🐝蜂の巣投棄事件〜えっどこに捨てるんだ!?
ジャスミンの話で思い出したので、もう一件、母の所業をバラしておく。
うちの庭の前の藪が造成される直前のことなので、2010年台のどこかの話だ(幅広いな)。
その時期、隣の藪(山林)の持ち主の方が高齢のため、子供さんが複数のため、相続の時に揉めないために現金化して分配するという話になって、とうとう長年そのままだった(そしてうちの母が自分の庭のように思い、私が小学生時代秘密基地を作った)藪を、売却、造成、開発することになった。
そのため、下準備として、造園業者──平たく言えば植木屋が何十年も放置されてほぼ林と化していた藪の伐採に来た日のことだった。
実はその日の画像である。
当然だが、顔は個人情報保護のためボカさせて頂いている。
そして、この日、うちの母は、何故か自分の家の庭の伐採でもないのに、しょっちゅう庭に出てきて伐採の様子を眺め、更に、植木屋さんにお茶の差し入れまでしていた。
多分、そのせいだと思う。
「うわっ!」
「気を付けろ!」
という大声が藪から聴こえてきた後、藪の端のうちの庭の側に、ひょっくり植木屋さんが顔を出した。
植木屋さんの手には、
直径十センチほどのスズメバチの巣。
植木屋さんは、庭にいてそちらをガッツリ見上げているうちの母を認めると、うちの庭の真ん中にスズメバチの巣を投げ落とした。
「奥さん、これやるよ。
これ、縁起物だから、金が貯まるぜ!」
植木屋のおっさんの笑顔は爽やかで、うちの母は、
「まあああ〜、珍しいねえ!」
と言っていた。
……。
ところでお気づきだろうか。
うちの母は、感嘆しているようで、全くお礼を言っていないのである。
つまり、ありがたがっていない。
夕方、植木屋さんが仕事を終えて、引き揚げて行った後、うちの母が言った。
「こげなもん、もらっても困るねえ。
ちょっとそこの敷地に捨ててくる。」
はい?
聞き間違いかと思ったが、うちの母は、スズメバチの巣がくっついている枝の端を持って、そのまま、斜め向かいの空き地に歩いて行った。
…………。
帰ってきた母の手には何もなかった。
スズメバチの巣は自然物だから──、自然に還ったのだ、きっと。
(終わり)
スズメバチ嫌いじゃないけど愛してもない🤣