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【春になったら】第11話(最終回):細かすぎるあらすじ&感想

春になったら
第11話 2024/3/25(月) 22:00~

今期のドラマの中で今のところ1番泣いているドラマ、「春になったら」。
いよいよ最終回、第11話のレポートです。

※ネタバレがありますので気になる方はご注意ください。

目次


●「春になったら」第11話

11-1. 結婚式当日

2023年3月9日の回想。川沿いの歩道でまだ蕾の桜の木を見上げている瞳のもとへ、仕事帰りの雅彦が自転車でやってくる。いつもの道を一緒に帰る二人。

現在。2024年3月25日。朝6時に目を覚ました瞳、まだ眠る雅彦の様子をそっと確認しながら、ついに迎えた挙式当日、嬉しそうに朝食の支度をする。
起きてきた雅彦。体調は大丈夫そう。「瞳、いよいよ今日だね。おめでとう。」と雅彦。
二人で朝食をとっているとマキがやってくる。
夜通し会場の準備をしていたマキは寝不足で目が充血しており、雅彦にそれを指摘されると、慌てて昨日は嬉しくてなかなか寝付けなかったと嘘をつく。

自宅にやってきた阿波野、雅彦を診察しながら会話をする。
阿波野「ここまでよく頑張ってこられましたね、椎名さん。もし何かあっても私がずっとついてますから。」
雅彦「本当に今までありがとうございました。」
阿波野「まだそんなことおっしゃらないでくださいよ。」

隣の部屋、扉の向こうでばたばたと何やら準備している様子のマキと瞳。
瞳だけ顔も見せず行ってきますと出かけてしまい、雅彦はマキに手伝ってもらいながら用意した袴に着替える。
マキのもとへ黒沢から「こちらは準備OKです」と電話が入り、マキと阿波野が雅彦を家から連れ出す。
佳乃の仏壇に手を合わせて、雅彦は玄関へと向かう。

ついに迎えた結婚式当日。
雅彦はもうだいぶ弱ってしまってはいますが、なんとか体調ももち、明るくこの日を迎えられて本当によかったです。

川沿いの桜の道。
瞳と雅彦が、きっと幼い頃から何度も何度も一緒に歩いた道。
たくさんの思い出が詰まったこの街で、今日、ついに瞳は結婚式を迎えます。


11-2. 挙式

阿波野とマキに支えられながら、なんとか家を出た雅彦。
玄関の扉を開くと、目の前にはウエディングドレス姿の瞳が立っていた。
瞳の晴れ姿を見て、「瞳…」とだけ呟き、目を潤ませる雅彦。
瞳に支えられて目を向けた先、いつもの鳥居の下の階段から自宅前までレッドカーペットが敷かれ、ベージュのタキシードに身を包んだ一馬が立っていた。
そこには、黒沢、森野、美奈子、圭吾、龍之介、杉村院長、斉藤の姿も。
雅彦にサプライズで、この場所を挙式会場として準備していたのだった。

圭吾の司会進行で、一歩一歩、並んで歩みを進める雅彦と瞳。
雅彦「おい…やられたよ、俺に内緒で。」
瞳「子どもの頃からお父さんと歩いた道だから。」
雅彦「そっか…。ちっちゃい時はさ、手繋いでたよ。」
瞳「そうだね。私は家から自転車でお父さんが仕事場行くのを見てたな。」

一馬の前までやってきた2人。微笑み合う一馬と瞳。
「ありがとうございます。お父さん。」と一馬が言うと、雅彦は照れ臭そうに一礼する。
一馬と瞳が歩いて行く後ろ姿を、目を潤ませ、静かに、ただ嬉しそうに見つめる雅彦。
階段を昇り切った一馬と瞳は、ゲストの方を向いて振り返る。

一馬「私たち二人は、本日皆さまの前で結婚の誓いを立てたいと思います。」
瞳「私たちがこの日を迎えられたのも、ここにいらっしゃる皆様のおかげです。この感謝の気持ちをいつまでも忘れません。」
一馬「私たちは、もし喧嘩をしても、次の日には必ず僕が謝って仲直りをします。」
瞳「私たちは…私は、父が母のことをずっと愛し続けているように、一馬さんを愛し続けます。」
一馬「僕も、瞳さんを一生愛し続けます。この誓いを心に刻み、これからは夫婦として力を合わせ、新しい家庭を築いていくことをここに誓います。まだまだ未熟な二人ではあります…龍之介も合わせて三人ではありますが、これからもどうぞ、あたたかい目で見守っていただけたら幸いです。2024年3月25日、夫、川上一馬。」
瞳「妻、瞳。」

