【万両役者の扇】江戸歌舞伎を題材にしたどんでん返しミステリ
蝉谷めぐ実さんの新作出ました!今回も江戸歌舞伎もの。相変わらず歌舞伎シーンの瑞々しさとミステリとしてのおもしろさの塩梅が絶妙でした。
「万両役者の扇」は、今村扇五郎という1人の歌舞伎役者について描かれた小説で、役者としての扇五郎に魅せられた6人の登場人物の語りで物語が進んでいきます。
どの章もおもしろかったですが、1番印象に残っているのは第1章に出てくる扇五郎にガチ恋中の芝居オタク町娘です。早口の語り口調で語られる扇五郎への愛からは、扇五郎の役者としての魅力がひしひしと伝わってきました。なんとかして扇五郎の妻の座に収まってやろうと画策する姿は少し怖いですが、そこまでどっぷり愛されるというのは役者冥利に尽きるのかもしれません。
しかし本当に怖いのは扇五郎自身なんですよねえ。蝉谷さんの小説には芝居のためならなんでもやってやるという芝居狂いがよく登場しますが、扇五郎も例に漏れずその1人。そんな扇五郎の狂気に周りの人々が染められていく様子には鳥肌が立ちました。
1章1章に驚きが詰まっていて、「え!?まさか!?そこで!?」と何度声を出したかわかりません。そして最後の3行でひっくり返りました。ここが1番語りたいところなんですが、ネタバレになるから語れないんです!どうか読んでください!一緒にひっくり返ってください!
「万両役者の扇」は、歌舞伎のおもしろさが隅々まで詰まった名作でした。最後まで読んでから目次に戻ると、各章のタイトルに込められたこだわりに気づきます。これってそういう意味ですよね?(読んだ人にはわかるはず)
蝉谷めぐ実さんの過去作の感想文も書いてます!どの著作もおもしろいので江戸歌舞伎好きは間違いなく楽しめると思います。エンタメ色の強い時代小説なので、時代小説初心者さんにもおすすめです⇩
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