「自分のことばとからだで考える」に参加して
森田真生さんと江本伸悟さんの対談イベントに参加した。
森田さんのことは前々から存じ上げていたが、江本さんのことは失礼ながらそこまで存じ上げていなかった。ただ、「自分のことばとからだで考える」というテーマにとても興味を抱いたので参加してみた。
登壇者の森田真生さんは大学に属さず在野で数学を研究する独立数学者という立場で活動されており、初の単著『数学する身体』では小林英雄賞を受賞されている。
江本伸悟さんは博士号(科学)を渦の研究(たぶん流体力学関係)で取得され、2017年から私塾・松葉舎を主宰されている。
この対談は非常に多くの刺激を受け、学びの多いもので「自分の言葉で考える」というテーマにおいては非常に興味深い考えをお二人が示されていた。
以下、お二人が語った内容のほんの一部について、私が納得した部分を私の解釈を含めて記述させていただく。
まず、自分の言葉かどうかを別にして、自分が考えていることは言葉にして初めて自分の考えが分かることがある、と江本さんはおっしゃった。
これは私も最近noteを書くようになって実感していたことだった。
今までの私は日頃さまざまな出来事に触れるにつけ、私の中にあぶくのように浮かんでは消える、考えとも感想とも言えないものがあった。それで私は今までいろいろ考えてみた気になっていたが、それをいざnoteで文章にしようとしてみると、思ったよりもまともな文章にならない。文章の中で論理が飛躍していて、自分で読んでても文章がつながらない。
それを書く中で自覚し、再び自分の心を内省してみると、論理の飛躍があると思われていたところは、実は汲み取れていない自分の感情や考えがあることが分かる。その言語化できていなかったところをもう一度汲み取り、言葉にすることで、前の文章でつながらなかったところがつながっていく。
そうした経験を何度かした。
なので、江本さんの言う「自分が考えていることは言葉にして初めて分かることがある」というのは非常に納得できた。
また、森田さんは「自分の言葉で考える」というとき、必ずしも誰も使ったことがない表現や言葉を使う必要はない、と指摘されていた。
私たちは他人が使ってきた言葉でしか考えられないけど、それでも自分が今感じていることを一番ぴったり表しているのはどういう表現なのか、ということを他人が使ってきた言葉から探り当てる努力をすることはできるのではないか。そしてそうした努力を続けていくことが「自分の言葉」を見つけていくことになるのではないか、と。
この考えは自分の中に無かった考えだったのでなるほどと思った。
自分のそのとき感じた思いや考えに一番しっくりする表現を探すことは、外に向けて表現を探すのと同時に、内に向けて自分の心をより深く、丁寧に見ることが必要になる。なので、その都度しっくりする表現を探す努力を続けていけば、より細やかに自分の心を理解することができ、より正確に自分の心を描写することもできるだろう。
そして「自分の言葉で考える」の逆で、「他人の言葉で考える」とはどういうことだろうか、という問いが参加者からあった。
これに対して、江本さんは分かりやすい例でいえば引用文やツイッターのリツイートがあると答えていた。
自分の言いたいことに近いことを言っている人の文章を引用したり、ツイートをリツイートして語った気になってしまうことが「他人の言葉で考える」ということである、と。
これは、自分の言葉を見つけていくことで自分の思いや考えがだんだんと形作られていくという前述での行為の逆として考えれば分かりやすい。
他人の言葉を引用して語った気になってしまうと、自分の心を丁寧に見ることができず、雑にまとめてしまうことになる。そうすると、その語った言葉にその人の体験が裏付けされていないから、非常に軽い言葉になってしまう。そして体験の裏付けがない言葉に人は敏感だから、そうした言葉が人に届くことはない、ということだろう。
対談のほんの一部ではあるが、そうした話がなされていた。
ところで、テーマの中にある「自分のからだで」という部分はどうなのかということについてだが、これは対談の冒頭で直接的ではないにしろ言及があった。
そこでは連続体仮説を用いて、連続性(アナログ)の無限と離散的(デジタル)無限では、連続性の無限の方が圧倒的に大きいことから、連続体の側(アナログ)にある自然や身体は離散的な言葉より豊かな広がりがある、という形での説明があったが、私が消化しきれていないのと、この部分は対談で大きなボリュームを占めた話題であり、それをまとめるには私の力量に余るので本記事では扱わない。申し訳ない。
「自分の言葉で考える」ということについて、一つの新しい視座を得られたのは本当に大きな学びだった。
江本さんの私塾・松葉舎は今塾生を募集しているとのことだったので思わず応募してしまった。オンラインでの参加も可能だそうなので、この記事を読んで興味を持たれた方は申し込んでみてはどうだろうか。
松葉舎のホームページから申し込むことができる。
本日は以上です。最後まで読んでくださりありがとうございました!
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