雅彦や大切な人達に見守られ、誓いを交わす一馬と瞳。
おでこへの誓いのキスには、照れくさそうにに目を背ける雅彦。
あたたかい拍手に包まれる一馬と瞳。

瞳ちゃん、おめでとう(涙)

瞳のドレス姿を見た時の雅彦の表情が、本当に素晴らしかったです。
美しく、幸せそうな、娘の晴れ姿。
真っ直ぐに見つめて、目が潤んで、言葉が出てこなくて。
いつもお喋りな雅彦が、挙式では終始、ただ静かに瞳と一馬を見守って、目を潤ませながら、微笑んで。
いつもお喋りで声の大きい雅彦が、ここ最近は病状が悪化し言葉数も少なく声も小さくなってきていましたが、今日この日は、仮にもしも病気がなかったとしても、こんな風にきっと言葉に詰まって、静かに嬉しそうに見守っていたのではないでしょうか。
大切に育ててきた瞳の門出。
きっと心の中で佳乃にも話しかけながら、その姿を見守っていたのでしょう。

青空のもと、赤い鳥居と、真っ白なウェディングドレス。
とても美しく、あたたかい映像でした。

玄関から鳥居までの道や、川沿いの桜の道。
何度も何度もこの作品の中で映し出されてきた、雅彦と瞳の日常。
人生で一度の特別な日を、いつものこの道で。
今や視聴者にとっても、"いつもの"道であるこの場所での挙式には、本当に胸があたたかくなりました。


11-3. 椎名瞳写真展

黒沢の誘導で、次の会場へと川沿いを歩いて向かうみんな。
向かった先は近くの公民館。驚く雅彦と瞳を残し、ゲストは先に会場に入っていく。
雅彦の車椅子を瞳が押して、2人、中に入っていくと、そこには皆が徹夜で用意してくれたという"椎名瞳写真展"が。
瞳が撮影した写真が飾られており、雅彦は驚きながら、2人でゆっくりと写真を見ながら進んでいく。
元旦に着物で撮った写真、伊豆旅行の写真、一馬と龍之介と行った遊園地、神くんとの再会、瞳の退院祝い、キャンプ。

瞳「この時お父さんなんて言ったか覚えてますか? "瞳の花嫁姿を見る"。」
雅彦「見れた。」
瞳「見れたじゃん。」
雅彦「瞳じゃないみたい。」
瞳「瞳だよ。」
雅彦「綺麗。」
瞳「ありがとう。」

写真はだんだんと、雅彦の姿を映したものばかりに変わっていく。
雅彦「最高だよ。ありがとう。ねえ、なんで俺の写真ばっかり?」
瞳「ん?だって、お父さんも今日の主役だからね。」
そう言う瞳に連れられた先には、「旅立ちの式 椎名雅彦 川上一馬 椎名瞳」と書かれたボードが。
その横には、一馬と瞳の2ショットと、瞳と雅彦の2ショット写真。

サプライズがさらに続きます。
写真を見ながら、2人でゆっくり話しをしながら時間を過ごす雅彦と瞳。
きっと朝から言いたくて、でも恥ずかしくて、小さな声で雅彦が瞳に言った「綺麗」。
元旦のあの日からの思い出を、ひとつひとつ振り返るこの父娘の穏やかな時間、とても美しかったです。

雅彦と瞳、2人の思い出でありながら、もはや私達視聴者にとっての思い出にもなっていて。
3ヶ月という時間軸をリアルに描いてきたからこそ、この感動は感慨深いものです。

3ヶ月。
3ヶ月あれば、色々なことを話せて、色々なことを出来て、色々なことを叶えられるんですよね。
油断しているとただただ過ぎていってしまう時間。
その尊さは、終わりが迫って初めてこんな風に尊く感じられるもので、日常の中ではついその大切さを、愛おしさを、忘れがちになってしまいます
雅彦と瞳が過ごしてきた時間を振り返りながら、あらためて、大切にしなければと思わされますね。


