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【silent】第6話 こまかすぎるあらすじ&感想

昨年2022年10月期に放送され、社会現象にもなったドラマ「silent」。
ドラマ大好きな私はもちろん当時も見ていましたし、何度も録画も見ましたし、シナリオブックも購入し、ついには円盤も購入してしまいました。
1年が経ち、Blu-rayでディレクターズカット版を観直しているのですが、本当に大好きな作品です。
当記事では「silent」第6話のあらすじ&感想を好きなだけ語っています(笑)


●「silent」概要

公式サイト

放送時期、キャスト、スタッフ

【放送時期】2022年10月期 フジテレビ 木曜22時
【キャスト】青羽紬役…川口春奈さん、佐倉想役…目黒蓮さん(SnowMan)、戸川湊斗役…鈴鹿央士さん、桃野奈々役…夏帆さん、佐倉律子役…篠原涼子さん 他
【脚本】生方美久さん
【プロデュース】村瀬健さん
【演出】風間太樹さん、高野舞さん

●「silent」第6話

6-1. 想の孤独

サッカー部を辞めた想、大学の教室にて友人から声をかけらえる。想が聞こえていないと思い、耳元で大声で話しかけられて驚く想。慌てて補聴器を外す。フットサルをやらないかと誘われるが、断る。「まぁいっか、ノリ悪そうだし」と言いながら去っていく友人。

想、自転車での帰り道、警官に「イヤフォンだめだから。音楽聞くのやめて。」と注意される。「補聴器です。すみません。」と謝る想。イヤフォンと勘違いをした警官はそれを詫び、「でもなおさら耳悪いなら気を付けて」と一言。悲し気な表情を浮かべて、自転車を降り、押しながら歩いていく想。

ろう者・難聴者対象就活支援セミナー会場を訪れた想。エレベーターに駆け込んできた女性(奈々)が手話で話しかけてくる。セミナー後、友人で手話と話す奈々の様子を見ていた想。目が合った奈々が想の元へ。
「なんでもないです」と筆談で伝える想。奈々は座り、「話したいって顔してた」と筆談を続ける。想は奈々が差し出した音声変換アプリで、奈々は筆談で、少しずつ会話を始める。

-想「大学生ですか?授業ってどうしてますか?」
-奈々「パソコンテイク」
-想「そうですよね。(奈々に君は?と指を指され) 何も補助なしで受けてます。 (奈々に聞こえるの?と聞かれ) 聞くこえないことも多いけど、聞こえるフリしてごまかしてきました。でももうごまかせなくなってきてて。」
-奈々「友達にノートテイクお願いすれば?」
-想「友達、いないから。耳の病気がわかって、それまでの友達はみんな一方的に縁を切って。すみません、すみません暗い話して。すみません。」

気まずくなり帰ろうとする想を、奈々は引き止め、「聞くよ」と筆談で伝える。その文字を見て、また話し始める想。

-想「補聴器を使い始めたら、授業中にイヤフォン付けるなって注意されました。同級生に突然耳元で大声で話しかけられました。別に悪いことしてないのに何度もすみませんすみませんって謝って、謝るのくせになって、本当に自分が悪いような…そういう気持ちになります。大学スポーツ推薦だったから、親には大丈夫って言い聞かせて意地で上京してきたんです。でも結局、部活続けられなくなりました。声が聞こえないことが増えて、全然そんなつもりじゃないのに、あいつは指示を聞かないって、あいつはチームプレーが出来ないって。そういうのは聞こえちゃって。大学には残れたけど、友達もいない、授業も理解出来ない。親に大学辞めたいなんて言えない。辞めてもこの先どうしていいかわからない。そういうの相談出来るところに相談してみても、ちょっと悲しい顔して何度も相槌打って、なんかの制度とか保障とかを紹介してくれるだけでした。違うのに。ただ、誰かに聞いてほしかった。静かに話だけ聞いてほしかったんです。ただ不安だってことを、言葉に出来ないのが苦しかっただけで。

