人間未満から人間になる訓練
はっきりと断った。相手にも断ったことが伝わったことを確認した。
断ってみると、断る前に懸念していたことは何だったのかというほどあっけなかった。相手も気分を害した様子はなかった。残念がってはいたが。
断ったのは昨日の件では無くて、以前結論を出した、会社に誘っていただいた件。一度断ったんだけど、相手に再度誘いをかけられていて、先ほども誘いの電話があった。その時にお断りした。
「○○さんが私を気遣って誘ってくださっていることは伝わっていて、それにはとても感謝しています。ありがたいです。でも、○○さんに納得していただけないかもしれないですが、私にとってやはりそちらの会社に勤めるという選択は違うという感覚があるんです。○○さんが嫌だとかそういう話では無くて、抵抗感があるんです。
私が煮え切らない態度をしているからこうして○○さんも私に再度誘おうとされていると気づいて、そんな風に○○さんの時間を使ってしまうのが申し訳ないので、はっきり断ろうと思いました。申し訳ないですけど、就職の件はお断りさせていただきます」
大体こんなことを言った。相手は残念がりながらも、私に就職の意思が無いことを理解してくださった。
今日電話を受けて、先方から勧誘の言葉をたくさん受けた。その時、「あ、私がきっぱり断ってないからこんなに何度も誘われるんだ」と理解した時「きっぱり断ろう」と心が決まり、腹に何かが下りた感覚があった。断ろうと思ってから断りの言葉を述べる時、胸のあたりに痛みが走った。私が今まで抵抗を感じていて、なんなら罪悪感すら感じていた「相手の提案を断る」ということをしようとしたから、その反作用だろうということは分かっていた。
でも、断りの言葉を言い切って、相手が残念がりながらも承諾してくれた時、私はへその下あたりの何かが溶けたような感覚があった。力みが解ける
というか、肩の荷が下りたというか、解放感があるというか、そういう「身体が軽くなった系」のポジティブな感覚だ。
あと達成感みたいなものもあった。今まで出来ていなかったことをやったのだから、達成感を感じても良いでしょう。
普通の人にとっては、こんなことは悩むまでもなく当たり前にやってることなんだろうな、と思った。そんなことで達成感を感じる私にいかにも普通でない感じを受ける。
まあ、「普通の人」なんて人がこの世に本当に存在するのか、あるいは私の頭の中の想像にしかいないのかは知らないけど。後者かもね。
でも、たとえ後者であっても私は常々「私は普通じゃない」という劣等感を感じてたんだから、私にとって「普通のこと」ができるのは嬉しいことだ。達成感も感じるさ。
人間未満の生き物が、なんとか人間になろうと這いながら進んでいるイメージが頭に浮かぶ。
人間になろうとしてる。それが良いことなのか悪いことなのか分からないけど、今の私にとっては大事なことのようだ。
私ができてない「普通のこと」はまだまだたくさんある。少しずつでいいから、それらを達成したい。そうしたら、人間未満なりにちょっとは人の形に近づける気がする。
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