🏢父の施設入所　9/3(/3回)

父の施設入所、これについて三回目、いったん最終回。

三月に始まった父の脊椎圧迫骨折騒動からおおよそ七ヶ月、父の件についてはこれで全てが片付いたわけではないのではあるが、ひと段落ついたことは間違いないので、この記事の後は一旦休憩を入れて、この件について振り返って書いてみたいと思うものの、とりあえずまずは9/3の件。

午後4時くらいに母を連れて施設に再び戻り、必要な印鑑を押してもらった後、許可をもらって母を父の居室に連れて行く。
夕食が5時くらいなので、初日でもあるしそれまでは、と時間を確認しておく。

「ああ〜！
　顔色が良くなっとるね〜、良かったねえ〜！」

部屋に入って、母が嬉しそうな顔を上げる。

正直、顔色なんぞそんなに大差ない気がするが、母は6／22に父が入院してから二ヶ月以上直接顔を見ていなかったので、思い出下方修正が掛かっている気がする。年寄りの写真と実物って、照度で見え方が全然違うのでね。

父母が平和な面会を繰り広げている横で、こちらは父が所持していた金品(キャッシュカード、クレジットカード、現金)等を回収する。
これは施設からのお願いで、施設内では現金を使わず生活できるので、本人には現金等持たせないようにとの話があったからだ。
正直こちらとしても願ってもないので、遠慮なく回収する。
まあ認知症の人々が入所しているこういった施設で、多量の現金を手元に持っていることがどんなトラブルを招くか、それは容易に理解できる。
施設の管理側も大変やのう。

荷物の配置等を微調整していたら、横で面会していた父母の会話の行方が怪しい。

金の話だ。

この施設は、基本費用と介護費用合わせて19万1千円掛かる。最低でだ。
父の年金は14万1千円しかない。

正確には火災保険とケーブルテレビとスマホとiPadの契約が載っているので、現時点12万くらいしか使えない。
しかし、その12万が施設費用に繰り入れられるかどうかで、母をはじめとした家族の負担が全く変わってくる。

が。

父は、家に金を入れた試しはないし、ナチュラルに生活費は母が負担するものだと思っている。

父の年金を施設費用に当てたい母が父に聞いていた。

「あなたね、ここは20万も掛かるんよ。
　あなたの年金を施設費用に充てないととても足りないんです。
　銀行の暗証番号を教えて？」

まあ、公明正大に言える話じゃないが、父の年金を、父の口座から下ろして、父の生活費に充てるって話なので、道理は通っている。

まあ、ただ、言わんだろうなあとは思った。父だしな。予想通り。

「それはね。
　あなたが色々手続きしたから番号は知っているはず。
　役所に出す手続きの書類に色々番号を書いたのはあなただから。
　あなたの家計簿の隅に書いてある。」

ンなわけあるか。

母も唖然として、なぜか真面目な話をするときに出る気構えた標準語が崩れて、声を荒げていた。

「は！？
　そんな、私は全然一回も聞いたことない！
　あなた、私にそんなこと教えたこと一度もなかろうが！」

無意味に何度も母の家計簿を見せられたことのある私から証言しておくと、この場合、母が正しい。
父は母に通帳やカードを預けたことはないし、暗証番号を自分以外の人間(母含む)に伝えたこともない。

父はのらりくらりと「あなたは知ってるはず」と直接的回答を避け、母は「そんな、私が知るわけなかろうもん、一度も聞いたことない！」と繰り返す問答が続く。ここは何の地獄かな。

私はまあどうせ父が返答するとは思ってないので、混ざらずに荷物整理に勤しむ。

あと、一応、こうしたら？と提案してくださる方もいるかも知れんので、父に関してはこれまでに以下の手段も試みているが不発に終わったことを申し添えておく。
・そもそも父の口座で施設契約する。→「お任せします」の返答の元にさりげなく自分名義での口座契約を忌避、あと、銀行印がどれか答えないので不明のまま。
・父の銀行口座から引き出す。→銀行は委任状では出せないが、おそらくボケた振りなり普通に拒否なり、ひき下ろしを拒否する。理由：その話(電話でOKするかどうか)をしたとき、「え〜それは大変だなあ」と言っただけで了承するとは言わなかった。
・暗証番号：リアルタイム、返答をかわして答えない(4月に引き下ろしているので忘れてはいない)。