話ながら泣きそうになり、俯く想。

-奈々「声出さないから大丈夫 / 静かに話し聞いてあげられる / 私は生まれつき耳が聞こえない / でも、幸せ / 音がなくなることは悲しいことかもしれないけど、音のない世界は悲しい世界じゃない / 私は生まれてからずっと悲しいわけじゃない / 悲しいこともあったけど嬉しいこともいっぱいある / それは、聴者もろう者も同じ / あなたも同じ

時折優しい表情で想を見ながら、言葉をかけ続ける奈々。奈々の文字を読みながら、涙がこぼれる想。

「同じ」を手話で表現する奈々。その意味に気付き、初めて手話で「同じ」をしてみる想。安心したように少し微笑む。

想モノローグ「本当に、ただ静かに話を聞いてくれた。静かに生きていけることを教えてくれた。」

大学に進学した想。難聴が進行し、どんどん孤独になっていく想が淡々と描かれました。
周りの人間には、悪意はなくて。むしろ、聴者からしたら、耳が聞こえないくい想への配慮だった言葉や行動が、少しずつ少しずつ、想を傷つけ、殻に閉じ込めていく。
ひとつひとつ、変わっていく自分を思い知り、暗闇の中に包まれていくような想の表情がとても切ないシーンでした。
高校時代の想と比べると、話し方も抑揚がなく、表情も暗く、聞こえなくなっていく想の変化が見てとれます。
もともと高校時代も、「言葉」というタイトルで自身の考えを深く述べた作文を書いたり、一人で音楽を聴いていたり、想くんは、サッカー部で学校中のモテ男的なキラキラした側面もありつつ、少しクールで、影というか、一人の世界観を感じるような部分もありました。
耳が聞こえにくくなって以降は、影の印象です。その対比が物語にも緩急をつけますが、丁寧で繊細なお芝居で現在の想を演じている目黒くん、あらためて作品を見返すと、視線や手の動きなど、お芝居の細かさに気付かされ、感心しました。

そんなところに現れた奈々。真っ暗闇で孤立化しようとしていた想に、やわらかいひだまりのような光を差してくれた存在でした。
ぽつりぽつりと話し始める想が、少しずつ解放されて、"同じ"という言葉に安心する様子。難聴と診断されてから、こんな気持ちになれたのはきっと初めてだったのでしょう。話せる相手、話を聞いてくれる人がいることの安心感を強く感じるシーンでした。
筆談で紡がれる言葉は、伝えたいことがシンプルに大切に記されるようで、声での会話よりも、ぐっと心に沁みるものがあります。
奈々との出会いをきっかけに、手話を覚える気にもなったであろう想。
初めて想に光が差した、美しくあたたかいシーンでした。


6-2. 音声通話

想と奈々、学生時代の回想シーン。カフェにいたところ、奈々のろう学校時代の友人・美央がやってくる。想は美央がやってくることを知らなかった。
-美央「(手話で)安心して。これから他のろう者の友達も来るから。想くん友達いないって奈々が心配してるよ。」

思わず席を立ち帰る想。追いかける奈々。追いつき、手話で会話する二人。
-奈々「どうしたの?」
-想「人が来るって聞いてない」
-奈々「ごめん。友達つくったほうがいいと思ったから。」
-想「ろう者の友達?」
-奈々「手話も覚えられるし。嫌なの?なんで?」
-想「俺まだ聞こえるし。」
-奈々「一緒にするなってこと?…そうだよね。勝手にごめんね。」
店に戻る奈々。

想モノローグ「同じだって言ってくれて、あんなに安心したのに。都合よく自分は違うと線を引いた。聞こえる自分が忘れられなかった。聞こえる人とも、聞こえない人とも、距離をとった。近づくのが怖かった。でも、近づいてしまった今は、もう離れたくないと思ってしまう。」

