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Feel度Walkして図鑑をつくる

Feel度Walkという歩き方

みなさん、こんにちは。ちきゅうのがっこうのおっちゃんです。昨日はみなさんにとってどんな一日だったでしょう。

なんか久しぶりにのんびりできたな

と感じた部分もあるでしょうし、

何をしに行ったのか、どんな経験だったのかまだよくわからないな

と感じた部分もあるでしょう。

お互いの自己紹介もしていない。大人にも子どもにも一斉に何かをするという時間はほとんどなし。

初夏の道をなんとなくあるき、初夏の古民家でなんとなく過ごす。そこでなんとなく見つかったなと感じたものをサクッと絵に残してみた。それだけで終わった一日だったかもしれません。

でも、それこそが私たちが今、失いつつあること、また、取り戻したいことでしょう。それは「あるく」ように過ごすことです。

「あるく」という漢字は「止」まると「少」ないという漢字の組み合わせでできています。

「止まることが少なく歩き続けることか」

確かにダイエットしようとか健康のためとか行き先にたどり着くことを優先するとかだったら、下の写真のようにスタスタと歩いた方がいいでしょう。

しかし、「止」まると「少」しを、こう読み解くこともできます。

「止」まってばかりで「少」ししか進まない

「少」しずつじっくり「止」まりながら「歩」く

もあるのです。ちきゅうのがっこうが、子どもにも大人にも大切にしたい歩き方はまさにこういう歩き方です。

これから一年かけて、四季の巡りを感じ、自然の声に耳を傾けて、ゆるやかに歩む。

大地の再生をしてみるのも、目に見えた劇的な変化をもたらすためではない。目に見えない、ささやかながら確かな変化に身を委ねることのじんわりした心地よさを感じたいからです。

その一歩目が、Feel度Walkでした。昨年の参加者にとっては何度も歩いた場所かもしれません。にもかかわらず、誰も

「同じところだから飽きちゃったな」

とは言っていないどころか、前回来たときとの違いが見つかったり、同じ場所がどう変化したりしているかを心から面白がっていました。

初めて参加した子どもや大人も、最初は戸惑いながらもだんだんと目が開かれていったのが見てとれました。もちろん、まだ

「なんでこんなことしたのかな」

と素直に面白がれるところまではいっていないかもしれません。でも、それでいいんです。だって一年かけて「歩いて」ゆくのですから。来月、また同じ場所を訪れ、見た顔の人たちと再会し、じんわりと見方や関係が変化してゆけばよい。それが自然を先生とし、自然に生きるということではないでしょうか。

あせらない。急かさない。

気づかぬうちに「なんとなく」変わってしまう。その結果日々の生活に潤いを与える「なんとなくセンサー」が研ぎ澄まされる。すると、いろいろなものやことやひとを受けとめられる余裕が生まれ、柔和になる。

止まってばかりで少しずつ進む歩みで、なんとなくセンサーの感度=Feel度があがっちゃう。Feel度Walkして日々を歩む旅の始まりです。

自分なりの発見を記録する図鑑

なんとなくセンサーが働いた歩き方になると、あれっ?おやっ?ということがいろいろみつかってしまいます。

高まった Feel度 がとらえた発見を記録するのが、ちきゅうのがっこうにおける発見図鑑です。

すごい発見じゃなくていい。自分がなんとなく気になった発見をスケッチとつぶやきのような言葉でひたすら記録したものが図鑑なのです。

葉っぱだったり、石ころだったり、同じものが集まっちゃう場合もあるでしょうし、ときと場所によってまったく違うものでもかまいません。数をたくさん集めると、だんだん特徴が見えてきたり、仲間分けがしたくなります。また、ひとつのものをじっくり観察して、くわしく細かく描くのも面白いでしょう。

昨日の子どもたちの姿を見てわかるように、自分なりのスタイル・レイアウトでまとめようとします。自分なりの描き方でどんどん気になるもの・ことを描いて、自分ならではの図鑑をつくってみましょう。