11-4. 旅立ちの式

「旅立ちの式」の会場に入ると、そこには先ほどまでのゲストに加え、ヨッシーコーポレーションの社長と加賀屋、そして雅彦が葬式に呼びたいとリストに挙げていた面々の姿が。マキと瞳が雅彦に内緒で連絡をして集まってもらっていた。
驚きながらもとても嬉しそうな雅彦。
瞳「お父さん、ようこそ、旅立ちの式へ。私たちの結婚式とお父さんのお別れ会を一緒にやりたかったの。お父さんもみんなにありがとうって伝えたかったんでしょ?」
雅彦「そっかあ。カズマルと瞳の新しい人生の旅立ち、そして俺はあの世へ逝っちゃう旅立ち。それで、旅立ちの式。」

会場はマキの花で飾りつけられ、明るい雰囲気で進行していく式。
一馬「皆様、この旅立ちの式にご出席いただき本当にありがとうございます。それに我々のわがままを叶えて下さった黒沢さん森野さん、本当にありがとうございました。」
瞳「この式で、私と一馬さんから皆様へ、そして父から皆様へ、感謝の気持ちが伝えられれば、こんなに嬉しいことはありません。」
雅彦「えー、びっくりしてます。会いたかった皆さんに会えて本当に嬉しいです。今日はとにかく明るくぱーっといきたいと思いますんで、お願いします。グラッツェ!」

「お父さんのための式にしたい」と話していた瞳。
雅彦の人生にとって大切な人たちに囲まれて、驚きながらも嬉しそうな様子の雅彦。
「お父さんもみんなにありがとうって伝えたかったんでしょ」の瞳の言葉からは、雅彦の一人の人間としての人生に対するリスペクトが感じられました。

葬儀に呼ぶ人リストの方々へ電話をしたり、この式の準備をしたり。
その過程は、瞳にとっては、父親の人生の終わりを実感させる悲しいことでもあったはずです。
それでも、お父さんは病気で死んだ人ではなく、自分の人生を生き抜いた人だと証明するかのように、素敵な式を準備した瞳。
「もう大丈夫」と前回の最後のシーンで瞳は雅彦に言っていましたが、瞳はもう、すべてを受け入れて、お父さんと最後まで一緒に生きると、覚悟を決めていますね。

笑顔に溢れる、旅立ちの式。
大切な人ばかりの、旅立ちの式。
瞳らしく、雅彦らしい、そんな素敵な式です。

11-5. ケイトの歌

「それではここでスペシャルゲストを紹介いたします。今日この日のためにアメリカから緊急来日してくださいました、ケイト・ベネットさんです。」
圭吾の進行でステージの幕が上がると、そこにはケイトの姿が。
驚き思わず立ち上がる雅彦、雅彦のもとに駆け寄るマキ。
マキ「お葬式で呼ぶ人リストの中に、ケイトって書いてあったでしょう。雅彦が今は天国にいる佳乃さんと一緒に浅草にデートに行ったときに、ケイトさんが路上で歌ってる歌に聞き惚れちゃったんだよね。それで雅彦が、自分のお葬式に流してほしい曲を作ってほしくって、英語一生懸命勉強してお願いしたんだよね。」
雅彦「うん…。まさか今日来てくれるなんて…よし…。Will you sing here for me?」
ケイト「yeah, of course」
雅彦「Thank you! I'm very happy! Thank you very much, Kate!」

歌い始めたケイト。その歌声に涙を流す雅彦と、マキ。
ケーキカットし、それぞれの余興に笑い、一馬は龍之介と一緒にネタを披露。瞳と雅彦がそれぞれ投げたブーケを受け取ったのは、阿波野と美奈子。
みんなでグラッツェポーズで集合写真も撮影し、たくさんの笑顔で溢れた会場。

友人たちに囲まれて笑う瞳の姿を、少し離れた場所から見守り微笑む雅彦。
仲間たちに囲まれて楽しそうな雅彦の姿を眺めて微笑む瞳。

式の最後、雅彦からの挨拶。隣では瞳が見守る。
雅彦「本日は、このような会を開いていただき、誠に…誠にありがとうございます。ええ私、私は、少し早く、旅立つかもしれませんが、最高の、最高の人生でした。幸せな人生でした。これからは、瞳、そしてカズマル、龍之介、新しい人生に旅立ちます。この3人を、何かあれば見守ってあげてください。本日は、ありがとうございました。」

