💳母親が突然自分の友人の電話を押しつけてきた件について〜マイナンバーカード紛失事件
母の友人の川棚さん(仮)から毎日のように、母に長電話がかかっていた時期、川棚さんは既にもの盗られ妄想もあり、完全に認知症になっていた(と思う)。
母は、そんな川棚さんの電話の相手を根気よくしていたが、ある日、事件(私にとって)が起きた。
(前話はこちら)
夕方、いつものように実家に行った私に、
電話していた母が、突然受話器を渡してきた。
「はい。」
はい?
はいじゃねーよ!
受話器の向こう側では声が聞こえる。
「だからね、マイナンバーはね、個人番号とは違うでしょう?」
何言ってるんですかね??
母が向こうで
「マイナンバーと、個人番号が違うって言って聞かんのよ。
説明してやって。」
いや、いきなり受話器を渡さないでくれるかな!
戸惑いつつも、川棚さんの話を聞く。
が、当然のように要領を得ない。
「だからね、マイナンバーと個人番号は違うでしょ。」
一緒ですけど。
「……どう違うんですか?」
「マイナンバーはねえ、銀行とかで使うでしょう。
個人番号はコンビニとかスーパーで使うのよねえ。」
うん?うん??
「一緒だと思いますけど(小声)、
マイナンバーカードが見当たらないんですか?
それとも、最初に送ってきた紙のが?」
(お忘れの方のために言っておくと、最初郵送してきたのは、カードサイズの『個人番号通知書』である。それを元に申請して初めて樹脂製の『マイナンバーカード』が来る。)
多分、それのことかと検討をつけて聞いた。
「それが両方とも見当たらないのよ。」
両方?
とにかく、失くしたんだな、という事は分かった。
「市役所に申請し直したほうがいいと思うんですが、行かれました?」
川棚さんはこともなげに言ってのけた。
「それがね、市役所に電話したら、『再申請に来てください』って言うのよ!」
そりゃ言うだろうよ!
とりあえず話が終わらんと思った私は最初に立ち戻った。
「えーと、手元に説明書はおありですか?」
「ええ?
説明書、説明書ねえ。」
(なくしたな?)とは思ったものの、埒があかない事は分かっていたので、構わず話を続ける。
「マイナンバーカードの交付申請の説明書の最初に、
『マイナンバーかっこ個人番号かっことじ』って書いてありますよね?」
沈黙がおそらく2秒は続いた。
「……え?」
電話の向こうで、川棚さんが言った。
そして電話が切れた。(正確には川棚さんが切った)
ちーん。
もちろん、この電話の後、私は母に文句を言ったが(突然電話を渡されても困る)、うちの母に普通に流された。
これが、高齢者とマイナンバーにまつわるお話である。
(終わり)
投げ銭歓迎。頂けたら、心と胃袋の肥やしにします。 具体的には酒肴、本と音楽🎷。 でもおそらく、まずは、心意気をほかの書き手さんにも分けるでしょう。 しかし、投げ銭もいいけれど、読んで気が向いたらスキを押しておいてほしい。