もちろん、子どもだけじゃなくて、お父さん、お母さんも My 図鑑を面白がってつくってみてくださいね。図鑑をつくってゆくうちに、

「俺ってこんなことに関心があるんだ……」
「やっぱり私はこれを集めちゃうな……」

ということが見えてきてとっても楽しくなるはずです。

朝ドラ「らんまん」のモデルの植物学者の牧野富太郎も、粘菌の研究で知られる博物学者の南方熊楠も、何を集めるかの前に、とにかくあれこれ集めて記録すること。つまり「量」こそが大事だと言います。

デザイナーの三澤遥さんは、まさに Feel度Walk からの図鑑づくりが「万物をフラットにみる」デザインの眼をいかに育てるかについて語ってくれていますのでご参考までにどうぞ。

紙で手描きの My図鑑をつくる意義

今子どもたちが手にしている図鑑は、小学館の図鑑NEO(他社のものも同様)のように、DVDが付いていて、動画で見られるようになっていて優れものです。また、インターネットで NHK for School の大量で良質のクリップを視聴できますし、You Tube でも面白動画を見ることができます。


だからこそ、私たちが手作りで、自分なりの発見を記録して残しておく価値があるのです。

まだみつかっていないことをたまたまみつけてしまうきっかけが、しょうもないと思っていた何気ないものからというのはよくある話です。見つけたものが全然関係なさそうな発見のひらめきにつながることもあります。

日々、自分で発見したものやことを面白がってひたすら手描きで記録する。そんな発見スケッ“知“図鑑が、私たちを支えるオリジナルの知の貯蔵庫になります。したがって、「図鑑の完成品」をつくるわけではありません。日々、気持ちや興味の変化がありつつ、ある時期はひとつのものを詳細に描くことに没頭したり、また、ある時期はいろんなものをたくさんざっと描いてみたりという波があってかまいません。

自然をみつめたり、物事を考えたりするときのベースとなる「知の素材」を自らの手で集めた「紙媒体の手づくり図鑑が生まれてしまう!」ことがなにより大事なことなのです。

絵とともに書きとめておく最低限の情報

どんなスタイルで図鑑を描くかは自由。遊び心を大いに働かせてください。ただし、以下の情報は書きとめておくとのちのち役立ちます。子どもがまだ書けない場合は、親が記録しておきましょう。そのときには、子どもがつぶやいた言葉通りに書いておくのが面白いですよ。子どもならではのものの見方がそこには含まれています。

・いつ? 年・月・日・曜日・何時ごろの時間
・どこ? 行ったところ、歩いたところの地名、その場所の特徴
・どんなこと? 気づいたこと、思いついたこと、感じたこと、つぶやき

これらのことをさらっと簡単にメモする。ツイッター(144字)ぐらいの字数で、断片的でよい。ハッシュタグをつけるイメージです。

タブレットで写真を撮り模写する

小・中学校の授業では、子どもたちがタブレット(例・i-pad)を用いています。Feel度Walkして撮った写真の中から

今日はこれかな!

という1枚を選んだら、それを「模写」します。

面白いことに年齢が低いほど大胆にスケッチできます。学年が上がり、大人になればなるほど、

絵を描くのは苦手
絵心がないからダメ

と言い出します。

しかし、私たちには物事を観察し、模写して描く力が備わっています。その力は、日々習慣化するにつれて高まります。

タブレットの画面サイズは模写をサポートしてくれます。タブレットで写真を見ると、部分を詳細につかむことも、全体の形をざっととらえることも、色合いを確認することもしやすいのです。

まずはタブレットを見て模写にトライ。そうすると結構上手く描けてしまって、苦手だと思った本人がびっくりするほどです。

もちろん、スマホやコンパクトデジカメの方が、あちこち歩きながらパッと撮影するのには適しています。ただ家に戻ってスケッチするときは、選んだ写真をPCなどに送って、大きな画面に映して描くのをオススメします。

発見図鑑としてスケッチするのは「アート作品」を生みだすためではなく、物事の構造をつかむためです。「模写」することで観察の Feel度が高まるの です。上手く描けるかどうか以上に、ものの見方、それも「なんとなくセンサー」を働かせてパッと見たときの観察力が歩いているときに実感できるようになります。虫や鳥など、動くものから小さい草花のようなひそやかにあるものまで、歩いていると向こうから飛び込んでくるようになるから不思議です。

