自選30首
今まで作ったすべての歌のなかから自選として30首をピックアップしてみました。
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微睡みに犬のぬくもり淋しさはあらゆるときに励起するもの
真夏日の成功報酬うけとった裏声まみれのとおい耳鳴り
ほらみてよ今年も向日葵うなだれて弔うことに慣れてしまうね
ひとの見る世界をそのまま見たいから色の名前は忘れさせてよ
ふるさとはカラリときれいになっていて踝にだけ蛞蝓はいる
小説を読み進めれば置き去りの右ゆびのはらさんかんしおん
今日はまだ傷ついていない 煙草の火、窒息させるやり方で消す
海岸線ぜんぶ埋め立てようとして本当にやってしまうのだ人は
まっしろと言ってしまっていいのかも吐息は俺の中身だったろ
たましいをきれいにみがききったのでひきこもるしかなくなったひと
職安に西日を入れて蓋をする傷物野菜を買って帰る
ああいやだプラスチックが老いていて黄変をした親が浮かんだ
俺は強いそういう奴が勝てばいい 耐熱容器に熱湯を注ぐ
ただ一度狂っただけでもう二度と時計としては生きていけない
上空で助走をつけた雨粒がわたしの肌で熱を冷ました
それはダサい停滞でした 町はもう船に変わると決めたのでした
外壁にとまった蝉が寝たことで木であることをやめられた家
いつだって体のなかには夜がある 臓器のなかでは肺が好きです
指先に爪がついてる奇跡にて世界はつつがなく進んでく
出力を弱から強へあげてゆき、扇風機乗りが離陸する夏
ベランダの手摺りと遠い工場の屋根を重ねる 平行じゃない
ボトルからワインが減ればボトルには今日の空気が満たされていく
屋上へ追いたてられた灰皿にこのまち最後の夕日があたる
なんとなく攪拌したの空の底すこしは息がしやすくなった?
バカになるお薬出しておきますね バカになれたらよく寝れますよ
ひとはみな小さな製塩所であって、だから天日を求めたりする
姉の背に推進力をおくりこむ絶交明けにするふたり乗り
こどもらのルールが施行されたので、この公園はそらになります
飲みかけのコーヒー缶が死にました指にたしかな冷たさつたえ
憎しみの分だけ外に並んでるペットボトルがとてもあたたか