息子の目は先を見ていた。
念願の背番号をもらった高2長男だが、公式戦を目前に、ベンチ入りメンバーの練習は一層厳しさを増し、帰ってきてもまったく元気がない。
ご飯を食べずに寝てしまうこともしばしば。
「高校野球で、一度はベンチ入りしたということが、これからの人生で自信になると思う」
と、他人事のようにつぶやく。
「いやいや。秋大会はこれからだし、来年の春だって、夏だってあるのに、何を今から思い出にしちゃってるんだよ!」
と、笑い飛ばす私。
練習していく中で、レギュラーとの差を痛感しているのかもしれない。
ベンチ入りできなかったメンバーたちの追い上げに怯えているのかもしれない。
少し自信を失っているようにも見える息子。
***
昨日、長男が所属している野球部は、秋大会の支部予選、ブロック決勝を賭けた戦いに臨んだ。
結果は僅差での敗戦。背番号をもらった息子だったが、秋大会での試合出場は無かった。暑苦しい防具を付けて忙しくブルペンキャッチャーを務めた息子。あっけなく、今年の公式戦は終わってしまった。
***
昨夜、帰ってきた息子は、案外、ケロッとしていた。
「強くないな。うちのチーム」
「キャッチャー楽しいかも」
「ピッチャーもいいかも」
口数が多い。
外野手の息子は、来春、キャッチャーになっているかもしれないし、ピッチャーになっているかもしれない。
負けて、モチベーションが落ちると心配していたが、ノー天気で良かった。
まだまだ楽しみは尽きない。
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