現在、二人でお好み焼き屋にいる想と紬。紬に聞かれ「お好み焼き」の手話を教える想。お好み焼きをほおばり美味しいという紬を見てほほ笑む想。
想のスマホに、奈々からの電話が着信。奈々は、想に映画を見ようと送ったLINEに返信がまだなく、トーク画面をしばらく見つめて、"音声通話"のボタンをタップした。慌てる想。紬に、何かあったのかもしれないから代わりに出てほしいと頼む。想の代わりに電話に出る紬。電話が繋がって驚き戸惑う奈々。奈々は無言で電話を切る。
直後、「ごめん!ビデオ電話押そうと思って間違った!笑」と奈々から想へLINE。安心した様子で「なんだ。びっくりした。」と返信を済ませる想。奈々のことを、高校卒業してから出来た唯一の友達だと紬に伝える想。「ほんとに友達?」と呟く紬。慌てて「なんでもない」と笑ってごまかす。

奈々、「電話、想くんが出たの?」と送ったLINEに、「一緒にいた人が出てくれた」という想からの返事。音声通話をかけた履歴をトーク画面から削除する奈々。

これまでの奈々のシーンで、奈々の表情から、奈々が想のことを好きだという気持ちが伺えました。奈々は、最近想が再会した紬の存在が気になっている様子です。

一方想は、奈々に対しては恋愛感情はなさそうです。紬と再会し、前回第5話の最後のカフェで会うシーンの後、何度か二人で食事をするようになったのでしょうか。楽しそうにお好み焼きを食べる様子がほほえましかったです。
紬は、奈々の存在が気になる様子。
これまでは、紬・想・湊斗の三角関係が描かれていましたが、これから紬・想・奈々の関係が描かれていきます。


6-3. ありがとね湊斗くん

タワレコでのバイト中、店長に彼氏のことを聞かれ、「別れたんです。主成分優しさにフラれました。」と、湊斗と別れたことを伝える紬。

紬と暮らす家に残された湊斗の荷物を持って、湊斗の家を訪れた光。
「青羽元気?」と湊斗に聞かれ、「俺?見ての通り元気。」といじわるに返す光。「紬、元気?」と湊斗は聞き直す。「元気。よく寝て、よく食べてる。」と返す光。

-光「ありがとね、湊斗くん。」
-湊斗「(笑いながら) 別れてくれて?」
-光「姉ちゃん、あの頃ほんと死んでて。3年くらい前?俺のせいなんだけどね。とにかく働かなきゃってなってて、周りも自分も視界に入ってなくて。その、こんなしかない狭い視界に、湊斗くんがチラって。ありがとね湊斗くん。視界に入り込んでくれて。」
-湊斗「ほんと、入り込んだだけで、なんもしてないけど。」
-光「なんもしなくていいんだよ。そのへんに適当に視界に入る場所にいてくれればいいんだよ、好きな人は。全部湊斗くんのおかげだから。この3年あっての姉ちゃんだから。」

先日のフットサルの集合写真を見ながら、想が写真を嫌がって無理やり撮ったからあんまりバラまかないでねと言う湊斗。静かに焦る光。

想の実家にて、息子をつれてきた華と萌の会話。光から送られてきた想と湊斗たちとのフットサルの集合写真を見せる萌。写真を嬉しそうに眺める二人。

紬と別れた後も、湊斗と光は二人で会えるくらい仲がよくて微笑ましいです。兄弟みたいですね。
姉ちゃんとの3年間にあらためて感謝を伝える光。
3年前、紬が働きながらボロボロになり、湊斗とファミレスで会話をした頃ですね。光が上京してきたタイミングでもあり、家族のために紬は必死に働いていたんですね。
そんな紬のひだまりになった湊斗。ただいてくれただけで救いだったということを、この3年間は想がいない間の繋ぎなんかではなく、幸せじゃなかった時間なんかでもなく、紬にとって必要で大切な時間だったこと。光くんがちゃんと言葉にして湊斗に伝えたこのシーンもとても好きなシーンでした。

このシーンに限らずですが、1対1の関係に対して、第三者からの言葉がかけられることで、救われたり、気付いたりすることってありますよね。
この作品は、登場人物はすごく限られてていて、家族・友人・恋人くらいしか出てきませんが、人に日常って結構そんなもの。そういう身近な存在の人たちと会話を重ねて関係を築いていくことで、救われたり、気付かされることがある。その愛おしさが感じられます。


