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黄昏に見る
あなたは誰? とつぶやいて 私は誰? と言葉が聞こえる。わからないわ、とささやいて、わからないの、とその繰り返し。
私が目にしている光景は間違いなく現実に違いないのだろうけれど、私が今ここにいる真実は、本当に現実なのかわからない。
寂しいとき、楽しいとき、悲しいとき、嬉しいとき、この感情は本物だと思う。私がそう感じている、真実だと。でも、その私は本物? 存在している?
それは、私ではわからない。
それは、誰ならわかること?
それを知りたいと願う心が存在していることさえまやかしかもしれないと、証明できない不安に足場がぐらついてしまう。そうして、
私は今日も、夕暮れを買う。夕暮れの、黄昏に身を潜めて、曖昧な線に何かをつかみたい、と。そのために、私は、夕暮れを買う。
偶然見つけた、旧世代の遺物。
現代の完全な天候制御と違って、これはただの精巧な幻灯。そもそも、天候に直接作用するものではなく、あくまでその空気、雰囲気が伝わるだけの、幻灯。
夕暮れが、部屋を包む。薄ぼんやりとした空気に、気配が満ちる。
そこにいるのは私かもしれない。そこにいるのはあなたかもしれない。それが誰かもわからずに、私は今日も、夕暮れの中を生きている。それを確かめたくて、夕暮れの中を生きている。スクリーンが消える。幻がゆれる。私は、どこにいる……。
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