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技術者も広報活動に取り組んでいる話

このブログは2024年のブレインパッドのアドベントカレンダー2日目の記事です。

はじめに

株式会社ブレインパッドでデータサイエンティストをしているasanoです。

ブレインパッドは「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をパーパスとしている2004年創業のデータサイエンスの会社です。

大きく分けて2つの事業をしており、レコエンドエンジンなどを開発するプロダクトサービスと、クライアントのDXを推進するプロフェッショナルサービスをしています。

私は後者の事業にデータサイエンティスト携わっており、一般的に「受託分析」と表現される仕事をしています。しかし、この仕事は社外から見た際に会社や仕事については見えづらい性質があると思います。

そういった課題に向き合うためにも、ブレインパッドではデータサイエンティスト自らも技術広報的な活動をしています。

本ブログではブレインパッドの宣伝を兼ねつつ、技術者自身が発信者となって広報活動をする際の参考になればと思い、実際にデータサイエンティストが主体となり取り組んでいる活動を発信者目線で紹介します。

取り組み1:podcast番組「白金鉱業.FM」

データサイエンスの話題を中心に音声配信をしています。

参考: 白金鉱業.FMのX/Twitterアカウント

トークテーマは大きく分けて3つです。

  • ハードスキル:生成AIの論文解説など

  • ソフトスキル:プロジェクトマネジメントなど

  • 組織カルチャー:社内勉強会について、働いていて楽しいこと・大変なこと

技術者自身がトークテーマを選定して話すため、技術者に刺さる内容を発信できたり、実際にどういった人が働いているか雰囲気を含めて伝わる点が良いと考えています。

また、トーク内容はパーソナリティーのopinionというよりも、データサイエンス界隈の為になるinformationの話の割合が多くなるように心がけています。
ブレインパッドという会社の看板がなかったとしても成立する、そして楽しく聞けて役に立つ内容のほうが、より多くの人に聞いてもらえると考えているためです。
無理に会社をアピールせずとも、真摯に質の良いコンテンツを目指すことで結果的に会社のポジティブな宣伝になると考えています。

もちろん組織カルチャーなどを語るうえではopinionや会社独自の要素は欠かせませんが、可能な限り組織づくりに役立つような内容や、キャリアの一例として参考になるようなエピソードになるような意識しています。

どんなことを話しているかをざっくり知りたい方はワードクラウドで振り返る白金鉱業.FM 2020年版2023年版をご参考ください。

発信までの手順

少し細かい話ですが、podcastを発する信までの手順について紹介させてください。
下記の流れで進めています。

・トークテーマと収録メンバーの選定、アジェンダを作成
・Zoomで収録、Ferriteで編集
・GitHubで配信
・X/Twitterで告知

トークテーマと収録メンバーの選定、アジェンダを作成
トークテーマにあったメンバー複数人で収録しています。
自分はパーソナリティーの立場ですが、誘われるゲストは簡単なアジェンダを用意して話すだけでコンテンツが完成するため、慣れてくるとテックブログなどで文章を推敲しながら書き上げるよりも低コストで済みます。

余談ですが、ブレインパッドはpodcastと業務内容の噛み合いがうまくいっている会社だと思います。
例えばクライアントワークで人と話す機会も多いことからか、話すことが上手だったり抵抗がない人が多いように思います。実際に出演依頼のお声がけをしても快く受け入れてもらえるのと、必要以上にカットする必要もなく編集コストが低く済んでいます。
そして受託分析という性質から外に情報を出すためにはある程度抽象化する必要があります。それが功を奏して、専門的なテーマありつつも、聞き手の間口の広さを確保できていると実感しています。

Zoomで収録、Ferriteで編集
話を戻して、次の手順である収録と編集についてです。
白金鉱業FMはZoomで収録し、録音データをFerrite(有料、買い切り)で編集した音声データを配信しています。ツールやソフトはいくつか使ってみましたが、2024年12月現在はこの形に落ち着きました。
私は有料のものを利用していますが、無料でも収録・編集が可能です。例えばブラウザで収録できるRiverSideやMacに標準搭載されているDAWソフトGarageBandを使うといった選択肢があります。

音声の編集作業はブレもありますが、大体収録時間の6倍くらい、30分の収録なら3時間くらいかけています。

GitHubで配信
編集した音声データはYattecastからフォークしたGitHubを使って配信しています。シンプルなページ構成とGitHub.ioがそのままpodcast番組のホームページになることを気に入って使っています。
2024年12月現在であればSpotify for Creatorsを利用するのが一般的だと思いますので、特別な理由やこだわりがなければこちらを推奨します。

X/Twitterで告知
エピソードをリリースしたら番組のX/Twitterアカウントで告知しています。
podcastはその性質上、リスナー側から新番組の発掘が難しいと考えているためタッチポイントを増やすためにもX/Twitterアカウントを運営しています。
告知の際は、Whisperで文字起こしを行い、そのデータからワードクラウドを作って目を惹くような工夫をしています。