6-4. 好きな人

奈々。ある日の帰り道、信号待ちをしていると向こう側に想の姿を見つける。スマホを取り出し、明日食事に行かないかと、想の背中に向けてLINEを送る奈々。着信に気付きスマホをポケットから取り出した想の元へ、紬が「お待たせ」と現れる。楽しそうに歩き出す二人。背を向ける奈々。

奈々、職場の同僚二人と三人でランチをしながら会話。いつも一緒にいるのは彼氏かと聞かれ、友達と答える奈々。立て続けに同僚が色々と質問をするが、音声変換アプリで会話が拾えず追い付けない奈々。

二人で焼肉屋にやってきた想と湊斗。「今日想のおごりね。俺に感謝してるでしょ。焼肉なんて安いもんでしょ。」と湊斗。少し気まずそうに頷く想。
-想「(スマホで) 元気そうだね」
-湊斗「元気だよ。振った側なんでね。」
笑い合う二人。

奈々の事を本当に友達かと尋ねる湊斗。頷く想だが、疑う湊斗。「二人で会う唯一の友達だから」と言う想に、「えー俺は?」とふざける湊斗。
-湊斗「その人にさ、青羽のこと聞かれた?どんな人なの?って。なんて答えたの?」
-想「(スマホで) まっすぐ / まっすぐ見てくる感じ。性格も」
-湊斗「あぁ。うん。わかるわかる。その人は?どんな人なの?」
-想「(スマホで) 生まれつき耳が聞こえない。大学のとき知り合って、手話を教えてもらった」
-湊斗「へぇ。どんな人って聞かれた時、好きな人のことだと、その人の好きなところ言っちゃうんだって。嫌いな人のことだと、嫌いなところ。どちらでもない知り合いとかだと、普通に関係性とかプロフィールとか説明しちゃうんだって。今みたいに。ま、全部に当てはまるとは思わないけどね。わかんないけどね。」
-想「(スマホで) 湊斗ちょっと性格悪くなったね」
-湊斗「モテたいからね」

奈々の切なさが際立っていきますね…。
今まではきっと想にとっての友達は自分一人だったし、想が自ら交友関係を広げていこうとしていなかったから、想と奈々は二人の世界にいる感じだったんだろうな。
想が奈々のことを恋愛感情で好きと思っていないことを、奈々は気付いていたけれど、二人でいられたから、それでよかったのだと思います。
そこで、最近想の交友関係がまた広がっていき、奈々が知らない聞こえる世界での人間関係が再構築されていく。奈々が知らない思い出のある人たちと想の世界。奈々にとっては、また想と自分の間に線が引かれていくような思いですよね。奈々…。
奈々はいつも想の前だと明るくて朗らかですが、聴者と一緒に働きながら、ろう者として気を遣ったり気まずくなる思いも日常的にやっぱりしているんだなということも、ちょっとしたシーンから描かれました。

湊斗と想の焼肉のシーン。こうやって気まずくならないように一緒にごはんを食べたり関係を続けていく湊斗、どこまでも主成分優しさかよ(涙)
好きな人のことだと好きなところを言うって、良いですね。
しかも紬の好きなところ、「まっすぐ」。高校の時から今も変わらないね。


6-5. 好きな言葉をくれる人

手話教室にて、春尾と紬。湊斗と居酒屋で出会った経緯などを話す春尾。

-春尾「普通に飲み友達っていうか、一人でよく飲みに行くお店が一緒で。で、二人飲むことが多いっていう。楽しかったそうですよ。この3年、すごく楽しかったそうです、湊斗くん。
-紬「そっか。実は私もこの3年すごい楽しくて。