笑顔と、拍手と、少しの涙に包まれた会場。
何度も頭を下げる雅彦。雅彦と一馬の真ん中で笑う瞳。

ケイト、登場しました!!
自分の最後の場で、佳乃との思い出の歌手の歌を流したい。
ロマンチックですよね。
ケイトさんの歌が、この物語を、そして雅彦の生き方を象徴していて、明るく力強い歌声に、涙が止まりませんでした。
歌詞は下記です。
---
Nothing is forever in this world
But don't be sad
The spring is just around the corner
And everything will be all right
Put a smile on your face
Even when you don't feel like it
The spring is just around the corner
Enjoy every little piece of it
I know I'm happy
I know I'm happy
I know I'm happy
And everything will be all right
I know I'm happy
I know I'm happy
I know I'm happy
And everything will be all right
The spring is just around the corner
celebrate
I know I'm happy
I know I'm happy
I know I'm happy
And everything will be all right
I know I'm happy
I know I'm happy
I know I'm happy
And everything will be all right
I know I'm happy
I know I'm happy
I know I'm happy
And everything will be all right
---

会場はずっと笑顔で溢れていて、時々流れる涙は、喜びや感動の涙で。
雅彦らしい、瞳らしい、とても素敵な式でした。
黒沢くんが涙を流していたのも素敵でしたね。
黒沢くんと森野さん、本当に本当にお疲れさまでした(笑)

雅彦と瞳が、少し離れた場所からお互いの様子を見守る演出もとても良かったです。
一緒に生きてきた親子だけれど、それぞれの人生があって、それぞれのコミュニティがある。
今までの時間の中で、お互いそのすべてを知っているわけではなくて。
病気がわかってからの3ヶ月も、たった3ヶ月なんかじゃとても足りなくて、まだまだ話したりないことも、聞けていないことも、知らないことも、きっとたくさんあって。
それでも、それが親子で、それが家族で。
お互いがお互いの生き方を、人生を、尊重して、それぞれの道の上で、前を向いて、笑顔で歩いて行く。
瞳は、瞳の新しい人生を、ここから始めて行く。
雅彦は、雅彦の誇らしい人生を、ちゃんと締めくくる。
誰にでも最期は訪れるし、新しい始まりを何度も繰り返していく。
生も死も、始まりも終わりも、日常。日常なんですよね。
死ではなく、生を描いた物語。
春になったらは、そんな作品でしたね。

11-6. おめでとう ありがとう

無事に式を終え、雅彦の車椅子を瞳が押しながら、いつもの道を二人で歩き、家に帰っていく。
途中、満開の桜の木の下で立ち止まる二人。

瞳「お父さん満開だね。」
雅彦「すごいね。」
瞳「綺麗。」
雅彦「綺麗。今日はいい日だ。やりたいことリスト、全部叶ったし。」
瞳「うん。こうやって一緒に桜も見れたしね。」
雅彦「俺は嬉しいよ。瞳の幸せそうな姿、見れました。」
瞳「うん。ありがとう。」
雅彦「あーそうだ。瞳、誕生日、おめでとう。」
瞳「ああ、うん。ありがとう、お父さん。」

微笑み合い、桜の木を見上げる二人。
雅彦の瞳に映る、青空と、満開の桜。

とても美しく、穏やかなシーンでした。
リストに書いたすべてを叶えた二人。
病室で一緒に見ようと約束した桜も、一緒に見ることが出来ました。

お誕生日おめでとう。
瞳に「おめでとう」と言えるのも、雅彦に「おめでとう」と言ってもらえるのも、きっとこれが最後。
いろんな思いが込み上げて、目が潤む雅彦と瞳ですが、それぞれの表情は、とても幸せそうで、清々しくて。
そして、2人で帰っていったのでしょう。
いつもの道を歩いて、いつもの家へ、2人で。

春が、きましたね。
やってくるのが怖かった春。
届かないかもしれなかった春。
待ち遠しかった春。
約束の春。
今年の春は、とても悲しくて、美しくて、幸せで、あたたかい、美しい、春。

もっとしたかったこと、生きたかった日、そんなものはたくさんたくさんあって。
それでも、どんな力ずくでも跳ね飛ばせない現実があって。
それを前に、たくさん泣いて、怖くて、辛くて、苦しくて、それでもこんな風に、心から幸せだと、最高だと言える時間が確かにあったこと。
そのことがきっと、これからの瞳を支えていくはずです。
そうやってきっと、瞳はこれからも、雅彦と生きていくはずです。

