見出し画像

校長室通信HAPPINESS ~センスを磨く

どこにでもいるセンスの良い人たち…

 どんな仕事にも、どんな分野にも、センスが良いと言われる人はいるものです。それは教師の世界も同じです。これまでたくさんの学校で勤務してきましたが、どこの学校にも「この人、教師としてのセンスが抜群だなあ…」と思えるような先生がいました。例えば、他の先生と同じことを教えているのに、その先生が教えるととってもわかりやすい、子どもを惹きつける教材や教具をさらりと準備して、いつも授業がおもしろい、…こんな先生に出会うと「ああ、私にもあんなセンスがあったらなあ…」とつい思ってしまいます。
 そんなとき、「センスって生まれつき持っているもので、努力でどうにかなるようなものじゃない」と思って、何となく諦めてしまうもの。でももし、考え方次第で自分のセンスを高めていくことができるとしたら…今回はそんなお得なお話です。

センスを高める3つの原則

 そもそも「センスが良い」とはどういうことなんでしょうか。
 熊本県のゆるキャラ「くまもん」をデザインしたことで一躍有名になった水野学氏は、著書の中で次のように述べています。
 「『センスの良さ』とは、数値化できない事象の良しあしを判断し、最適化する能力のこと」
 わかりやすく言うと、慣習やルールを超えて、その場の空気にぴったり合った行動がとれる柔軟性や瞬発力に優れている、ということでしょうか。
 そんな、人とは違うきらりと光るセンスを磨くために、次の3つのことを心がけてみましょう。
【原則1 普通を知ること】 
 センスを感じるアイデアやひらめき、行動は「0」から突然生み出されるわけではありません。普通を知っているからこそ生まれるイレギュラー、それがセンスです。おいしい「キムチチャーハン」を作れる人は、普通の「チャーハン」の作り方を知っておかなければなりません。センスが感じられない人はここを勘違いして、規格外なことばかりを強調しがちです。だから周りから認められません。「普通のライン」をちゃんと知った上で、多角的、多面的にものごとを図っていく…そうすることで、ありとあらゆるものを作り出せる可能性が高まってきます。スマホの誕生は革命的ですが、実は「携帯電話」と「パソコン」という「2つの普通」を合体させただけなんです。凄いのはその2つを合体させたセンスです。
【原則 2 質の高い経験と知識のインプットを習慣化する】 
 休日に美術館に行って名画を鑑賞する。そんなことを何回かしていると、名画と呼ばれている絵にはいくつかの共通点があることにうっすら気がつきます。例えば素敵な風景画の多くが、絵の半分を空が占めているとか、絵の中にある対象物が三角形の構図で描かれている、とかです。そんなことが分かってくると、子どもたちへの絵画指導で、センスのあるアドバイスを言うことができるようになったりします。そのためには、流行している本や雑誌を普段からパラパラとめくったり、新聞の情報にざっとでも毎日目を通したり、電車の中刷り広告のデザインを何となく眺めたりと、質の高い経験や知識のインプットを習慣化しておくと、いざというときにセンスの良いアイデアがポッと浮かんだりします。
【原則 3 目の前で起きた事象の本質を捉え、それを他分野で活用する】  
 例えばセンスの良い子って、影踏み鬼ごっこから「太陽と地球の動き」が閃いたり、アリの巣の様子を見て「役割分担の重要性」に気づいたりします。センスの良い教師は、ニュース番組のアナウンサーの話し方から「表現力を指導するポイント」に気づいたり、100円ショップをブラブラしながら、おしゃれで機能的な教室を考えついたりします。センスの良いビジネスマンは、休日に趣味でやっている少年サッカーのコーチの経験から、部下の人材育成のポイントに気づいたりします。
 センスの良い人とは、一見無関係な事象を自分が関わっている他の分野に関連づけることができる人のこと。だから生きていく上で、ひとつの分野に固執せず、仕事、趣味、家庭、交友関係と、人生のラインをたくさん持っていたほうが、センスを高める機会はぐんと広がるはずです。
 
 結論。「普通」を知り、質の高い経験や知識を積み重ね、あらゆる事象を自分事として考えながらセンスを磨いていきましょう。高い意識を持っていれば、周りの人に「センス良いね!」と言われる日は、そう遠くはない!(…と思います)。

 ※参考文献 「センスは知識から始まる」水野学 著  朝日新聞出版

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?