夜サバイバー
人類のすべてをこの眼で見送って、俺のバスだけ全然こない
つり革に掴まって寝る人たちのゾンビのような向日葵のような
あか/ きいろ/ あか 出会うことの叶わない相手を思う点滅信号
靴の先少しのところに人が寝ており、ああここが君の廊下か
止まれの「止」の字はおそらく俺んちのベッドくらいの大きさ ほらな
電柱になるしかなかったたましいよ俺が創った話を聴けよ
「スクーターの鳴き真似します」「アヒャヒャヒャヒャ」「とても哀しい( とても哀しい)」
鼻で吸う空気が重い夜であり肺のあたりでちょうど晩夏だ
コンビニやインターネットのまっしろな明るさにたましいを囚われ
喧嘩したあとの静けさ二人掛けソファーもなんだか他人行儀で
外壁にとまった蝉が寝たことで木であることをやめられた家
コンビニのフォークがとてもやわらかく何の肉にも刺さってくれない
「生きるのが前提だから生きづらい提案だけど押し付けますね」
浴槽で( 鏡も見ずに適当に) 前髪を切る火曜日の夜
いつだって体のなかには夜がある 臓器のなかでは肺が好きです
パソコンも不意にふぅっと寝たあとの暗闇あとの月の明かりよ
尖塔が見える部屋から( 嘘じゃない) 世界よ世界、平和であれよ
初出:『モウカラ不動産 vol.02』(2016.08.13)
ネネネさん(@neee__pp)が「夜サバイバー」のイラストを描いてくれました。ありがとうございます!
いいなと思ったら応援しよう!
「蝉時雨」みたいな言葉を発明するまで続けるよ。