『介護相談援助職への暴力とハラスメント』という本を読んだので、感想を共有するノート
『介護相談援助職への暴力とハラスメント』という本を読んだので、感想を共有するノート
ちょっとびっくりしたのは、相談員への暴力などは『クライエントバイオレンス』としてアメリカでは固有名詞のついた研究が1980年代からなされている。そんな話社福の専門学校とかでしてもらったことないが・・・
この本をざっくり要約してみたい。
・読んで驚いた点その1
統計上、他の仕事と比べてもソーシャルワーカーや福祉職はカスハラを受ける割合が高い。
例えばイギリスにおける2017年の調査。
業務中に何らかの暴力を受けた割合を調査している。
保安業務(警察・警備)が1位だが、2位は介護・看護・相談員3位は医師、歯科医師
この調査で『なんらかの暴力を受けた割合』に注目すると1位である保安業務は11.4%、2位の介護・看護・相談員は5%程度とダブルスコアだが、3位は医師歯科医師(3,3%)と福祉医療分野としてまとめると保安業務といい勝負である。
・読んで驚いた点その2
作者がしたインタビュー調査の範囲内では、カスハラについて【疾患からくるのでしょうがない】【専門的力量が問われる】などと答えた人の大半はカスハラを受けたことがなく、カスハラに対して【安全や人権にかかわる】【予防が必要、離職につながる】、と答えた大半はカスハラの経験がある。
はい、見出しのとおりですが、カスハラに対して書面調査を作者が実施。
「カスハラは認知症だししょうがない」とか「職員として上手に対応すればいい」といった返答をした人の中では、カスハラに遭ったことのある人が少ない。
→肯定的な見方をすれば、上手に対応できる人だからこそ、カスハラに遭っていないのかもしれない。また、カスハラ的な利用者の言動を、カスハラとして捉えていないのかもしれない。
逆に否定的な見方をすれば、「そりゃホントのカスハラに遭ったことないからそんなこと言えんねん」という見方もできる。
カスハラに対して「人権の問題だ」などと答えた人に対する考察にも同様のことが言える。
・読んで驚いた点その3
アメリカでは1980年代からソーシャルワーカーに対するクライエント、家族からの暴力行為をクライエントバイオレンスとして概念化されている。
ただし、統一された定義はないらしいのでそこまで有名な概念でもないのかもしれない。 とにかく、だいたい「クライエント(以前のクライエントも含む)やその家族、関係者から受けた『意図的な所有物の窃盗・損害、脅迫(訴訟をちらつかせるも含む。)』、『身体的暴力(未遂も含む)』」をクライエントバイオレンスと呼ぶようである。
冒頭でも書いたが、特にこうした教育を受けた記憶はない。
・読んで驚いた点その4
児童福祉分野のクライエントバイオレンスはエグい
フロリダ州の研究で児童分野のソーシャルワーカーにアンケート。1300件程度の回答があった。
76%の相談員が雇用から2~3か月でクライエントバイオレンスを受けている。
本書では語られていないが、クライエントバイオレンスをうけて、早々に辞めてしまった人はこのアンケートを受けられないわけなので、潜在的にはさらにクライエントバイオレンスの被害者がいるのだろう。
その点では高齢者分野は相談者界隈では被害にあいにく分野のようである。(アメリカではの話かもしれないが)
・読んで驚いた点その5
この本ではクライエントバイオレンスへの対応がたくさん載っている!
問題なのはやはり、クライエントバイオレンスに対してどんな対応を取るべきか。である、組織としての対応のしかた、個人としての対応の仕方が載っているのでおすすめである。
いくつかためになった例をあげてみます。
①中立の立場を保ち、具体的な方法で明白なことについて意見を述べることから始める。
(個人の感想や曖昧な返答は噛みつかれがち・・・とはいえそれ無しで会話するのもむずかしい・・・)
②直接のアイコンタクトを持続することは避ける。
(これは座る場所を気をつけなければ行けない案件ですね・・・・)
③相手の言動をひたすら聞く、受け入れるということをしない。
(むずい・・・が、大切であることはわかる。)
④相手が暴言や不合理な訴えを繰り返す場合、「今日はこれ以上ご一緒に話していくことはむずかしいと思いますので、日を改めましょう」などと伝え、面接を終える。
(このフレーズは覚えておきたい。)
特にオチはないのですが、対策のところだけでもさっくり読むと勉強になるので、おすすめである。