私の仕事術(寄稿)
東京ワーカーズ・コレクティブ組合様『せれくと』ーもうひとつの働き方を選ぶための情報誌ー 2020年6月に寄稿させていただきました。
自然が先生。働き方の多様性で生きやすい社会へ
鶴岡ナリワイプロジェクト 代表 井東敬子
はじめまして!私は、20代はJTB、30代は富士山麓の自然学校で、青木ヶ原樹海と洞窟探険のガイドなど野外活動の指導をしていました。その経験から「自然に学ぶ。無いものは作る。自分の可能性を自分でつぶさない。」の3つが、行動指針です。
都内で子育てをしていましたが「子どもを自然の中で育てたい!」と、2011年山形県鶴岡市に移住しました。
移住2年目の3月末、「来月の仕事がまだ決まらない」という女性の声を耳にしました。雇用主に「新年度予算が確定するまで雇えるかわからない」と言われたそうです。憤りを感じる一方、自分の人生を誰かに委ねるのは止めよう。仕事がないなら作ればいいと、小さな仕事づくり活動をはじめる決意をします。
『月3万円ビジネス』(藤村靖之著、晶文社)と出会い、「奪い合わないでわかちあう。借金しないで小さく始める。いいことしか仕事にしない。」をベースに、2015年鶴岡ナリワイプロジェクトを始動。得意なことで身近な困りごとを解決する「ナリワイ起業」という言葉を作り、起業講座を開始。卒業生は5年(2015〜2019)で65名。2019年には全国ネットワーク「わたしごとJAPAN」が誕生しました。
商売は、いくら儲かったかで評価されます。しかし、ナリワイ起業の真の価値は、自らの強みを再発見すること。「地域課題を自分の手で解決できる」と意識が変わることです。おまけに、地域に笑顔と小銭が循環し、セーフティーネットが生まれます。
世界が、新型ウイルスに翻弄されています。人類は、今こそ地球46億年の歴史に学ぶ時です。地球環境が激変した際、生き残ったのは巨大な恐竜ではなく、ゴキブリのような小さな生き物でした。小さく環境適応能力が高いものが、生き残ったのです。また、新型ウイルスは、開発によって野生動物と人が暮らす空間が近づき、ウイルスが人にうつりやすくなったという説が、多数示されています。開発し生物多様性を奪う行為は、高リスクと言えます。
これを応用すると、収入を一箇所に依存する働き方はリスクが高く、複数の小さな仕事を持つ働き方のほうがリスクが低いと考えられます。地球の資源を顧みないグローバル化、経済拡大が豊かさを生むという考え方は、過去のものになるでしょう。
一人ひとりが納得する働き方を追求する。それが、生き方の多様性を広げます。自然に学びながら、仕事作りのサポートで、自分がほしい未来を作っていきます。