医療と社会の切っても切れない関係。フリーランス内科医に聞く
フリーで内科・呼吸器科医をされている方とお話しする機会をいただいた。そこで興味深かったのが「患者の社会的な背景と治療は密接に関係している。安定した暮らしがあってはじめて、患者は病気に向き合える」という話。
治療開始の前に立ちはだかる壁
彼女の言う「患者の社会的な背景」というのは、通院できる経済力があるか、治療について専門的な用語を理解できるか、職場や家庭に協力者はいるか、といったこと。結核を専門にする彼女にとって患者の多くは中国やネパールなどアジア圏出身で、各方面でサポートが必要な人が多いという。
「日本で健康診断を受けてはじめて、自分が結核を患っていると気づくケースも少なくない。加えて今現在お金に困っていたり、日本での暮らしに不安を感じていたりしたら病気の治療どころでないのが患者の本音。安心できる環境を整えてやっと治療のスタートラインに立てる」
結核は治療に半年以上かかる病気だ。治療を途中でやめてしまわないためにも、病気以外の部分で患者が抱えている不安をひとつひとつ紐解いていくことが肝となる。
実践例として挙げてくれたのは病院の待合室での過ごし方。患者の普段の生活について保健師がヒアリングすることで、病気以外の悩みや不安を知り、病気を取り囲む状況全体にアプローチしようという試みだ。
「誰でも理解できる」をスタンダードに
医療現場における「やさしい日本語」の必要性についても説明してくれた。
やさしい日本語とは、外国人や子ども、高齢者、障がい者など、誰にとっても分かりやすい日本語のこと。 短く簡潔な文法で書く、ふりがなや簡単な単語を使うことが特徴だ。阪神・淡路大震災をきっかけに考案された。ポイントは「誰にとっても分かりやすい」こと。
「問診票を書くときや薬局の窓口で薬の飲み方を説明してもらうときなど、場面ごとにことばのサポートがつくだけでも、随分スムーズになる。ただこうした支援体制をつくるにはお金がかかり、導入できる現場は限られている」
さまざまな関係者がチームとなって患者を支える枠組みづくりについては、少しずつ認識や取り組みが広がっている。しかし需要に供給が圧倒的に追い付いていないのが現状だ。
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人の移動が盛んになりつつある今、在日外国人の医療はすぐにでも対応すべき課題だ。サポートの輪を医療関係者以外にも広げていくにはどうしたらよいか。そもそもどういった人の力が必要なのか。議論を深めていきたい。
20230522 Written by NARUKURU
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