11-7. 瞳が産まれた日

花屋で仕事中のマキの携帯が鳴る。瞳からの電話。

瞳の家、とても静か。
喪服姿の瞳は、自分と雅彦のやりたいことリストを書いた紙を畳んで、掘り起こしたタイムカプセルの缶に大切にしまい、雅彦のベッドがあった場所に置かれた祭壇にそっと置く。
雅彦の遺影を眺めて微笑む瞳に、マキが雅彦から預かった人生ノートと、「瞳が産まれた日」と雅彦の字で書かれたDVDを渡す。
マキ「これ、雅彦からの遺言。それからこれ。瞳がお母さんになった時に見てほしい。佳乃ちゃんと約束したんだって。」

マキも帰った後、一人で雅彦の人生ノートを開く瞳。
ぱらぱらとページをめくると、瞳へのメッセージの欄には、「全部伝えた!!」と大きく書かれていた。
その文字と雅彦の遺影を眺めて、微笑む瞳。

マキから預かったDVDを再生すると、助産院で今まさに瞳を出産しようとする佳乃の姿が映っている。その横で大声で応援する雅彦の姿も。
瞳が産声をあげ、泣いて喜ぶ佳乃と雅彦。可愛い赤ちゃんだな、俺たちの赤ちゃんだなと叫ぶ雅彦。号泣しながら瞳を愛おしそうに見つめる二人。
その映像を見て、涙を流しながら笑う瞳。
瞳「もう…私全然映ってないじゃん。」
生まれた自分の姿が一切映っていない映像に、笑って、泣いて、涙が止まらない瞳。

雅彦は、旅立ちの式からほどなくして、その生涯に幕を閉じました。
瞳からの電話、雅彦のいない静かな家。
それらを描くことを通じて、雅彦がもういないことが表現されます。
とても寂しく、心にぽっかりと穴が開いたような気分になりますが、「遺影はみんなが笑っちゃうような写真がいい」と言っていた雅彦、自宅で撮影した、スーツでポーズを決める雅彦らしい姿の遺影に、思わずふっと笑顔になってしまいます。
悲しすぎず、重すぎず、そっと静かに、雅彦の死が描かれました。

やっぱり、最後にちゃんと一緒に時間を過ごして、限られた中でもやれることをちゃんとやりきったと思えることは、残される者にとっても救いになりますね。
雅彦がいなくなり、がらんとした部屋の中でひとりの瞳の姿はとても切なくもありつつ、とても穏やかで。
人生ノートを眺めながら優しく微笑む瞳でした。

そしてDVD。
この作品の第1話冒頭で流れた出産シーンの映像です。
この映像で始まり、この映像で終わった物語。
ここから、3人の椎名家の家族が始まったんですよね。
雅彦と佳乃が出会って、瞳が生まれて、佳乃が亡くなり、雅彦が亡くなる。
瞳は愛されて生まれて、全部ここから始まった
瞳と一緒に私も号泣してしまいましたが、それは、お父さんもお母さんもいなくなってしまった悲しみの涙ではなく、命の始まり、人生の始まり、家族の始まりへの愛おしさから溢れたものだったと思います。
こんな風に映像や写真で残しておくのって、大切ですね。


11-8. 3人の日常

少し経った、ある日の朝。自宅の1階から大声で一馬と龍之介を何度も呼んで起こす瞳。眠そうに下りてくる一馬と龍之介は、仏壇の佳乃と雅彦に手を合わせ、洗面台に向かい、3人で朝食をとる。

朝食中、報告があると切り出した一馬と龍之介。
龍之介は「3年生のうちにやりたいことリスト」を作ったという。
リストには、「べん強をがんばる」「友だちを10人ふやす」「うんどう会のときょう走で一番になる」「家のおてつだいをする」「好きな女の子にこくはくする」と書かれている。
最後の項目に驚く一馬と瞳だが、「当たって砕けろ、ダメでもドンマイドンマイ」と笑う龍之介。
続いて一馬はニヤニヤしながら自分の報告を始める。

