第44回(2023年)吉川英治文学新人賞候補作を全部読んでみた
発表前のギリギリになってしまいましたが、第44回(2023年)吉川英治文学新人賞候補作をすべて読み終わったので、5作まとめて感想を並べてみようと思います。
発売されてすぐに読んでいたものもあり、この中からどの作品が選ばれるのかとても楽しみです。
「おんなの女房」(https://amzn.to/3J1fGj6)と「方舟」(https://amzn.to/3Z8w4nB)は2022年のお気に入り本にも選んでいたくらい好みの作品ですが、今回は「プリンシパル」(https://amzn.to/3IZgpBz)が受賞するのではないか…と思っています。
「プリンシパル」 長浦京
戦後を舞台にしたサスペンス小説で、極道の世界から抜け出したいと望む女の生涯を描いています。
誰よりも自分の血を憎みながら、誰よりもその血に囚われ続けた主人公の生き様に引き込まれました。
実在の人物をモデルにしていると思われる登場人物も登場するので、どこまでが史実でどこからがフィクションなんだろうと考えてしまう真実味があります。
かなりグロいシーンもありますが、戦後という時代設定を考えるとそれすらもリアルなのかもしれない…と思いました。
「おんなの女房」 蝉谷めぐ実
第10回野村胡堂文学賞を受賞した本で、第13回山田風太郎賞の候補にも選ばれています。
江戸時代を舞台に、歌舞伎役者に嫁いだ武家の女の結婚生活を描いた時代小説。
お気に入りの作家さんの1人なので、読む前からおもしろいことはわかっているぞ~という気持ちで読み始めましたが、想像以上におもしろかったです。
夫婦っていいなぁとしみじみ考えてしまう温かさがありました。江戸時代の歌舞伎の雰囲気がみずみずしく伝わってくるのもよかったです。
今1番次回作を楽しみにしている作家さんなので、「おんなの女房」が受賞作品に選ばれたら私はとても嬉しい。
ネタバレありの感想文もあるので、よかったら覗いて行ってください。
「方舟」 夕木春央
数々のミステリ賞を受賞している本で、本屋大賞2023にもノミネートされています。
謎の地下建築に閉じ込められた男女9人に降りかかる惨劇を描いた推理小説です。
読み終わった後、なんて新しいクローズドサークルミステリなんだ…と呆然としてしまいました。今まで読んだことのない読書体験ができると思います。
ネタバレ厳禁のミステリなので、どこかで結末を知ってしまう前に読んだ方がいいです。
「ラブカは静かに弓を持つ」 安壇美緒
第25回大藪春彦賞受賞、第6回未来屋小説大賞第1位を受賞している本です。本屋大賞2023にもノミネートされています。
音楽教室に潜入することになったチェロ奏者の話。
音楽が人に与える力を感じ入る物語でした。読んでいるうちにチェロの音色が聴きたくなります。
ちょっとミステリっぽいところがあったのもよかったです。
「汝、星のごとく」 凪良ゆう
2022年下半期の直木賞候補作にも選ばれた本で、本屋大賞2023にもノミネートされています。
瀬戸内海の海を舞台にした悲恋の物語。
こんなに苦しいことってないよ…と何度も絶望しそうになりました。
最後はハッピーエンドになるんだよね?と疑いながら読み切りましたが、ラストまでちゃんと見届けてよかったです。
1行目から読者をつかんで離さない物語の力がすごいと思いました。
ネタバレありの感想も書いたので、既読の方はこちらも覗いていってくれると嬉しいです。
最後に
第44回(2023年)吉川英治文学新人賞候補作は、好みの作品ばかりで読んでいて楽しかったです。
どの作品が受賞してもおかしくないと思うので今から発表が楽しみ。
他の文学賞ノミネート作品を全部読んでみた記事も覗いて行ってくれると嬉しいです。
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