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工業蒸留への道③ 〜相対揮発度とは〜

前回は、混合物を沸騰させると気相部では沸点の低い物質が濃縮されるという話をしました。
今回からは、濃縮された物質の濃度の求め方について書いていきます。

相対揮発度

蒸留後の物質の濃度を求めるには相対揮発度というものを使います。
相対揮発度とは、混合状態の2成分について、蒸発のしやすさがどの程度異なっているかを数値で表したものです。

相対揮発度の算出方法は別の投稿で書きたいと思いますので、今回は、相対揮発度を用いると蒸留後の濃度を算出可能であることを説明します。

液体の混合物(成分Aと成分B)を加熱し蒸発させることを考えます。
液相部のAのモル分率を$${x_A}$$、気相部のAのモル分率を$${y_A}$$とします(モル分率:対象成分のモル数と混合物全体のモル数の比率)
B側も同様に$${x_B}$$、$${y_B}$$とします。
このとき、相対揮発度αは以下のように定義されます。

$$
α=\frac{y_A/y_B}{x_A/x_B}
$$

相対揮発度は、液相部の成分Aと成分Bの比率に対して、気相部の成分Aと成分Bの比率がどれだけ大きいかということを表す数式です。つまり、成分Aが成分Bに比べてどれだけ蒸発しやすいかということを表す指標となります。
αが大きいほど、成分Aは成分Bに比べて蒸発しやすいことになります。逆に、αが1に近い場合、両成分の蒸発しやすさはほぼ同じとなります。

相対揮発度の式の整理

モル分率の定義より$${x_A}$$+$${x_B}$$=1、$${y_A}$$+$${y_B}$$=1となるため、この関係式を用いて相対揮発度の式を整理していきます。

$$
α=\frac{y_A/(1-y_A)}{x_A/(1-x_A)}\\[5mm]
αx_A/(1-x_A)=y_A/(1-y_A)\\[5mm]
αx_A-αx_Ay_A=y_A-x_Ay_A\\[5mm]
(1+αx_A-x_A)y_A=αx_A\\[5mm]
y_A=\frac{αx_A}{1+(α-1)x_A}
$$

この式は、成分Aの液相中のモル分率と相対揮発度が分かれば、気相中のモル分率を求めることができるということを表しています。

次回からは、相対揮発度の算出方法について書いていきます。

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