誰もいない
つまらないほどに明るい世界がまぶしくて、私は目を伏せた。
なんで、こんなに世界は明るいんだろう。なんで、寸分違わず、日は出てくるのだろう。
明るくなければ、見えないのに。
あぁ、明けない夜なんてない、なんて、なんて悲しいことだろう。
薄闇の、あの感じが好きだ。あの、ぼやけて、曖昧で、本当も嘘も紛れてしまっているような、あの感じ。
あんな世界がずっと続けばいいのに。
そんなことを願ってもなお、世界は変わることなく回り続けている。朝も来れば、夜も来る。どちらも、来ないことがない。せいぜい、空模様が違っているくらいなものだ。けれど、そんなこと、本質にはなんら影響を与えない。
白日に晒されるようなこの明るい世界が嫌い。何でもかんでも照らして、ばかみたい。なんてつまらない。
誰も、私のことなんて見なくていい。見ないでいい。…‥私だって、何にも見たくない。
あぁ、なんで、なんで、こんなにも悲しいのに、世界は変わらないんだろう。誰の悲しみだって、何にも感じることもなく飲みこんで、立ち位置を少しだって変えようとしない。
無、だ。無、なんだ。
世界はあまりに、無関心で、無感動で、誰の想いだって無視をして、まるで何にもないみたい。無、でしかない。なんだって、どうだって、いいんだ。
こんな世界に生きているなんて……。
あぁ、それとも、私もいっそこの世界みたいに、無になってしまえばいいのかな。そのほうが、何にも感じないほうが、いいのかな。
あぁ、また夜が来る。そのうち、夜が来る。私はそれだけでも、いい。とりあえず、いい。また朝が来てしまう、けれど。朝は来てしまうけれど。
そう思ってなければ、だめだ、だめだ。
悲しくなって、しまうから。
世界は何にも助けてくれない、手を差し伸べてはくれない。そんなこと、わかっている。わかっている、から。
あぁ、本当……。
私は目を伏せたまま、静かに袖で、瞳を隠した。