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部屋に ひとり

 春を通り越して夏のような日差しに辟易しながら、無理やり遠出した買いものが終わる。汗だくになりながら帰宅し、全裸になりたい気持ちをぐっとこらえて さっと シャワーを浴びて着替える。それでも暑さはぬぐえない。
 まだまだ夜まで長いと感じられているが、ようやく夕暮れの涼やかな風が窓から部屋に通り抜けて、裸への欲は消え去ったように、感じられた。

 静けさとは無縁な強風がその存在を知らしめて、それ以外、何も音がないことに、やはり静寂を覚える。

 まわりに、民家はあれど、人通りの少ない場所であるし、車なんてもっと通らない。それでいて、野生動物たちがいるような自然があるわけでもない。
 その感じが気に入って、ここを選んだのだけれど。

 あぁ、まただ。

 この、無性な、切なさは何だろう。
 この、無性な、空しさは何だろう。

 勝手に溢れ出て、疼き、指が自然に向かってしまう。

 このごろ、特に、ひどい。

 毎日のように、こんなことばかりしている。
 制御できない自分に、嫌気がさす。嫌気がさすし、いやしい人間のように思えて仕方なくなる。
 そのうち、誰もいいから誰かに身をゆだねてしまいそうで、それが怖くもあった。

 どうしたら、いいのだろう。

 こんなこと、相談できる人もいない。
 ほかの人は、どうなんだろう。
 それも、怖くて、聞けない。
 誰にも、言うつもりもない。

 まだ、夜まで長い。
 吐息が、漏れる。
 ため息が、混じる。
 まだ、夜までは。

 ……夜になったからといって、解消するわけでもない。
 ただ、もう、眠れる。
 朝が来る。
 そうして、また――

 乾く、渇く、濡れる。
 指が、いつの間にか、触れる。
 
 静けさに、部屋にひとり、音の響く、胸が疼く。

 いつまでも満たされないまま。

 まだ、夜までも、遠い。
 

いつも、ありがとうございます。 何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。