湊斗から想の話を聞いていた春尾。想の事を「どんな人ですか?」と聞く春尾。「好きな言葉をくれますね」と答える紬。

来ました、また第三者の言葉。
「たとえ別れてもそれまでに楽しいことがたくさんあればいい」と言った湊斗のこ台詞が回収されました。
二人で電話したり、光がフォローしたりして、湊斗も今は、この3年紬がちゃんと自分を好きでいてくれたこと、幸せだったということを、心から受け入れることが出来たのかなと思います。
でも別れを選んだ二人。今はお互い納得して消化しようとしているようですが、なんかこういう風に、どちらかが悪いわけでも嫌いになったわけでも傷つけ合ったわけでもないのに、別れしか選べない二人って切ないですね。

そして紬。想との関係性でなく、想の好きなところを自然に答えましたね。
紬は前は想の声が好きと言っていました。声が聞こえなくなった今、「好きな言葉をくれる」という表現に変わった。声が聞こえない少しの寂しさと、変わらず好きな言葉をくれる存在であることの尊さを感じます。


6-6.  CD

想の実家にて、想の部屋のカーテンを閉める律子。空っぽのCDラックを見つめる。リビングに降りてきて、夫の隆司に声をかける。

-律子「ねぇお父さん、想の部屋から段ボール運んどいてくれない?」
-隆司「段ボールって?」
-律子「うんCD。明日不燃ゴミだから。」
-隆司「ん?捨てといてって言われたの?」
-律子「言われてないけど、ほとんど割れてるみたいだし、ベッドの下に隠すみたいにあったやつだから。」
-隆司「想に確認してからの方がいいんじゃない?」
-律子「…CDどうするのってわざわざ聞くの?次帰って来た時に目つく方が嫌だろうし。」
-萌「じゃぁ萌がもらう。萌の部屋運ぶね。」
-律子「萌…お兄ちゃん聞くやつ興味ないでしょ。」
-萌「聞くためにとっといたんじゃないでしょお兄ちゃんだって。」

想の部屋から段ボールを自分の部屋に運ぶ萌。残りの段ボールを「これで全部かな」と持ってきた隆司。手伝ってお母さんに怒られないか気にする萌。「バレたら怒られる」と笑い合う二人。
段ボールの中には、もともとCDラックに入っていた、たくさんの割れたCD。そと段ボールを閉じ、萌の頭を撫でる隆司。泣きだす萌。

お父さん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(号泣)
律子は、想に対してはあまり口うるさくは言えないけれど、いつも想のことを心配していて、想が傷つかないようにと心配ばかりして、それを一緒に暮らす夫や萌はずっと見てきた。
律子の心配は過剰なようにも映りますが、息子を思う母親としては当然とも思えます。
想がどんな思いであんなに好きだったCDや音楽を遠ざけたか。どんな思い出サッカーを辞め友人と縁を切り、どんな思いで一人でいるか。
遠ざけたものは想を傷つけるものであり、同時に律子も傷つくものだから、目に入らないようにしたかった気持ちもわかります。
一度遠ざけた湊斗や紬との繋がりが再会した今も、また想が傷つくんじゃないかと、律子は心配なんですよね。

萌は、聞こえなくなった想を受け止めているけど、やっぱり聞こえていた頃のお兄ちゃんは忘れられなくて。なによりも、耳が聞こえなくなったことで、前のような明るさやキラキラした感じがなくなり、ふさぎ込むように変わってしまったお兄ちゃんの事が心配なんでしょう。だから萌は、また湊斗たちと再会して、笑うようになったお兄ちゃん、楽しそうになったお兄ちゃんを見て、嬉しかった。それがお兄ちゃんにとって良いことなら嬉しい。それなのに、お母さんはまた遠ざけようとする。
CDだって、お兄ちゃんがどんな思いで段ボールにしまいこんだのか。そして、どんな思いで捨てられずにいるのか。お母さんだってそのことはわかっているはずなのに、捨ててしまおうとする。咄嗟に守ってあげた萌ちゃんですが、その涙に、母に対する思いと兄に対する思い、悔しさや切なさや、いろんな思いが感じられました。
お父さんはあまり登場しないし口数も多くないけれど、静かに萌ちゃんの味方をしてくれてかっこよかったです。
お父さんのこういうところ、想くんも似てるんだろうな。