お父さんの声がしなくなったこの家に、今度は瞳の声が響いて、瞳と一馬と龍之介、3人でのあたらしい日常がスタートしました。
1話で、元旦の日の朝に雅彦が大声で瞳を起こしていました。
まるでその雅彦の姿が瞳に乗り移ったかのようなシーンには、思わず笑いました。

大声の瞳も、やりたいことリストを作った龍之介も、雅彦から受け取ったものがたくさん溢れていて。
人が誰かの中に残るって、きっとこういうことですよね。

やりたいことリスト。
時間は有限ですから、こんな風に短期的にも長期的にもちゃんと目標を決めて、叶えていけたら、人生はきっともっと豊かに彩られて、悔いが少なくなるのでしょう。
雅彦に教えてもらったものが、たくさんあります。


11-9. それぞれの日常

大声で「行ってきます」と叫ぶ瞳、いつもの道を歩き、いつも通り鳥居に頭を下げて、出勤する。

マキの花屋を訪れた阿波野。
阿波野「明日は四十九日ですね。」
マキ「よく覚えていてくださって。」
阿波野「忘れられませんよ、椎名さんのことは。」
マキ「ありがとうございます。」

もんじゃを食べに向かい歩く圭吾と美奈子。
どこか心ここにあらずの様子の美奈子に気付き、声をかける圭吾。
美奈子「あのさ…私…岸くんのことが…好き。好き。学生の頃からずっと。」
圭吾「え?」
美奈子「知らなかったでしょ?全然気付いてなかったでしょう。」
圭吾「え、俺?」
美奈子「そうだよ。」
圭吾「え、本当に俺?」
美奈子「だからそうだって言ってんじゃん。何回も言わせないでよ。」
圭吾「…嬉しい。」
美奈子「…うん。」
到着した店では先に瞳が来ており、3人で乾杯するも、いつもと様子の違う圭吾に「何かあった?」と声をかける瞳。ごまかそうとする圭吾と、何事もなかったかのように振舞う美奈子。

その後、慌てて帰宅した瞳。ソワソワした様子の一馬と、落ち着いた龍之介。流していたテレビから、「カズマルくんです!」の声が。「SNSで大人気!!東大中退芸人カズマルくん」として、一馬がテレビ出演してネタを披露している。
その姿を見て大喜びの瞳と龍之介、ほっとした様子で嬉しそうな一馬。
瞳は雅彦の遺影を画面に向けて、雅彦にも一馬の姿を見せる。

エンドロール。冒頭で流れた2023年3月9日の回想シーンの続き。
川沿いの道を二人で歩く雅彦と瞳。
他愛のない話をしながら家まで並んで歩いて行く、2人のある日の日常。「ただいま!」と開ける玄関。瞳の笑い声と、雅彦の大声が響く。

雅彦が亡くなった後も、それぞれが、それぞれの日常を生きていきます。
その中で一歩踏み出した美奈子。
圭吾に想いを打ち明けた美奈子の表情はとてもすっきりしていて、慌てふためく圭吾と美奈子のギャップが面白かったですね。
「嬉しい」と美奈子の想いをまず受け止めた圭吾。
これからこの二人がどうなっていくのか、楽しみです。

そして、カズマルくん!
朝からそわそわしていた報告は、このことだったのですね。
SNSバズりをきっかけに、テレビ出演も果たしたカズマル。
これからますます忙しくなっていくと嬉しいです。
雅彦もきっとダメ出しをしながら喜んでいることでしょう。

最後は少し時を戻して、雅彦と瞳の日常が描かれました。
この終わり方、とても素敵でしたね。
雅彦と歩いた道や暮らした家に、もう彼の声は聞こえないけれど、今も変わらず瞳の笑い声が響いて、瞳の日常が続いている。
お父さんと生きたこの街で生きていく瞳の中にはいつも雅彦がいて、思い出したり懐かしんだりしながら、瞳の日々は続いていく。
この物語のテーマでもある、日常の愛おしさが感じられる、素敵なラストシーンでした。


全11話。ついに終わってしまいました!!!!!!
涙で目がしょぼしょぼしていますが、晴れやかな気持ちで見届けることが出来ました。
春がやってきて、桜が咲いて、日常を生きることの出来るありがたみを胸に、大切な人やものを大切にして過ごしていきたいと思わされる作品でした。
すべての登場人物が愛おしい、そんな作品でした。
観てよかった!とても心に残る物語でした。


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