湊斗の元から想のもとへ行ってしまう紬のようでもあり、湊斗が自ら紬を手放すことの暗示でもあり。
なんだこの神演出。


3-11. 無視すんなよ

紬の家に、想と湊斗の二人。気まずい空気。
冷蔵庫の扉を開け、想に背を向けたまま「想、ビール飲む?」と話しかける湊斗。ソファに座る想には聞こえないから、返事はない。
想にビールを渡し、自分はダイニングテーブルに座る。想は湊斗に背を向けている。想の背中に話しかける湊斗。

-湊斗「想の方が誕生日早いから、俺の二十歳の誕生日に一緒に飲みに行こうって。それまでお酒飲まないでいるからって言ってたくせに。もう26なんだけど。想?想、無視すんなよ。」

繰り返し想の名前を呼び、泣き出す湊斗。湊斗の様子に気付いた想。

-湊斗「それのせいで別れたの?それ隠したくて、心配かけたくなくて消えたの?想らしいよね。隠すとか、別れるとか、そういう風に決めちゃう感じ。紬に迷惑かけたくないとか、分かるけど、分かるけどさ、なんで俺に言ってくれなかったの?なんか力に…なれないけど、なれないのわかってるけど、でも、言ってくれないからさ…」

抱えていた思いをぶつけるように話す湊斗。涙が溢れて喋れなくなる。
帰宅しその光景に驚く紬と光。
泣きながら部屋を出ていく湊斗。湊斗を追いかける紬。

高校時代の回想シーン。帰り道、見つけた想の背中に、「想」と呼びかける湊斗。聞こえているのにわざと無視して早歩きする想。
「ちょっと!無視すんなよ!想!」と呼ぶ湊斗の声に、いたずらっぽい笑顔でやっと振り向く想。笑顔で想のもとに駆け寄る湊斗。二人、笑い合い、楽しそうに歩いていく。

みーーーなーーーーーとーーーーーーーーーーーーー(号泣)

ここの回想シーンの挿入の仕方、神でしたよね。
湊斗が「想!」って呼んで、にたーって想が振り向いて、笑い合う二人。
想と湊斗の笑顔がもう本当にキラキラしていて眩しくていつまでも見ていたい。いつまでも見ていられる。そして好きになる。
想くんも好き。湊斗も好き。ありがとう。(は?)

高校時代、こんな風にいつも「想!」って呼んで、想くん振り向いて、湊斗笑ってたんでしょ?
想と湊斗の呼んで振り向き笑い合うシーンだけの特集、スピンオフか何かでやっていただけませんかお願いします。
私も想くんのことて呼んでみたいし、湊斗に名前呼ばれて振り返りたい。
いやでもあんな笑顔で振り向かれたり名前呼ばれたりしたら耐えられないな、無理です。だからやっぱり振り向かないでほしいし呼ばないでほしい。(なんの話?)
このシーンみんな好きですよね。もう本当に好き。(わかったよ)
私の心の青春の1ページにこのシーンを刻みます。(勝手にどうぞ)

そんな高校時代のシーンと、現在のシーンとの対比。悲しすぎる。
鈴鹿央士くんの涙のお芝居が素晴らしすぎる…。
湊斗って、基本的にずっと一定のテンションで、優しく穏やかだったから。
こうやって感情が爆発するシーンがとても効果的で、湊斗の抱えていた気持ちの苦しさが画面いっぱいに伝わってきます。

突然いなくなって、知らない間に聞こえなくなっていて、一人で全部抱えていた想。
湊斗は、紬のこととかいろいろ、ほんといろいろ、ぐちゃぐちゃした想いはあったけど、ただシンプルに、友達だから
湊斗にとって想は大好きで大切な友達で、想にとって自分もきっとそうだって思ってた。想ってたのに、なんで何も言ってくれなかったんだよ。
言わなかった想の気持ちもわかるけど、言ってほしかったんだよね。
本当は、一番は、前みたいに笑い合いたかったけどね。湊斗よ(涙)

ただならぬ空気に出くわした紬。紬が追いかけたのが湊斗で良かった。
部屋に取り残された想と光、気まずすきる…(笑)


3-12. 振り返ってほしかっただけ

現在、湊斗に追いついた紬。何か話したの?と心配し、想と会っていたことを詫びる紬。

-湊斗「そんなこと怒ってない。そんなの別に全然気にしてない。気にしてるけど、すごい気にしてるけど、でも大したことない。気にしてるってほどじゃない。」
-紬「なんかあったの?」
-湊斗「なんかあるよ。色々ある。簡単に受け入れらんないこと、いっぱい。すんなり受け入れて、手話まで覚えて、普通に顔見て話して、すごいよね。すごいよ。紬、想の方がいいんじゃないかって。取られるんじゃないかって。」
-紬「ないよ、大丈夫だよ。」
-湊斗「そう思って、そういうこと気にして、イライラしてる方が、楽だったから。想の事悪く思えば、楽だったから。友達の病気受け入れるより、ずっと楽だったから。名前呼んで、振り返ってほしかっただけなのに。

泣いて蹲る湊斗。泣いて立ち尽くす紬。

みーーーなーーーーーとーーーーーーーーーーーーー(号泣)

鈴鹿央士くんのここのお芝居、表情、台詞の言いまわし、誰が一番湊斗をうまく演じられるでしょう大会をしたら圧倒的大優勝です。(は?)
うわーって吐き出すようにたたみかけるように喋って、でも途中の間合いとか、声色とか、泣き方とか、苦しすぎて、苦しすぎて、湊斗すぎて。(は?)

想だって想なりに、周りでは想像もつかないくらいの苦しみや悲しみを抱えて、乗り越えて、やってきたんだろうし、自分から湊斗や紬との繋がりを断ったことだって、簡単に決めたことじゃないはず。
でも、その後の想は、8年という時間をかけて、今に至っていて。
想は、自分の意志で、8年前までの自分と思い出を閉じ込めて、蓋をした。

一方、湊斗からしたらこの8年は、不可抗力に時が止まったままで。
湊斗の中での想は、8年前で止まってる。
時には醜い気持ちが顔を出しながらも、ずっと想のことはどこか頭の中にあって、きっともしまた会えたら、おいなんだよ想、どこにいたんだよって、お酒でも飲みながら昔みたいに話したかっただろうな。
止まった時が突然動き出して、でも大きすぎる変化があって。そんな簡単に受け入れられないよね。

8年間という時間を、ひとりで必死に生きてきた想。
何年経とうが、いつも今目の前にいる想をまっすぐ見る紬。
からっぽだった8年という時間を、急には取り戻せない湊斗。
みんな間違ってなくて、みんなどうしようもなくて、みんな苦しいね。

ここで終わるんですよね第3話。もう放送されていた当時は、この気持ちで第4話の放送まで待つ時間、気が気じゃなかったですよ…。
どうか湊斗がまた、想くんと笑い合えますように。
さて、もう1度名前呼んで振り向くベストオブ青春の1ページ、見ます。


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