6-7. 大事な人

ある日、待ち合わせ場所で紬を待つ想。「お待たせ」と現れた紬の事をじっと見つめる。
-紬「ん?どした?」
-想「ほんとにまっすぐ見てくるよね」
-紬「なにそれ」

笑って歩き出す二人。歩きながら、奈々の事を「どんな人?」と聞く紬。「すごく大事な人。だからちゃんと向き合おうと思ってる。」と想。

奈々の事、前回は友達と言っていた想が、「大事な人」と言いました。
ちゃんと向き合おうと思っているという想の言葉からは、奈々からの好意は断り紬と向き合おうとする意思が感じられます。
紬は、奈々の存在がやっぱりずっと気になっている。想が奈々の事を好きなのでは、という思いよりも、奈々といた方が幸せなのでは、という思いが紬にはあるような気がします。
湊斗と別れて、想と向き合うようになった紬ですが、自分から好きとも付き合いたいとも言っていない、まだ言うつもりもないんじゃないかな。
やはり空いてしまった期間は長くて、その間に起きた想の大きな変化を、自分はすべてわかっているわけではない。その間、ずっと想の隣にいたであろう、想の唯一の友達の奈々。想にとって奈々が大切な存在であることがわかるから、複雑な気持ちになっているのではないかなと思います。

しかしここのシーン、あんなイケメンな想くんをまっすぐ見つめる紬ちゃんすごい。笑
そしてまっすぐ見つめる紬ちゃんがエグいほど可愛い。
それをじっと見つめる想くんもエグいほど綺麗。
あらためて顔面偏差値が高すぎる二人。うっとりしました。
ありがとうございました。(何が)


6-8.  分かり合えない

奈々。通りすがりに店のウィンドウから、青色のハンドバッグを眺めている。「明日少し時間ある?」と想からLINEが届き、喜ぶ奈々。
当日、待ち合わせしたカフェで会う二人。「想くんから誘ってくれるの久しぶりだね」と喜ぶ想。「ちゃんと話したいことあって」と浮かない表情の想。察して、聞きたくない奈々はメニューを読み始める。

-想「最近よく二人で会う人がいて」
-奈々「イヤホン拾ったあの女の子でしょ?あの子の彼氏、友達なんでしょ?だめだよ、喧嘩になるよ。」
-想「別れたって」
-奈々「へぇ。昔の恋人と昔の親友、想くんと再会したせいで別れちゃったんだ。可哀想だね。」
-想「…ずっと奈々の気持ち無視して曖昧にしてたけど」
-奈々「(想を遮って) 迷惑かけると思うよ。想くんのこと可哀想だから優しくしてくれるだけだよ。18歳で難聴になって23歳で失聴した女の子探して、恋愛したほうがいいんじゃないかな。高校生のときはどんな音楽聴いてた?うんうんなるほどね、あれ良いよね。新曲聴けなくて残念だね。聞こえなくなっていくのほんとに怖かったよね。でも君と出会えたから頑張って生きていこうと思えたよ。そういう話できる相手探しなよ。どうしたの?手話わかんない?筆談しようか?あの子に聞こえない想くんの気持ちはわかんないよ。」
-想「…奈々、よくそういうこと言うよね。自分はろう者だから聴者とは分かり合えないって。恋愛も上手くいかなかったって。」
-奈々「だからなに?」
-想「だったら、俺とだって分かり合えないよ。聴者でもろう者でもない。
-奈々「そうだね。私も想くんもあの子も誰も分かり合えないね。」

奈々、一人の帰り道。想像するシーンの中で、奈々は青いハンドバッグを持ち、スマホを取り出し、電話をかける。イヤフォンで音楽を聴いていた想は、着信に気付きイヤフォンを外して応じる。電話で会話する二人。どこにいるのか電話の声を頼りにお互いを探し、横断歩道を挟んでお互いの姿を見つける。大きく手を振る奈々と、手を振って応える想。信号が青に変わり駆け出す奈々。想と二人、笑いながら歩いていく。左手に持ったハンドバッグを右手に持ち替える奈々。手を繋ぎ、笑い合って会話をしながら歩く二人。