スケッチブックは A4 がオススメ

基本はマルマンのA4スケッチブックがお手頃ですし、オススメです。発見スケッチは、現地で写生ではなく、家に戻って写真を改めてじっくり見ながら描きます。なので表紙が固くなくても問題ありません。

ただ、外で現物や景色を目前にして描きたいというふうに思うのなら、表紙が硬くて画板代わりになるものがいいでしょう。また、今、使っているものや家にすでにあるものがあればそれで全然かまいません。

サイズがA4がいいのは、1つのものを大きめに詳細に描くのにも、いくつかのものを並べて描くのにもちょうどよいサイズだからです。

自分好みの画材を探してみよう

鉛筆だけで描いてもなかなか味わいがあります。

高校1年生が校内のFeel度Walkで描いた鉛筆スケッチ

歩いた経路を書いたり、発見して調べたことを書き添えたり、より自分の思いを言葉で表現するようになると黒ボールペンが活躍します。

私は色鉛筆で着色することが好きです。ご存じのように色鉛筆もピンキリで、自然の色合いを出すのに特化した高品質のものもあります。私は24色の学校使用向けのリーズナブルなものを用いています。

色ペンもダイソーで売られている36色ペンや、フタをなくさないで済む ZEBRA のクリッカート、筆ペンタイプのものも使ってみるとなかなか楽しいものです。

また、色を重ね塗りできて、クレヨンのようになめらかな質感をさせるゲルクレヨンもあると面白い表現ができますが、あまり売れなかったようで「生産終了・各店にある在庫がなくなった時点で売切れ」となってしまったのが残念です。
(もし、画材店・文具店でこれを目にしたらお買い求めになっておくことをオススメします)

水彩画もよいですし、プロッキー・マッキーで描くのもいい。筆記画材については、

これで描いたらなんか気に入った

というようなものが現れますし、文具コーナーなどで、ちょっとこれで描いてみようかなと直感したものでとりあえず描いてみてもいい。楽しみながら、探し、使ってみるのがよいですね。

お気に入り・オススメの図鑑をシェアしよう

最後に、みなさんがこの図鑑いいよね!というもの。もちろん子どもがはまっているというものも含めて、8月の夏合宿のときにはシェアしたいと思っています。

出版技術が高度かつ安価になったことによって、今はさまざまな素晴らしい「図鑑」が本屋さんに並んでいます。

すべてを網羅した本格的なものから、著者の興味とウィットに満ちた切り口で編集されたもの、また、歩きながらパラパラめくるハンディータイプのものなど、内容・用途によって面白いものがたくさんあります。

ちなみに私のイチオシ図鑑は、葉っぱ図鑑と言えば林将之さんの

『見る知る考えるずかん 五感で調べる木の葉っぱずかん』

また、まちを歩きながらコケや地衣類をみつけながら歩くときは、

『街なかの地衣類ハンドブック』

今年は、さらに野鳥についても Feel度を上げたいので、野鳥のハンディ図鑑を持って歩こうと思っています。

みなさんのイチオシ図鑑、ぜひ今度会ったとき教えてくださいね。

目の前の花の名前を知ったりするには、スマホでかざすだけでわかるアプリがあり、とても便利です。もちろんそれを活用するのは大いにあり。

でも、歩くように知をつくってゆくプロセスでは、遠回りを楽しみたいですね。すぐに知りたい衝動をグッと抑えて、現物を持って帰ったり、写真を撮影してスケッチを描いたりした後で、本で調べてみる。

即席ではないが、まどろっこしく、なかなかわからない過程を経た先に、世界の見え方が変わり、思わぬものを発見してしまう感度=Feel度 を手に入れるでしょう。

私たちはアマチュアです。アマチュアとは知りたいなという熱情にあふれたものという意味です。アカデミックのプロフェッショナルじゃないからこそ、時間に追われず、成果に追われず、

これってもしかしたらこうなんじゃねえ

の「妄想仮説」を遊ぶことを徹底的に楽しめるのです。

ちきゅうのがっこうは、人の学びの原点に戻って、大人も子どもも「知」に遊ぶ場でありたいなと寺子屋のおっちゃんは思うのです。


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