副腎不全の復習①
Lancet から7年ぶり?の副腎不全のレビューが出たの復習しました。
文中に、疑うことが大事!って書いてあるけど、それだけ症状が非特異的なものが多いために診断が難しい疾患のひとつです。
Adrenal insufficiency
The Lancet. 2021;397(10274):613-629. doi:10.1016/s0140-6736(21)00136-7.
症状
臨床症状は、体重減少、食欲低下、起立性低血圧、倦怠感、筋肉痛、腹痛、色素沈着、塩を好む、などの症状がありますが、どれもこれ一つで副腎不全!と診断することが難しい症状です。
検査・評価
ある研究では、一般的な血液検査で下記の異常を認めるために、副腎不全を疑う所見として注意喚起しています。
・低Na血症 84%
・TSH高値 52%
・高カリウム血症 34%
副腎不全は、血清コルチゾールと血清ACTHを測定することで診断可能できます。低コルチゾール(4mcg/dlまたは100nmol/L未満)と基準値の2倍以上のACTHで診断ができます。
コルチゾールは下記の図のように日内変動が大きいホルモンで、朝が高く、夜に低い特徴があるために測定時間が重要です。
基準値(成人)は
午前8時: 5-23 mcg/dL or 138-635 nmol/L (SI units)
午後4時: 3-13 mcg/dL or 83-359 nmol/L (SI units)
と言われています。
下記の図のように、夕方以降のコルチゾールは、上記で触れている低コルチゾール(100nmol/L未満)になることがあるために、夕方・夜の血液検査でコルチゾールが低いのは生理的な変化で異常ではありません。
(上記Figure1はEndocrine Connections. 2017;6(7):500-509.から引用)
その他、低アルドステロン、高レニン濃度、高レニン活性、DHEA-S低値も参考所見として重要です。
副腎から分泌されるホルモンを評価するときには下記の図がとても参考になります。ステロイドはコレステロールを材料に各酵素で代謝を受けて産生されますが、副腎不全が生じるとき、コルチゾールが少なくなる以外にもアルドステロンやDHEA-Sも同時に少なくなることがあります。
原因検索
副腎不全の診断がついたら次は病因評価です。
下記Figure4のアルゴリズムにあるように、
① ステロイド内服者かどうか
(ア) 内服者の場合は、ステロイド離脱症候群のことが多い。
(イ) 上記以外は視床下部に障害が生じうる病態などを鑑別します。
膿瘍、髄膜炎、脳炎、放射線治療、脳腫瘍、サルコイドーシスなどの浸潤性疾患(ステロイド離脱症候群以外のTertiary adrenal insufficiency)
② ACTH値(高いとPrimary、低いとSecondary)
③ Primaryの場合は、21-hydroxylase抗体、血清VLCFA測定、CTで副腎腫瘍の有無を評価するなどを検討する
④ Secondaryの場合は、下垂体前葉ホルモンの評価、MRIで下垂体の評価を行う。
治療
成人における副腎不全の治療(Panel 参照)
ヒドロコルチゾン(コートリル® 10-25㎎/day)を内服する。
生理的なコルチゾールの分泌に従い、朝に1日量の50~66%割り当てることが多い。
1日2回、朝夕食後で処方する場合は朝2:夕1の比率で
例1 コートリル朝7.5㎎、夕2.5㎎
例2 コートリル朝10㎎、夕5㎎
例3 コートリル朝15㎎、夕5㎎
などで処方する。
ミネラルコルチコイドは原発性副腎不全でない限り通常必要ない。
Fludrocortisone(フロリネフ)0.05㎎~0.2㎎ 1日1回内服
本日は、ここまでです。副腎不全の復習に良いレビューです。本レビューではシックデイや副腎クリーゼについても触れていますが今回は割愛しています。
出会う機会は少ないですが、疑うときの検査項目・検査手順に参考になるとうれしいです。