アヒル・ファンタジー
庭から来たアヒルが、言葉を教えてくれた。成長するための涙、そんなものを言葉に変えて飾っていたらいいね、いつか誰かに盗まれるように、と。朝とも夜ともつかない一日に、雲が地面すれすれを飛んでいたので、アヒルの後を言葉が付いて雲の中に消えたようだ。木陰にある機械に言葉を噛ませ、なぜアヒルが雲の中に消えたのか、アヒルはなぜ言葉を伴うのか、それを説明させた。機械にはそれが説明できるか? それが気になった。機械は説明した気になってはいたが。雲の中には恐らく街がある。その街には僕らーーアヒルではなくーーが住んでいて、そこで君たちーー僕とアヒルは含まれないーーは悲しみを言葉に彫刻しては潰していた。そんな退廃に僕は怒りを感じる。アヒルが持ち去った言葉には「朝」「昼」「夜」が含まれていたから、今もうここには......一日しかない。朝も昼も夜もない一日。それが機械の説明だった。機械はいつも満足そうにしていた。機械なのに。言葉はアヒルに持ち去られたのか? それとも勝手に言葉が付いて行ったのか? そこんところ、機械の考えを聞いてみたい。機械は勝手に庭を作っているところだった。「なぜ庭を作っている?」アヒルを呼ぶためだと言う。もしくは、そこで直接に言葉を栽培してもいい、と。言葉を栽培して、それを餌に、アヒルをおびき出そう。成長する言葉と、庭を作る機械、アヒルを連れ去る雲、これらのファンタジー・トリックの種を蒔いて、今度はちゃんと君に届く言葉を捏造したい。
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