11月3日のこと
11月3日は何の日か、と言われたら世間的には文化の日でしょうか。
他にも○○の日というのがいくつかあるようですね。
しかし私にとってこの日はちょっと思い入れのある日です。
それは学生の頃の部活動、陸上部の短距離種目最後の試合がある日ということ。
試合と言っても、勝ち負けがあるわけではなく、いわゆる記録会というやつ。
私の住んでいた地域では、短距離選手にとって毎年この日がその年最後の記録会。
この日以降は4月まで試合も記録会もなく、いわゆるオフシーズンとなります。
苦しい苦しい冬季練習の始まりですね。
久しぶりにふと思い出したので、部活の記憶について書き出してみます。
陸上部の1年
陸上部のシーズンは主に春・夏です。
特に高校生にとって最高の舞台であるインターハイは8月。
その舞台に向けて5月ごろには県大会が開催されます。
県大会を突破すると地方大会。私の場合は東海大会ですね。それが7月ごろにあります。
全国常連組はピークを8月に持っていきます。
県大会余裕組は7月を、一般高校生だった私は5月にピークを合わせていきます。
4月。新入生にとっては高校生活の始まり。体格が全く違う先輩と同じ練習を何とかこなし、身体をバキバキにしながら高校陸上部のきつさを体感します。
2年生に以降にとっては冬季練習から解放され、練習のメニューはスピード練習が中心になります。冬季練習で仕上げた筋肉に、早い動きを覚えさせる。神経のトレーニングですね。ちなみに1年生を見て2~3年生は「ほっそ」と思うことが多いと思います。
冬季練習が効果的であれば、ここから始まる記録会や試合で如実に成果が表れます。一方で、急にスピード=負荷がかかると筋肉や腱にダメージが生じる、つまり怪我をする可能性も高まる時期です。ここで怪我をしてしまうと、5月以降の本番に影響大。
テンションが上がる時期ですが、落ち着いて身体を慣らしていく時期でもあります。
5月。新入生にとっては初めての試合。ほとんどの新入生は試合には出ず、記録係や試合の補助員をおこないます。一部の中学でスターだった選手が鮮烈なデビューを飾る時期でもあります。高校生の足の速さに改めて驚きます。
2年生以上にとっては大事な大会。周りもレベルアップしている時期なので、昨年までのデータはとりあえず収集し直し。
インハイ予選までの間には数回の記録会と試合があるので、そこで周りの成長を確かめる時期でもあります。
5月下旬。いよいよインハイ予選。泣いても笑っても、3年生にとっては全国に繋がる最後の試合と言ってもいいでしょう。
6~8月。インハイ予選で敗退した選手は基本的に引退する場合が多いでしょう。一部の選手はその後の国体予選や記録会で自己ベストを出すことを目指します。
インハイ予選を勝ち上がっていくと、地方大会に出場。それまでの間は記録会などに出ながら調子を上げていきます。
チームとしては新体制の様相。2年生が中心となって練習を仕切り、残った3年生は自主練や試合に向けた調整となります。
そしてインハイ。夢の舞台。私は立ったことがないのでわかりませんが、ここで発揮される数秒、数十秒、数分に向けて3年間の努力の結果が表現されます。
9月~11月。1、2年生が中心となったチームで最初の試合がこの時期です。2年生取っては目の上のたん瘤がなくなり、1年生にとっては活躍のチャンスとなります。それまでの他校のバランスが刷新されるので、リレーなどのチーム競技では強豪校の陥落や、中堅校の躍進など、入れ替わりがある面白い時期です。新人大会っておもしろいよね。
そして件の11月3日が最後の記録会。ここは気候もちょうどよく、割と記録が望める機会だと思います。一方で「勝って次へ」というモチベーションはなく、ひたすら自己ベストを狙うことになるので、人によっては難しいのかも。
12月~3月。地獄。この時期はほんとに吐くほど追い込むような練習がてんこ盛りです。この時期までは100~200mを数本×数セットしフォームを確認するとか、ウエイトトレーニングも軽いものを素早く繰り替えすといったものが中心になっていたわけですが、様相が一転します。
タイヤを引く、押す、200~400mに距離が延びる、坂道を駆け上がる、ウエイトは自分の限界を引き上げるために重さを求めていく・・・。
さらに地獄の冬季合宿。県内の学校が集まり、陸の孤島に缶詰になります。浜辺でダッシュし、山道を駆け上がり、起伏のある芝生を往復する・・・。
何度足を攣って突っ伏したか。何度ご飯を食べられなくなったか。
この地獄を乗り越え、4月以降のシーズンが始まっていきます。この切り替えの時期はマジで分水嶺。短いダッシュができるのがうれしくて、クラウチングスタートから両足を攣って地面にビターン。ズボンが半分脱げて4分の1尻状態、雨の日で、他校のマネージャーに助けられて恥ずかしい思いをした思い出があります。大事には至りませんでしたが、気温が低い中で急にダッシュをすると筋肉がついてこられないのです。
陸上生活最後の11月3日
東海大会での奮戦虚しくリレーで準決勝止まりだった私はしかし、100mで10秒台を出すために残って練習を続けていました。
しかしやっぱり、モチベーションはそれ以前の自分とは違い、それを自覚しても戻すことはできず、悶々としながら練習に臨んでいました。
さらに思春期真っただ中。付き合っていた恋人もいて、土曜日の練習なんて上の空で、午後から遊ぶことに気持ちがいってしまい・・・。
まあ9月には恋人とは別れ、その別れ方も相まってメンタル不調になったわけですが。
そんな中で迎えた11月3日。記録会であるため予選も決勝もなく、一発本番です。
クラウチングスタートからの一歩目でわかった。
「あっ、これ駄目だ」
踏み出した右足に腰が乗らない。すると体重移動が上手くいかない。体重が乗らないから地面からの反発が弱く推進力が生まれない。そう悟ると同時に力みが生じる。顔を挙げるタイミングも何かしっくりこない。というより、一歩目でそう理解した瞬間に気持ちが折れている。
結果は不完全燃焼。何とも言えない締めくくり。
一方でまあここまでのことを考えたらこんなもんか、という納得もあり。
中学生からの6年間お世話になった競技場のトラックに頭を下げ、誰に見送られるわけでもなく静かに陸上競技人生は幕を下ろしたわけでした。
まとめ
久しぶりに部活のことを思い出したので書いてみました。
やっぱり今でも思い出す。もう15年も前のことなのにね。過去の栄光に縋っているわけではないけれど、それでもいい思い出だと思っています。
当時、その経験や時間がどれほど有意義で、有限で、貴重なものかわかっていればと思うけれど、それを理解している学生の方が少ないのでしょうね。
こういうこと言うとおじさんになったんだなと思う。
今学生のあなた、おじさんは貴重に思えよと言っているわけではないですよ。あなたなりの過ごし方でもちろん問題ありません。
地獄のように思う人もいるでしょうが、人生学生時代が終わってからの方が長いのです。渦中にあるとそう思えないでしょうが、答えを出すのは早計かもしれません。まあ渦中の苦しさに対して何の救いにもならない言葉ではありますが。
話が逸れた。そんな11月3日が明日ですね。
ネットで見てみると、今も変わらず記録会があるじゃないですか。
それぞれの11月3日を迎えますね。記録会に出る全員が、とはいかないでしょうが、それまでの努力が報われたと思えるような結果が出るといいですね。
そうならなくても、こんなもんかと納得出来たら重畳です。
私にとっての11月3日に限らず、どの1日にもそれぞれの思い出があると思うと面白いですね。
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