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玉川大学教育博物館(東京都町田市・玉川学園前駅)

玉川大学は構内に小学校から高校までを網羅する玉川学園の中の教育機関の一つである。和光大学と同じく成城学園を基幹にしており、もともと成城学園の園長だった小原國芳が、「新しい日本を動かす力をつくる」という理念のもとにつくられた学校法人である。玉川大学の教育博物館は広大なキャンパスの最奥部に位置している。

ミケランジェロや北村西望などの彫刻作品が並んでいる入口から階段を上って2階が展示室になっている。ロビーにはジョン・グールドの鳥類図鑑や教育で使用されたパイプオルガンなどの現品が展示されている。展示室は二つに分かれており、片方では特別展、もう片方では常設展示として、教育の歴史についてを紹介している。

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教育の歴史は江戸時代に遡る。江戸幕府で教育機関として設けられたのが湯島聖堂に造られた昌平坂学問所。また幕末には長崎伝習所などが幕府の管轄として作られている。その下の階層としては、各藩で設けられた藩校が挙げられる。代表的なところでは会津藩の日新館や佐賀藩の弘道館が挙げられている。やがて藩校だけではまかないきれなくなって私塾が生まれる。吉田松陰の松下村塾や緒方洪庵の適塾などが代表的なところだろうか。庶民には寺子屋が開放され、読み書きそろばんをここで習得した。

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明治に入って各藩で設けられている藩校などの制度は廃止され、変わって大中小学校へと変遷している。開国されたことで教育の文化もここで入ってきており、欧米の教育紹介もされている。思想家であるルソーやペスタロッチー、フレーベルといった人物によって提唱され、セシル・レディ、ジョン・バドリー、エドモンド・ドモラン、ヘルマン・リーツといった人物によって実践、ケルシェン・シュタイナー、エレン・ケイ、ジョン・デューイ、ヘレン・パーカストなど唱道者が世界へと広めていったという歴史がある。

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国内では新教育運動に活動を費やした人物を紹介。成城学園の校長・沢柳政太郎をはじめ、谷本富、野口援太郎、木下竹次などによって提唱された真教育運動。教育とは何か?ということで、八大教育主義の人物についても紹介。及川平治、稲毛金七、樋口長市、手塚岸衛、千葉命吉、河野清丸、片上伸、小原國芳といった人物が西欧の教育に習い国内でも展開できるように尽力した。小原國芳は成城学園の学園長時代に自らの理念を実践するための学校として玉川学園を創設し、全国へも講演で飛び回るという多忙さを極めた。夫人である信とも広島在勤中に出逢い、以降は夫を支えて玉川学園でも「小原のオバサン」と呼ばれ愛されたという。

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玉川学園は「日本の青年には、よい頭、よい手腕、美しい心情に加え、よい健康が必要である」という小原の理念から、運動に力を入れていることでも知られている。中でもデンマーク体操というユニークな体操はニルス・ブックという体操選手を招聘して導入され、現在でも運動に取り入れられているという。またスキーもハンネス・シュナイダーというスキー黎明期に世界へ普及させた人物を招聘し、現在もスキー教育は玉川学園の名物とされている。

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もう片方の展示室では特別展として考古学をメインにした展示を行なっている。玉川学園の卒業者で講師も務めた戸田哲也の足跡を戸田コレクションとして紹介。小学校から考古学の遺跡発掘調査に参加していたという「考古ボーイ」だった戸田のモットーは「考古学は知的な推理ゲームである」というものだった。甕や食器に限らず埋葬に使われた土偶なども紹介している。

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特別展としてもうひとつ「外地教科書」についてを紹介している。戦時中に日本列島以外へ領土を拡大した日本にとってその外地での教育を普及させることが急務だったことから外地用の教科書を作成したという。アルファベットも用いて日本語を紹介しているのが印象的。台湾では樺山資紀が「公学校」、朝鮮半島では寺内正毅が「普通学校」という名で、日本人小学校とは分ける形で創設され、また樺太でもアイヌ人子女のみの教育施設がつくられた(のちに日本人小学校へ吸収)。満州では満州鉄道会社による指導が入り、現在も歌われる『ペチカ』は北原白秋が満州唱歌集に発表したものである。また南洋群島では中島敦が教科書の編集に携わるなど、当時の文人もこういった戦争の波に飲み込まれていたことが窺い知れる。トイレは屋外にあり洋式。

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