派遣社員なるがまま~左手でスマホをいじれるのが自慢だ~
女性のお尻がアップになる。たまらないほどいいね。
顔は・・・。これまた、うん。いいね。
おっ、股間が膨れてきたぁ・・・。
ドンドンドン・・・。トイレのドアを叩く。返す。
(うっせなぁ~)
トイレットペーパーで鼻をかみ、水を流す。
ドアを開ける。『調子悪いんかぁ・・・お前』 (やっぱ、このおっさんだ) 「いえ、っていうか。腹くだしたみたいで・・・。さっきの鯖の塩焼きで・・・」「キモかったよなぁ。頭無しの半分、のってたもんなぁ・・・ああ、解る、解る・・・中島さんが持ち場、離れるなって騒いでたから・・・。俺達、派遣だから・・・」
(嘘つけ! 中島さんがそんなこと言うわけねぇだろ・・・後から入ってきたくせに・・・。こいつは、本当に余計な男だ)
俺は、手を洗った。
「すぐ、行きます」
「調子悪かったら、帰るか?」
(てめぇ、何様だ)
「いえ、大丈夫です。でも、相談あるんすけど・・・」
「なんだ?」
「今日は、数回これからも行くかも知れないんで、目つむってくれませんか?」
「当然じゃないか。俺達、同期だろっ。そういう相談は乗るぞ。そうか。やっぱ、腹、くだしているのかぁ・・・。よくトイレに行くなと思ってた。わかった! これ以上、野暮な事はきかないっ。これからもヨロシク」
手を差し出す井沼。手袋をしたままだ。
「手袋、脱がないんですか?」
「君は、さきほどトイレでうんこをして手を洗った。その後、手をふりふりしただけで、拭いていない。依って、君の手は、大腸菌だらけだ。さぁ、君も手袋をしろっ!」
(つまんねぇ、おっさんだよ)
「じゃ、いいですよ。気持ち頂きました」
「そうか。では、持ち場へ戻ろう。大変な工事なんだから・・・。俺達の仕事はなんだ?」
「据え付け業者の監視っす」
「監視とはなんだ?」
「安全に怪我しないように、見届ける事です」
「そうだ。他の現場で事故が多発しているからこそ・・・我々が働けるんだ。肝に命じて頑張ろう」
(わっちゃぁ・・・。昭和の建設会社のオッサン登場だよ。まいったなぁ・・・)
「ご安全にっ!」
「ご安全に」
俺、派遣社員鳴賀侭(なるがまま)30歳。右利きながら、左手一本でスマホ操作ができるのが自慢です。
ふぅうう。
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