ある種、地獄の面会に突入していたが、午後4時45分ころ、施設の人が迎えに来た。

父は歩行器で食堂に移動、私と母はケアマネ介護というものに参加させていただいた。

ケアマネ会議。

いや、本当に真面目に良い施設だと感心する。
入所当日、副施設長、看護師、介護士、ケアマネージャーもかな、施設側５名の方が参加されて、入所者の状態、家族の状況を確認する会議を行い、処遇方針の決定を行う。
この辺しっかりしているのは信頼が置けると感じる。

中期目標や短期目標も決めて、まあ、一般的な話をした後、具体的な話に入ったのだが、うちの父は何か早速昼食の時に、自慢話をしたらしい、自分の兄(故人)の学歴の話を。
アホか。
伯父は旧帝大のうちの一つの出だったのだが、母がそれを聞いて父の学歴について
「旧帝大(のうちの一つ)に落ちて地方私大に入りましたので。」
と暴露していた。
自慢してるんだか自爆してるんだか分からん。

看護師さんから食事について
「病院からは拒食もあって、最後の方はおにぎりにマヨネーズとケチャップをつけて食べていたと聞いているんですが…。」
と確認される。

えっマヨケチャおにぎりは初耳ですね。
微妙にお育ちのよろしい母は「家でそんな食べ方をしたことはありません！」と激烈な拒否反応を示していた。
それは、昔、父がどこかで仕入れてきたねこまんまとか、味噌汁ご飯とかの食べ方を見て「そんな下品な食べ方をどこで覚えてきたの！」と激怒してた母の前ではできなかっただけでは？

鯨肉をアレルギーと言ったり、甘味が好きで、味付けの好みは子供舌であることは伝えておく。
調味料や病院で差し入れした食べ物系は引き上げておくよう打ち合わせた。

それから、スマホ。

本人が紛失したスマホであるが、施設としては再発行より解約が望ましいらしいので、こちらの希望と合致しているので解約することにした。
スマホについては自宅の室内で紛失したが、電卓がゴミ箱に捨ててあったので、同様に捨てた可能性があるのである。

それから健康面の話。

別に話したくはないのだが、整形で自分は肺がんだったと言って医療関係者の皆さんを惑わした歴があるので、一応その話はしておく。

「本当に肺がんだったんですか？」
「胃がんは胃を全摘してるんですが、その手術の際、転移はなかったって言われたんですよ。
　そのあと、肺がんって家族告知受けてないので違うと思うんですが。」

本人だけが肺がんだったと言っている。

「強いて言うなら「肺がん(自己申告)」ですかね？」

「自己申告は初めて聞きましたね！」

笑いが起こった、なんかすまん。

面会は通常ならもうちょっとできるが、緊急事態宣言中は週に一回十分程度に留めて欲しいと。まあそれは仕方ない。

色々終えて帰宅して、簡単に片付けを終えたら午後7時を回っていた。

父の財布やポケットに入っていた現金を数えたら9万円に届かなかった。小銭が多かったが、数えていたら母が横から口を挟んできて千円を両替してくれと言うので五百円玉と百円玉が消えた。数えるのに大変邪魔だった、小学生か。

しかし4/20に20万下ろしてたはずなのに5／2までのたった12日間に、十万以上何に使ったんだ、当然、家計には入れてない。

この現金は、父親の施設費用用口座に参入する、まあ半月分にも満たない。

とりあえず、これで終わりではないのは重々把握した上で、父親を施設にお任せしたやり切った感でこの日は達成感に満ちていた。