取り組み2:Meetupイベント「白金鉱業Meetup」

データサイエンティストの有志で社外向けの勉強会兼懇親会を実施しています。

つまり、オンラインではpodcastにて白金鉱業.FMを配信し、オフラインでは白金鉱業Meetupを開催するという形で、複数のチャネルを用意していることになります。

ちなみに、看板に使っている「白金鉱業」という名前は、ブレインパッドが白金台にあるデータマイニング(鉱業)の会社であったことが名前の元ネタになっています。
※ 2024年12月現在は六本木一丁目にオフィスを移転しています。

データサイエンティストやそれに類するデータ系職種であればどなたでもお申し込みいただけるイベントです。データサイエンスのコミュニティづくりを目的にしていることから、懇親会でのリアルでの交流も重要視しているためオフラインのみの開催としています。

おかげさまで2024年12月に16回目の開催を迎え、connpassのメンバーも
1,000人に到達しました。

毎回「効果検証」や「数理最適化」などデータサイエンスに関するテーマで企画し、登壇者を社内外から募っています。「データサイエンス」だとテーマが広すぎることから、一段具体化したテーマで開催しています。これには次のようなメリットがあると考えています。

・主催している会社を知らずとも、テーマが自分に合うかが参加の決め手になる
・そのテーマに興味がある人が集まるため、より深い内容の発表もできる
※ 初学者向け発表枠も用意しているため、参加ハードルを下げる工夫もしています
・テーマによって参加メンバーが入れ替わるため、長い目でみるとより多くの方に参加していただける
・テーマ自体が会社のケイパビリティのひとつであるため、それをわかりやすく伝えることができる

また、イベント自体には、会社の採用やプレゼンス向上もねらいではあるのですが、コミュティをつくるというスタンスのほうが参加ハードルが低くなり、結果的に多くの方と接点を持てて採用にも繋がりやすいと考えています。


そしてイベントは年間でスケジュールを仮決めし、それに沿って次回と次々回の2回分の企画を常に並行して走らせています。

具体的な開催手順は、fandさんのGithubなどにまとまっているため、ここでは開催するにあたり特に山場だと感じる2点をピックアップしたいと思います。

山場1:登壇者のブッキング

イベントには登壇者がいないと始まりません。イベント開催の3ヶ月前には登壇者を探し始めています。

直近の回では社内から2名、社外から2名の合計4名の方に登壇していただいています。


また社外の方にご登壇していただくと、内容にもバラエティが出てイベントとしての魅力が上がると考えています。

幸いなことに、ブレインパッドは受託分析という性質上、様々なクライアントと接点があるため、仕事の延長線上でお声がけがしやすかったり、社外の方が登壇することにも違和感がないことが功を奏しているように思います。

また、こういったイベントは「テーマ」か「登壇者」のどちらを先に決めるかは悩ましいと思います。私の場合はどちらも並行に進めながら現実的なラインを探りつつ決めています。

ブッキングの際の大事な心構えとして、日付から逆算してとにかく早めに動くこと、日頃から社内外問わずこの人に登壇してもらいたいというアンテナを貼っておくことが大事に思います。

余談ですが、来年は私自身も登壇しようと考えています。

山場2:集客

登壇者と参加者どちらの目線であっても、多くの方が参加しているイベントの方が活気があって楽しいはずと考えています。そのため集客は非常に気にしているポイントです。

集客数=イベントを認知した人数×CVRで表せると考えています。
※ここでいうCVRは「イベントを認知した人が、その後申し込みする割合」を指します。
この思想をもとに自分自身がどういったイベントなら参加したいかを考えながら、企画の段階から工夫できる部分を探します。

自分がイベントに参加するときの観点
・テーマ
・発表内容
・事前知識
・登壇者
・主催者、主催の会社
・日程
・開催場所

いくつかピックアップして解説します。

テーマ
言葉にすると当たり前ですが、自分の場合は純粋に興味のある分野または日頃の仕事や課題感に近い内容であれば参加することが多いです。
日頃仕事で感じるマーケットのニーズをもとにニッチすぎるテーマは避けるようにしています。

発表内容
発表内容はビジネス・テクニカル両方のテーマを含めるようにしています。
どちらかに絞ると必要以上に参加対象者を狭めてしまうためです。

事前知識
参加ハードルを決める要素に事前知識の有無があると考えています。
例えば今度開催する「数理最適化」のテーマは、間口が狭めのテーマであるため、初学者向けの発表枠を用意することで事前知識がない方でも参加できる設計にしました。

日程
可能な限り木曜の夜に開催しています。
週の初めは仕事のペースに乗っており、金曜日は飲み会と被るだろうという考えです。
年末年始や年度末など仕事が慌ただしくなるような時期の開催は避けるようにしています。

認知を高めるために
もちろん集客にはCVRだけでなく認知を高めることも必要で、日頃から対外発信を心がけたり、登壇者の方のネームバリューを頼りにしたり、podcastで宣伝も兼ねたエピソードをリリースしたりなどもしています。

なお、白金鉱業MeetupのconpassページへのアクセスはX/Twitterの流入がほとんどであり、アカウントのフォロワー数と拡散力は認知に大きく影響します。

