実のない話し
目が覚めると、頭痛こそしないものの昨日飲んだビールとワインが体に残っている感じがあり、胸の辺りが熱い。日本酒に手を出さなくてよかった、と思いながら、鈍い思考にまだ薄暗い朝はほどよく私を包んでくれた。
のっそりと体を起こしてそのまま動かずに ぼぅ とする。昨日の酒と共に会話がまだ耳に残っているようで、思わず目を閉じて聞き入ってみる。
あぁ、なんて実のない話しなのだろう。
私は思わず苦笑してしまい、昨日もそうしたなぁ、と思いながら口に手を当てて心の底から笑っているのがわかる。
昨日は久しぶりに前職の同僚たちと飲みに出かけたのだ。なかなか集まる機会もなく、お互いの生活のリズムも合わない中で、うまいこと調整してようやく実を結んだ会であった。
そのときにも話していたが
「あれ? 今日なんの話しをしていたっけ?」
と、みんなで思い出せず、そんな中身のない馬鹿話しがなんとも言えずおかしくて、
「そんなのもいいよねぇ」
なんて、言ってたなぁ。
仕事の話しだとか、恋愛の話しだとか、そんな込み入ったことではなくて、すぐに忘れてしまうような、けれど楽しくて、思わず笑ってしまうような、そんな話しができたこと。あぁ、今、心の底から笑えているな、なんて感じられたこと。それでいて騒いでいるわけではない。
そんなこと当たり前の人たちもいるのだと思うけれど、私にとってはこうした時間、そうあるものではない。本当に、久しぶりに、そんな時間を過ごせたと思う。
未だ残る酒の余韻に昨日の時間をブレンドして浸りながら、私はもう一度、横になった。
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