朝、腕時計のアラームの振動で目覚めた奈々。夢を見ていた。
スマホで、春尾の手話教室のホームページを見る奈々。

好意に気付いて一緒にいた想くん、罪な男だよまったく…(ため息)

出会った時は、ろう者と聴者の間に線を引こうとしていたのは想でしたが、今は逆。想も、少し前だったらこんなこと言わないでしょう。紬と再会して、紬と向き合うことを決めた想は、一度自分で紬に対して引いた線を消そうという覚悟をした。紬と出会って一歩踏み出そうとしているのですね。

奈々は、想の気持ちが自分に向いていないことなんてわかっていた。だけどいざそれを言葉で告げられそうになって、思わず少し強い言葉を使って色々とぶつけてしまいましたが、自分の気持ちの焦りだけでなく、自分の過去の経験からも、想がきっと傷ついてしまう、きっと紬とはうまくいかないと思っているからこその言葉だったようにも思います。
文字に起こすととてもキツいいじわるな言い方をしているように感じてしまう奈々ですが、夏帆さんの表情やお芝居が素晴らしくて、奈々がただいじわるなだけじゃないことが画面からはビシビシと伝わってきます
奈々が嫌われ役にならないのは、夏帆さんのお芝居の賜物ですよね。

奈々の想像のシーンの中の、想と奈々の二人、切ないなぁ。
奈々がいつもリュックなのは、手話をするため。生まれつき耳が聞こえない奈々だけれど、人間関係でも、仕事でも、恋愛でも、いろいろな経験や思いを重ねてきたであろう奈々。やはり、もし自分が聴者だったらという思いはいつもどこかにあって。想と二人、聴者だったら、同じ世界で幸せになれるのに、という願いが想像になったこのシーン。いつもは持てないハンドバッグを片手に、声で電話をして、信号が変わったらわき目もふらず会いたい人のもとへ駆けていく。二人同じ方向を向いて手を繋いで声で話しながら歩く。可愛くて苦しくてとても切なかった。はぁ。奈々ちゃん。


6-9. その夢は叶わない

春尾の手話教室を終えた紬、ビルの前で奈々に出会う。手話で桃野奈々と自分の名前を伝え、「ちょっとお話ししませんか?」と奈々。

二人でカフェに来た紬と奈々。「手話上手だね」と話しかける奈々。
-奈々「想くんにも手話教わってる?」
-紬「はい。私まだ全然出来ないから、よく間違ってるよって教えてくれます。あの…」
-奈々「私が想くんに手話を教えたの。」
-紬「はい。ちょっと聞いてて。大学生の時、知り合って、手話教えてもらったって。」
-奈々「プレゼント使いまわされた気持ち。好きな人にあげたプレゼント、包み直して他人に渡された感じ。
-紬「…」
-奈々「想くん どんな声してる?」
-紬「声…」
-奈々「聞いたことあるでしょ?どんな声してるの?」
-紬「…」
-奈々「電話したことある?」
-紬「電話…はい…高校生の時。」
-奈々「いいね。羨ましい。たまに夢に見る。好きな人と電話したり、手繋いで声で話すの。憧れるけど、恋が実っても、その夢は叶わない。恋も叶いそうにないんだけどね。」

泣きそうになり店を飛び出す奈々。何も言えず、動けない紬。

奈々ちゃん…想の思いが自分には向いていないとわかっている奈々なので、紬をけん制しにいくというよりは、紬がどんな人なのか単純に知りたかっただけなような気がします。
一生懸命つたない手話で言葉を紡ぐ紬を見て、気持ちが溢れてきちゃったのでしょうか。
自分が夢に見る想の声を、紬は知ってる。紬はハンドバッグを持てて、手を繋いで歩ける。自分とは違う。今まで想と二人だった世界が崩れてしまい、想は自分とは違う世界に行ってしまう。想と自分は分かり合えない。どこまで行っても平行線な二人。それを噛みしめてしまったように見えました。そして次のシーンですよ…(涙)

