海洋情報資料館(東京都江東区・テレコムセンター駅)
テレコムセンターという、週末にはほとんど人がいないという素晴らしい駅において最も知られているのはテレコムセンターの展望室だろうか。そのテレコムセンターの裏側にひっそりとあるのが海上保安庁が主催する海洋情報資料館・海の相談室である。こんなところにミュージアムがあるなんて誰が想像しただろうか。でも実は東京税関のミュージアムがあったり、お台場の南側には意外とミュージアムが点在している。
国がやってる施設でありながらこちらの海洋情報資料館は週末にも開館している素晴らしい施設である。基本的に平日しか開館していない東京税関のミュージアムや産業技術総合研究所にもぜひ見習ってほしい。それはともかく、こちらのミュージアムは展示室と資料室とが併設されており、海上保安に関連する海洋情報を調べる際には訪れるべき場所でもある。海上保安に関する海洋情報を調べる機会は今のところないので、とりあえず展示室の方だけを見学することに。コンパクトな展示室ながらかなり内容は充実している穴場スポットでもある。
展示室は大きく分けて2つに分かれている。最初に海図に関する展示室へ赴くと、日本における海図作製の変遷について時代ごとの海図を展示しながら説明している。江戸時代前後にかけて造られた海図はポルトガル人から学んだ航路の方位と海岸線が描かれていた。また朱印船貿易では天文航海を用いて同様の海図を使用していたという。鎖国になると海岸伝いの航路を描いた図が用いられるようになり、やがて明治に入って国防の必要性が高まると、英国式の海図作製技術を採り入れて自ら測量を行った初の海図『陸中國釜石港之図』が誕生する。ちなみに開国の前後にはイギリス、フランス、ロシア、アメリカ、オランダなどが日本沿岸の測量を行っている。
陸上における地図づくりというと伊能忠敬が有名である。もちろん海図にも同様にパイオニアがいたわけで、海図の創始者としては柳楢悦という人物が存在する。数学者や測量学者でもあった柳は明治政府からの招請を受けて水路測量を担当、港湾等の測量を推進し、沿岸や港の海図作製に心血を注いだことで「日本水路測量の父」と呼ばれている。その名前からピンとくる人もいるかもしれない、あの民藝運動で知られる柳宗悦の父。ちなみに楢悦の妻は「柔道の父」嘉納治五郎の姉でもある。とんでもないロイヤルファミリーである。
隣の展示室では何といっても測量機の実物が目に飛び込んでくる。何をどうやって使っているのかさっぱり想像できない一級図化機や潮候推算機、六分儀や三秤分度儀、タイガー計算機に子午儀、星球儀など多くの測定器が回路図の作成に大いに役立ったことがわかる。使い方すらわからない素人には気の遠くなるようなものばかりである。
週末ともなればこれだけの閑散としたエリア、誰もいないだろうと予測していたのだけれど見学ツアーを設けた別の見学グループがいたりと、あなどれない。ちなみに水路局が設立された9月12日は水路記念日として指定されている。世の中には知らないことがこんなにもある。トイレはウォシュレット式。