シナモンロール屋さんになるまで#02 日本一の道具街
私はかっぱ橋道具街に通勤している。
かっぱ橋道具街とは、日本一のキッチン用品の問屋街だ。食器や調理器具、コック服や赤提灯、食品サンプルまで、食べ物に関わる全てのものが手に入る。
そんなかっぱ橋に、問屋でもない私の会社がオフィスをかまえているのは偶然であるが、今の私にはうってつけである。
今日は仕事を少し早く切り上げて、シナモンロールの包装資材を見て回ることにした。
1軒目の包装資材屋さん「そういう袋はおいてないよ、はーい」
2軒目の包装資材屋さん「うちはおかきの袋専門だからパンはねぇ。あそこにもう一軒あるよ」
教えてもらった3軒目の包装資材屋さん「カステラ用ならあるけど、これ冷凍に使えるのかなぁ」
通りかかった製菓用品屋さん「うちに包装資材はないけど、2軒隣ならあるんじゃないかな。お役に立てずでごめんなさいねぇ」
教えてもらった4軒目の包装資材屋さん「あー袋は2階だよ」
そして2階に上がってようやく、たくさん袋がある売り場に辿り着いた。右も左もわかっていない私のふわっとした相談にも乗ってくださったが、ぴったりのものは見つからず何も買わずに帰ってきてしまった。
いくつかのお店で、こういうものを探してて〜と話すと、そういうのはネットですかねぇ〜と言われた。私ももちろんネットで探していたけれど、日本一の専門街なら、何かもっといい、知らないものがあるんじゃないかと期待していた。やはり時代はそうなのか、私は少し寂しい気持ちなった。けれど店員さんはみな、飄々としていた。きっとあれがプロなのだ。
センチメンタルの押し付けは迷惑だ。ただ「この街と縁ができた私がつくる」ということの意味は、大事にしていきたいと思った。
# かっぱ橋を歩いていたら「kahvi (かはび:コーヒー)」という言葉が耳に入ってきた。旅行中のフィンランド人家族に、つい話しかけた。最近のかっぱ橋はインバウンドで活気づいている。