何も言えない紬。そりゃ言えないですよねこんな場面で。
奈々の言葉からは、私たち聴者にとっての当たり前の日常が、もしかしたら誰かにとっては叶わない夢であり、夢にまで見る憧れなのかもしれないということに気付かされます。
紬も、自分が普通にしているだけで、自分の存在が誰かを傷つけてしまうのかもしれないと感じたのかもしれません。
人の気持ちをまっすぐに見つめる紬だから、奈々の言葉も、表情も、思いも、まっすぐに受け止めてしまって、言葉が出ない紬でした。


6-10. 奈々だけに伝わればいい

奈々、泣きながら歩く帰り道。

大学時代の回想シーン。想と奈々、二人で図書館で向かい合って読書をしている。おしゃべりしていた子供たちが起こられている様子を見て笑う二人。
「私達はこうやってしゃべってても怒られない」と奈々。「静かだからね」と想。

-想「最近筆談いらなくなったよね」
-奈々「たしかに 手話だけになった。」
-想「それが目標だった」
-奈々「目標?」
-想「奈々と手話だけで話せるようになるのを目標にして手話覚えた」
-奈々「まだ全然下手だけどね」
-想「奈々にだけ伝わればいいから
笑う想。嬉しそうにする奈々。

奈々、現在。泣きながら歩く帰り道、想から電話が着信して驚く。あたりを見回すと、向こう側の道に想を見つける。駆け寄ってくる想。
「ごめん 離れてたから電話した」と言う想。想をじっと見つめる奈々。
想を見つめながら、スマホを耳にあてる奈々。何も聞こえない。涙が止まらなくなる奈々。
何も言えない想。奈々の後ろから追いかけて来た紬は、その様子を見て立ち止まる。

奈々ぁぁぁぁぁぁあぁ(号泣)

ていうか想!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
図書館での会話、もうそれは告白なんだよ想くん?????????
このシーンを見た時、「奈々にだけ伝わればいい」と言い放った想を見て「それは想くんが良くないわぁぁぁぁぁ」と泣きながら絶叫しました(笑)

想くんにとっては、奈々と出会って、耳が聞こえなくなってから少しずつ自分が変われて、まず手話を覚えるにあたり、唯一出来た友達の奈々と手話だけで会話出来るようになるということを目標にしたのでしょう。
シンプルな、なんの邪な気持ちもない気持ち。
手話で他に喋りたい相手もいないし、なんの気もない「奈々にだけ伝わればいい」でしたよね。
いやだから想くんそれはもう告白なんだ!!!!!!!!!!!!(笑)
オシャレすぎる告白!!!
そりゃもう「うん私だけと喋ろうね!!!!!!!!」てなりますわ。
嬉しそうに恥ずかしそうにする奈々ちゃんめちゃめちゃ可愛かったです。
そんなん好きになるよね。(真顔)

それなのに奈々の想いになんとなく気付きながらハッキリさせず一緒にいた想くん、ずるいぜ…
もし紬と再会しなかったら、奈々から告白したら付き合ってたのかなぁ(妄想)
もう、高校時代も自分のモテ具合に気付かなかった佐倉くんがここでも出ちゃってますよ。本当にもう。ほんと佐倉くんのそういうとこだよ(何)

奈々が想にプレゼントした手話。"同じ"から始まって、二人だけの静かな世界で、一緒に紡いできて、関係性も築いてきて、二人で通じ合って会話が出来るようになった。
なのに、自分が教えた手話を、今は紬が一生懸命覚えようとしている。ただでさえ、自分が知らない憧れた世界にいた想と紬の二人が、今度は言葉でもまた通じ合おうとしている

今まで、想が紬や湊斗と再会した頃は、声での会話が出来ないことや手話が、想が別の世界を生きているという"違い"を表現するツールでしたが、今回は、奈々と想が"同じ"であることを表現する手話と、"違う"ことを表現するのがスマホや声。
対比のされ方が見事で、苦しすぎました。

こういうただ切ないシーンで終わるsilent、やばいですよね。
Blue-ray買ってよかったです。すぐ7話観よう(笑)

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