整枝剪定を早く終えるためにはすべきこととは(1)~今なぜ剪定を早くしなければいけないのか~
「剪定戦線異常あり」です。
近年、気候変動の影響でナシの生育に変化が起こり、併せて作業体系も変化を余儀なくされています。
その状況に私たち梨生産者はどう立ち向かっていけばいいのか。
一つのソリューションとして、整枝剪定の方法に焦点を当ててみます。
剪定は時間がかかる
ナシ栽培の年間作業で一番時間を費やすのが「整枝剪定」作業です。
以下剪定と略させて頂きます。(※1)
こちらは農林水産省のサイトにある資料『果樹農業に関する現状と課題について』(令和元年10月)の9ページ目にある図で、各果樹における10a当たりの労働時間を作業別に分けてグラフにしたものです。
まず第一印象としてブドウとナシの総労働時間が頭抜けて多く、中でもナシの「整枝・せん定」の割合が多いことが一目でわかります。
計算してみると389h/10aのうち105h/10aを占めていました。
つまりナシの全作業のうち27%、約1/4が剪定に費やされているのです。
"高品質な果実生産は、労働生産性を犠牲にして手間をかけること(手作業)により実現されており、他品目と比較して労働時間が長く、労働集約的な構造となっている。"
と同資料にもあるとおり、手間がかかることは果樹栽培の宿命なのですが、我々生産者にとって大きな負担になっているのは間違いないです。
なのに剪定できる期間は短くなっている
南関東では4月上旬にナシの花が開花してしまうので、それまでに枝を切り、棚に誘引していないといけません。
以降は授粉(交配)、摘果、摘芯と作業が続けて押し寄せて来るからです。
作業の遅滞は果実品質にとって確実にネガティブに働きます。
品質の低下は収量や歩留まりの低下、すなわち売上の低下に直結します。
だから剪定はなる早で、遅くとも3月末までに終わらせる必要があるのです。
しかし近年は温暖化の影響で、剪定開始の目安となるナシの落葉が遅くなり、一方で剪定の締切の目安とも言える開花が早まっている傾向があります。
ナシはソメイヨシノ(サクラ)と同じバラ科落葉樹なので、開花の早遅はソメイヨシノと相関します。
近年ソメイヨシノの開花がとんでもなく早くなっているのは皆さん周知のとおり。
要は剪定自体がそもそもクッソ時間かかるのに、温暖化のせいでスタートが遅くなったわりに締め切りが早まってしまったのです。
温暖化は単年的ではなく長期的な問題でしょう。
つまり我々は剪定をこれまで以上に早く終わらせる必要があります。
つらたんです…🥺
急剪定時代の幕開け
「男たちは開花前の剪定終了を目指し、枝を追い続ける。
世はまさに、急剪定時代!!🏴☠️」
何かのアニメの煽りみたいですが、現実問題として世界は「急剪定時代」に突入したのです。
冒頭で書いたとおり、手間がかかることは果樹栽培の宿命なのですが、そこで思考停止しては事態は一向に改善されません。
以前『現代農業』の連載(※2)では剪定の基本について解説させて頂きましたが、こちらでは早く剪定を終えるために我々は何をすべきなのか、何を学び、考えるべきなのか、について考えてみます。
以降の記事では何回かに渡り、技術論から精神論、時短による生産性の向上、科学的な話から柔らかいアイデアまで、具体抽象森羅万象入り混ぜて記事を書きたいと思います。
一つ言えることは、割と泥臭い普遍的な話が多くなります。
最短で結果を出すためにやっぱり急がば回れで、先ずは土台の部分を固めることが肝要なのです。
古来より良いとこ取りは長続きしないのが世の常です。
残念ながらこれは避けようがありません。
とはいえ、直ぐに結果を出さなければいかないのも世の常。
そこは即効性のあるTIPsも紹介しながら、硬軟織り交ぜまして、剪定の早期攻略法について考えていきましょう。
ただ重ねてですが、早く作業を終わらせるためには「急がば回れ」です。
諸先輩方には怒られそうですが…いつか剪定のRTAをYoutubeやニコ動とかで皆んなで出来たら面白いな~、とか思ってます(笑)
と最後にやや脱線したところで次回に続きます。
ではまた。
まとめ
・ナシの剪定は客観的に見てもめっちゃ時間かかる
・それなのに温暖化の影響で剪定できる期間は短くなってきてる
・急いで剪定を終わらせなければいけない(急剪定時代の到来)
・どうやったら剪定の時間を短縮できるか…考えていこう!
※1
正確には「整枝」と「剪定」は異なった作業のことを指します
この分け方というか、それぞれの概念の理解も作業改善につながりますが、詳細はまた追って解説させて頂きます
※2
一般的な剪定の考え方については『現代農業』という雑誌で一年間連載記事を書かせて頂きました
バックナンバーを購入するか、ルーラル電子図書館月間契約をして記事(PDF)をダウンロードするかたちになりますが、ご興味ある方はよろしければご覧になってみてください
※3
本文中では触れませんでしたが、温暖化が進めばそもそもナシの花が開花しなくなる(発芽不良を起こす)という問題もあります
その件については機会があればまた紹介したいと思います
知りたい方は参考リンクをご覧ください
参考URL:
●食料・農業・農村政策審議会 果樹・有機部会(第1回果樹関係)
●早まる桜の開花 気候変化が影響か - ウェザーニュース
●CiNii 論文 - 気候温暖化が落葉果樹の休眠, 開花現象に及ぼす影響
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