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【ロボット・イン・ザ・ホスピタル】ロボットに権利を与えるべき?

「ロボット・イン・ザ・ガーデン」シリーズ5作目の感想文です!どんどん大きくなるタングとボニーから目が離せません(タングは物理的には大きくなってないけど)。

4巻「ロボット・イン・ザ・ファミリー」の感想文は⇩

ここからは、1巻「ロボット・イン・ザ・ガーデン」(https://amzn.to/3Yx3PBA)2巻「ロボット・イン・ザ・ハウス」(https://amzn.to/4db14KL)3巻「ロボット・イン・ザ・スクール」(https://amzn.to/4fwJYbY)4巻「ロボット・イン・ザ・ファミリー」(https://amzn.to/3WRX3oS)のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

5巻は、コロナ終息後のイギリスが舞台になっています。厳密には近未来SFなのでコロナとは違うウイルスのパンデミックだったかもしれないけど、コロナ禍からインスピレーションを得ていることは間違いないはず。

5巻がイギリスで出版されたのは2022年のことですが、その頃日本はまだ終息したとは言えない状況。イギリスは一足早く日常に戻っていたんだなと思うとお国柄の違いを感じました。

そしてなぜかタングたちの間で「たまごっち」が流行っている!懐かしの「たまごっち」がまさかイギリスにも輸出されていたとは。

5巻ではタングがインターネットショッピングにチャレンジするんですが、そこには思いがけぬ壁が控えていました。そう、インターネットで買い物をする時に求められる「私はロボットではありません」のチェックボックスです。

どうしてロボットは買い物をさせてもらえないの?と困惑するタング。そんなタングを納得させられるだけの理論が組み立てられないベン。笑ってはいけないと思いつつ、つい頬が緩んでしまうシーンでした。

4巻ではイギリスの小学校に送り迎えが必要なことに驚きましたが、なんと遠足や宿泊学習にも親が関わるみたいです。保護者からボランティアを募り、何人かに付き添いとサポートをしてもらうんだとか。たしかに担任の先生1人で30人も40人も引率する日本の方がおかしいのかもとも思いました。

ちなみにこのボランティアをするには「無犯罪証明書」というのが必要で、イギリスでは学校に関わるときだけでなく、雇用主が従業員に提示したり、学生の就業体験を受け入れる時にも必要なんだとか。この辺りはリスク管理がしっかりしていて素晴らしいと思いました。日本では履歴書すら自己申告だから…。

今回タングは初めての宿泊学習に参加し、ベンが付き添いをすることになりました。ベンはタングの頑張りをこっそり動画に収め、エイミーに送ります。するとエイミーからは、エイミーとボニーが手を叩いてタングを褒めちぎる動画が送られてきます。この一連の流れがかわいすぎて!ああもうチェンバーズ一家大好き!ってなりました。

そしていつの間にか口笛を習得しているタング。それは一体どこからどうやって出している音なんだ…。すごいなタング。

さらにノンユニフォームデーというイベントも初めて知りました。タングの通う学校には制服があるのですが、ノンユニフォームデーは制服ではなく私服で登校します。その代わりに少額の寄付をする日らしいんですが、私服も用意して寄付もしないといけないとなると、親側のメリットはなんだ…?と困惑してしまいました。この辺、イギリスの学校事情に詳しい方がいたら教えて欲しいです。

そして、相変わらずベンの良き父親っぷりにも感激しています。私、お父さんに「何か話したいことはないか?毎日楽しく過ごせてるか?」なんて聞かれたことないな...と読みながら少し古傷が痛みました。いつもタングとボニーを気にかけ、力になろうとするベンが素敵です。

そんなベンも、タングが人間社会に溶け込んでいくことで新たな悩みにぶつかります。それは、人間社会に馴染むために、タングばかりが我慢を強いられることは正しいのか?という疑問でした。なかなか難しい問題です。意思のあるロボットはまだまだ少数派で、彼らの権利は厳密には保証されていません。しかし、ロボットに権利を与えたがる人間は少なそう…。

私もついベンと同じく頭を抱えてしまいましたが、ベンの姉のブライオニーの言葉にハッとしました。タングは子供ではない、人間と同じ権利は与えてもらえない。でもそれはマイナスなことだけではないのです。人間の子供と同じように決められた期間学校に通う必要はなく、自分の習熟度に合わせて学びたいことを学びたい時に学ぶことができるのです。

ベンとエイミーはタングをボニーと同じように扱ってきたけど、必ずしも同じように扱う必要はないのかもしれません。もっとフラットな視点で人間とロボットの違いを見つめることで、タングもボニーも幸せになれるのかもしれないということに気づき、このシリーズの奥深さに唸りました。すごいぞ、デボラ・インストール。

日本人としては嬉しいことに、5巻にも日本のエピソードが登場します。それはガンダム!イギリスの博物館にガンダムがやってきます。戦う巨大ロボットに興味を持つロボットのタングという図はなかなかシュールでした。

4巻で登場するミセス・カッカーとボニーの絆も外せません。社会的には変わり者同士のこの2人の、年の差を超えた心のつながりが素敵です。

同じ絆でいうと、ベンとブライオニーの姉弟愛も良いなと思いました。ベンにとってブライオニーは口うるさい姉ですが、それでもブライオニーが家族とうまくいかなくなった時は全面的に姉の味方をします。なんでも相談できていつでも力になってくれるきょうだいっていいなと思いました。

ラストにはタングが思春期に突入したことを匂わせる描写があります。飛び級で上の学校に編入したタング。カフェでのアルバイトも始めます。同時に自分のアイデンティティに疑問を持ち始めたり、初恋らしきものが芽生えたり…。これからもタングの毎日から目が離せません!

次巻はタングティーンエイジャー編かな?


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