Proficiency Barrier
今日も「ACSM Essentials of Youth Fitness」から得た知見を踏まえて、私なりを雑感を書いていきます。
Proficiency Barrierとは
日本語訳すると「熟達バリア、熟達の壁」とでも言うのでしょうか。
その意味とは、
基礎的な運動能力が早期に低下すると、後に複雑な運動パターンを習得する際に支障をきたす可能性がある。
基礎的な運動能力の土台の上に複雑な運動能力が構築されるイメージ。
土台が崩れれば。その上に載っている物を崩れます。
別の表現をすると、基礎的な運動能力が形成されていない段階で、複雑な運動を取り入れても、運動学習の効果は薄まるし、ケガのリスクも上がるかもしれません。
基礎を大事にして、段階を踏んで丁寧に漸進していくアプローチが理想となります。
対象者が段階を踏んで運動能力を形成出来ているケースは多くない
あくまで個人の見解です。
普段は高校生を対象にトレーニング指導に従事していますが、新入生の中には柔軟性に難がある子や片脚閉眼立ちが10秒以下という子は少なくないです。
一方、Youth Physical Development (YPD)モデルでは、15-16歳だとHypertrophy(筋肥大)やSSS(Sports-Specific Skill;競技特化スキル)などを伸ばすアプローチが提唱されています。FMS(Fundamental Movement Skill;基礎運動スキル)に全く重きを置かないわけではないですが、5-11歳の時期と比べると、割合は減ります。
このモデル通りに進めると、高校入学当初は筋肥大などに重きを置いたトレーニングを軸に指導を進める形が理想とも言えるでしょう。
しかしながら、柔軟性が欠如している子や、基礎的な運動能力に何かしらの難がある場合、その欠如している部分を無視してモデル通りにトレーニングを開始・漸進していくことは、運動能力向上の抑制やケガの誘発を高める可能性もあると思います。
モデルを軸にしつつ、個々人のレベル次第でプログラムを調整して行うやり方もあるでしょう。パーソナルトレーニングであるならば、それが無難な方法かもしれません。
まずは基礎運動能力の向上・改善?
基礎運動能力という土台を構築することが、運動能力の向上と怪我リスク減少に貢献するうえで重要になると思います。土台が出来ていない段階でSSS(Sports-Specific Skill)やHypertrophy(筋肥大)を目指したトレーニングを取り入れても、何かしらの支障をきたすかもしれません。
とは言うものの、トレーニングする側からすると、“改善を目的としたトレーニング”はモチベーションが上がらないことも少なくないです。
丁寧かつ分かりやすい説明する力が指導者には求められますが、どうしても“向上を目指したトレーニング”と比較するとモチベーションを高めることは難しい感覚があります。
SSSやHypertrophyの向上と基礎運動能力を改善を目指したトレーニングを上手く織り交ぜつつ、指導を展開していくのがベターな方法かなと思います。
例えば、筋肥大のトレーニングのセット間に柔軟性トレーニングを組み込むなど。
モデルを軸にしつつ、柔軟に対応する
YPDモデルを念頭に置きつつ、Proficiency barrierの考えも持って、どのようなトレーニングが必要かを見極めて指導に当たっていくことが必要かと思います。口で言うのは簡単ですが、それを実行するのは結構な労力がかかると思います。可能限り、ベターな状況に持っていくための指導を行っていきたいものです。