ヒルシュスプルング病について(発覚編)
娘の病気が分かったのは生後2ヶ月になったばかりの頃だった。
新生児期以降も吐き戻しと頑固な便秘を繰り返していたが、体重は順調に増え、機嫌も良く日々を過ごしていたので、あまり心配をしなくなっていたある日のことだった?
バウンサーにいる娘の様子に少し違和感を覚えた。
始終眠たそうにしていて、いつもより昼寝の時間が長かった。おっぱいをくわえても、すぐに口を離し、ほとんど飲んでいないのに吐き戻す。
そのうち、夜の授乳時間になった。今度はくわえるのすら嫌がり、バウンサーに戻して、わたしがはて、と首をかしげた拍子に、娘は透明な液体を吐いた。見ていなかったら気付かなかったかもしれない。
何かおかしい。
熱はない、機嫌も悪くないと自分に言い聞かせながらも違和感が拭えない。念のためとこども電話医療相談にかけてみた。
電話口の担当者に相談すると「胃腸炎かもしれない。月齢が低いから念のため夜間診療に行ってみては」とのこと。旦那さんは仕事、息子を連れていくのは大変だなぁと思いつつ、やはり不安があったのでタクシーで近所の夜間診療所へ。
誰もいなかったのですぐに診てもらえた。そこの先生は後ろ手に腕を組んで、でっぷりとしたお腹と態度で、曰く、お腹が少し張ってるようだからと浣腸をすることになった。
しかし10分たってもなかなか便が出てこない。変だねえ〜と呟いたきり娘を見もしない姿に一瞬、このお医者さんヤブ…?と悪い考えが頭をよぎった。
その後、念のためにレントゲンを撮ってみてはと大きな病院に行くことを勧められた。その時すでに22時を過ぎており、息子は眠たくてぐずっている。娘も機嫌が悪い。
今日は帰ろうか…と思ったが、昼間に子連れで病院参りも大変だなぁとそのまま大学病院の緊急診療へ行くことにした。
タクシーで向かう途中、浣腸が効いたことに気づいたが勿論オムツを変えられるはずもなくそのまま病院に向かった。
しばらく待って呼ばれた診察室で娘はオムツを変えてもらいキャッキャと笑った後、お腹が空いたと泣き始めた。わたしは小児科の先生と顔を見合わせて苦笑し、「ちょっと大げさでした」とそれで幕が下りるはずだった。
帰る直前先生が「緊急診療にこられたので一応フォローをしたい」と言われるが、後日改めて来るのは遠いし息子もいるから負担が大きいと伝えると「念のためレントゲンだけ撮りますか?」と訊かれた。レントゲンくらいなら、とその場ですぐに案内していただき診察室に戻ると先生の顔色が変わっていた。
「ここ、ガスがたくさん溜まっています。浣腸のせいかもしれないけれど、稀にあるヒルシュスプルング病という病気の所見にも似ている。念のため今小児外科の先生を呼んでいます」
聞いたこともない病名だった。しかし当直らしい小児外科の先生が2人、外来へ来て娘の診察を始めNICUにいたことや便秘症のことを聞くたびに段々と緊迫した雰囲気になってきた。
途中わたしは診察室を出され娘の絶叫が響く待合室でひたすら病名を調べた。まさか、そんな、うちの子に限って。きっと何かの間違いだろう。
混乱と怯えと娘の泣き声と全てがない混ぜになって思考がストップしてしまい、母にLINEした。母は病名とその概要を知っていた。「多分違うと思うんだけど」と繰り返し呟きながら母との会話を終わらせることができなかった。
しばらくすると、小児外科の先生が出てきて「今晩入院できますか」と言われて頭が真っ白になった。コロナ禍の影響もあり結局その日は病院で夜を明かし、翌日はとにかく娘のお腹が張らないようにと洗腸の手技を急いで習ったところで一旦帰宅した。
この日、わたしは初めて娘の病気の可能性を知った。
娘の病気は何人もの「念のため」が、早期発見に繋がった。もし、どこかで誰かが「まあ、いっか」と言っていたら娘の症状は悪化し、最悪は腹膜炎や腸炎で命が危うくなっていたかもしれない。娘を見てくださった先生方、医療相談の担当者の方が小さなリスクを注意深く発見し、素早く対処してくださったことには深く感謝している。
夜間診療のお医者様、チラッとでもヤブとか思って本当にごめんなさい。
そして正直眉唾だと思っていた「親の勘」はちゃんと実在し、子どもを守ることがあることを身を以て学んだ。例え決断の半分以上が「昼に2人連れて病院はキツい」という気持ちから来ていても、今回だけは「グッジョブじぶん!」と滅多にしない自画自賛をした。
そして仕事を途中で切り上げて息子を迎えに来てくれた旦那さん、ありがとう。寝落ち寸前グズグズの息子と瀕死のわたしのヒーローです。
入院にならなかった経緯はまた後日。
長い文章でしたが、最後まで読んでくださってありがとうございました。
誕生直後と新生児期の話はこちらから
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