取り組み3:資料公開プロジェクト「OpenBrainPad」

名前の通りブレインパッドをもっとオープンにしていく取り組みです。

受け手にとってpodcastを聴いたりイベントに参加するには一定の時間とエネルギーが必要であるため、ドキュメントでの発信もしています。
新卒研修資料から個人の振り返りブログなど、かっちりした資料からフランクなお気持ちまで幅広く発信していますが、一定の具体性を持たせるようにしています。

もちろん会社のテックブログや公式ブログもありますが、それだけではカバーできないような地に足をつけた内容にすることで、働いている人や雰囲気ができるだけリアルに伝わるような発信を心がけています。

例えばですが、ただ単に会社紹介の資料に「社内勉強会を年間300回開催しています」だとKPIハックをして見栄えをよくすることはできてしまったり、具体性に欠けると考えたため、中身が伴っていることも伝えたく勉強会の一覧と資料を公開しました。

取り組みごとの特色

ここまで紹介したようにpodcastによる音声配信、Meetupでリアルイベントを開催、研修資料などのドキュメント公開と取り組んでいますが、それぞれに良いところがあり、物足りない部分を相互に補えていると考えています。

受け手の立場になると下記のように整理できると思います。

受け手目線での分類

また、発信者の立場からすると次のように分類できると思います。

発信者目線での分類

例えばMeetupイベントは懇親会の飲食費も含めれば多少の費用は発生しますが、同期的にリアルで話せる場という点では、深みのあるコンテンツだと考えています。
一方で影響力の広さには欠けたり、参加者の時間を拘束する必要があります。
podcastやドキュメントなどの非同期のストック型の発信をすることでそれらを補うことができます。またそれぞれのコンテンツで相互流入を出来るのも良い点です。

取り組み成果

採用に繋がっている

これらの取り組みを通した成果ですが、まず採用に直結しています。
面接などでの会社を知ったきっかけにこれらの取り組みを挙げていただいたり、実際に今年もpodcastのリスナーの方が入社してくださりました。
過去にもMeetupイベントでは年間60万円弱で2人採用に至るなど、転職エージェントの費用などを考えると安価でマッチ度が高い方に入社していただいたと考えています。

外部メディアへの露出やコラボ
OpenBrainPadで公開した統計学の資料がITmediaさんに取り上げられたり、日経リスキリングさんにインタビューしてもらいました。

ほかにも白金鉱業FMが、データサイエンスpodcast番組「となりのデータ分析屋さん」とコラボもしています。

フォロワー数の増加

X/TwitterアカウントのフォロワーはOpenBrainPadが2,000名超え、白金鉱業fmは約1,500名です。
白金鉱業Meetupはconnpass上のメンバーが1,000名になりました。

もちろん重複もあると思いますが、どの取り組みも着実に数字を伸ばしており、一定の手応えを感じています。

ほかのイベントで話のきっかけになる

ありがたいことに、ほかのMeetupやイベントに行ったときに「資料を見ました」「podcastを聴いています」などしてお声がけいただくことがあります。こういった際の会話のきっかけにもなっています。

詳細情報として渡せる

面接での逆質問で「仕事のやりがいや大変さってなんですか?」「社内勉強会ってどんな感じですか?」といったよくある質問に対してその場での回答以上の情報を提供できています。
n=1の意見としての回答したあとに、「podcastのこの回でほかの社員とも話しているから移動中とかにでも気軽に聴いてね」といって渡すのが自分の中での定番ムーブになっています。

継続要因

企業文化と感情報酬

これらの継続要因ですが、ブレインパッドのValuesのひとつに「行動を起こす」があり、こういった行動を賞賛したり、温かい言葉をかける文化があるからだと思います。
もちろん金銭的なインセンティブも重要ですが「人間は勘定と感情で動く生き物」であるため、どちらも必要に思います。
また、金銭的な報酬は得てしてゼロサムになりがちですが、賞賛するような感情報酬はお互いに与え合える点が持続的で優れている点だと考えています。

成功事例の積み重ねを刷り込む

採用に繋がったりや外部メディアに取り上げられたなど、なにかしらポジティブな出来事に繋がったときは社内でも取り上げるようにしています。
こういった活動は成果や成功が見えづらいため、積極的にアピールしていき、自他ともに成功事例が積み重なっていることを実感するのが大事に思います。

主催者、参加者本人が楽しむ

ここまで固いことを書きましたが、一番大事なことは「当事者が楽しむこと」だと思います。
もちろん一定のエネルギーや時間が必要であるため、継続には内発的な動機が必須だと考えています。
楽しいイベントや発信することをモチベーションに、結果的に採用などに繋がればというスタンスで取り組んでいます。

さいごに

これらの取り組みの立ち上げについてより詳しく知りたい方は先輩であるysdytさん(2024年12月現在は10X社に所属)の記事もご参考ください。

そしてこれからも発信していくので、ぜひX/Twitterのフォローやconnpassのチェック&ご参加をよろしくお願いします!


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